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システムのカスタマイズと標準化(パッケージ化)について

興味深い資料がありましたので、共有します。

「新たな社会経済情勢に即応するための地方財務会計制度に関する研究会」という小難しい名前になっていますが、要は「調達関連手続きの見直し(システム化も含めて)の検討する」ということのようです。

上記リンクの第11回では、調達関連のシステム化に関してベンダーにヒアリングして課題などを整理していくということなのでしょうけど、議事録にある質疑応答のやりとりを読んでいて、個人的にいくつか気になることがありました。

「カスタマイズ」について

システムをカスタマイズすることについて軽く考えられているなという印象を受けました。

「ちょっとしたお願い」のつもりで言うと、「それをするには、1か月かかって15万円です」とか、そういうのがすごく経験としてあるのですけれども、これが障壁になって、個々の要望に応えられないというのがあるのかなと思うのですが、システムをつくる側の方の感覚的な問題として、いろいろな細かいカスタマイズの要望が入って、それに応えるというのはすごく手間がかかってやっぱり大変なものなのでしょうか

15万円ならかなり安いほうだと思いますが・・・

気持ちは分からなくはないですが、きちんと理由を知っていればそれが妥当な価格なのかどうかは理解してもらえると思います。

これはカスタマイズに限らない話ですが、システム開発にお金がかかってしまう理由はいくつかあります。

品質を担保する必要があるということ

当たり前の話ですが、納品したシステムがきちんと動作するように品質を担保する必要があります。

例えば、個人の趣味としてシステムを作っているのであれば、ちょこちょこっと直して「あー、動いた動いた」で終わりでしょう。仮に、ちょっと動かないことがあったとしても「あー、動かんかったわ、直しとくか」で済みます。しかし、顧客に納品したシステムでトラブルが発生したら、顧客に迷惑がかかりますし確実に怒られます。トラブルに対応するため、時間もお金もかかります。最悪の場合は、賠償問題に発展するかもしれません。

そうならないようにテストが必要になりますが、しっかりとしたテストをするにはお金(人件費)がかかります。

システムを開発(カスタマイズ)する費用は単にその開発作業だけの人件費ではない

システムを開発する費用というとその開発の作業にかかった時間分の人件費だけを思い浮かべるかもしれません。確かにそれも大きいのですが、それだけではありません。

仕事としてシステムを開発するということは単にシステムを開発するだけではありません。上司や顧客への報告といったコミュニケーションは当然必要になりますし、その報告の資料作りのためにデータを収集するといったことも必要になるでしょう。

また、その担当者がその開発をできるようになるために研修等が行われます。企業としては、こういった研修などの費用もどこかで回収しないといけないですが、それは当然システム開発の費用に上乗せされていくわけです。他にも、その人が仕事をしていくために、総務や人事といった人たちも仕事をしています。システム開発の仕事を受注するための営業の人もいますよね。こういった間接部門の人件費もシステム開発の費用として回収しないといけません。電気代などもしかりです。

趣味の世界であれば不要なものですが、仕事となれば当然必要になってくるものです。

システム保守の話もある

カスタマイズをせずに標準パッケージのままであれば、例えばシステムで利用しているOSがバージョンアップしたとしても、そのOSバージョンアップに対応するための費用はパッケージの保守の中で対応できます。しかし、一度カスタマイズをしてしまうと、OSバージョンアップへの対応は個別に対応する必要が出てきてしまいます。「OSバージョンアップの対応はカスタマイズした部分だけでいいのでは?」と思われるでしょう。概ねその考えに間違いはないのですが、そのOSバージョンアップの対応でシステムに手を加えてしまうとその部分の対応(テスト等)だけで済まなくなってくるのです。(長くなってしまうのでここでは書きませんが。)

このような将来的な保守のことも考慮して、設計書やソースコードをきちんと管理しておく必要があります。もちろん、それにもお金がかかります。


上記の理由を認識いただければ、システムを開発(カスタマイズ)するには、それなりにお金がかかるというのは理解いただけると思います。


「システムのパッケージ化」について

研究会の議論で気になったもう一つは、「システムのパッケージ(標準)化」についてです。この問題についても軽く考えられてしまっているなという印象を受けました。

「システムをパッケージ化してそれを顧客にそのまま提供する」、これは理想の形ではあるのですが中々理想通りにはなっていないというのが現状です。前のカスタマイズの話にも繋がります。顧客ごとに開発(カスタマイズ)しなくていいように、パッケージ化してそれをそのまま提供できるのが理想の形です。もちろんITベンダーもシステムをパッケージ化して提供したいと考えているものの、現実には顧客ごとのカスタマイズが必要となってしまっていて、パッケージ化のメリットが十分に得られているとは言えない状態となっています。

「カスタマイズしなくていいように必要な機能を全部盛り込んでおけばいいじゃん」と思ってしまう気持ちも理解できなくはありません。しかし、話はそう単純ではないのです。「必要な機能全部」というのが曲者なのです。

話を理解してもらいやすくするために、例え話をしましょう。

家電量販店に行けば、沢山の種類のテレビを売っています。これを「標準化して価格を安くするから1種類だけにしよう」と言ったらどう思います?もちろん、その1種類のテレビには必要な機能が全部盛り込まれています。

多くの人が「えー」と思うでしょう。客観的な目で見れば「テレビ放送が見られればそれでいいじゃん」と思えますが、実際はそれでは不満なわけですよね?車や家に置き換えても同じです。マインクラフトのように「標準化した部品だけ用意しておくから、それを組み合わせて家を作って。それ以上のカスタマイズは認めません。」では納得されないですよね?

一昔前のテレビや車を持つことが一般的ではない時代であれば、1種類のテレビや車を用意されたとしても皆喜んで使うでしょう。しかし、これだけ趣向が多種多様化している現代では、1種類だけでは納得できなくなっているのです。

個人の話と一緒にするなと怒られそうですが、根本は同じだと思います。

同じ調達システムであっても、「それだと作業効率が落ちる」などとそれぞれの担当者が望む便利機能が追加されていきます。この便利機能などはまさに好みの問題で、担当者が100人いれば100通りの機能が出来上がります。個人や組織の考え・好みなどが統一されない限り、機能は一つにならないのです。

まとめ

上記2つの問題については、上記のような事情をITベンダー・顧客が共通認識として持つことができれば解決できるかもしれませんが、「新たな社会経済情勢に即応するための地方財務会計制度に関する研究会」のような会話がされているうちは難しいでしょうね。

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