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アラサー;就活おわったので、婚活はじめました。4

気がついたら春。
来年度の新社会人や学生が、やたらキラキラしてまぶしく感じるのは、太陽のせいか、感覚がアラサーのせいか。後者にはなりたくにいが、仮にそうだというなら、甘んじて受け入れよう。
まあ、どちらにしても、春を感じるのには変わりはない。

私の春はといえば、
枝元からぱっくりと折れた桜の木。
今の場所に根強く居座りつづけた結果。

──現在、いまだ独身。

会社までの道のりに、崖の下で流れる川がある。雨の日には泥道が流れて、黄土色の川になる。それをぼうっとながてしまうくらいには独り身を感じている。

と、こんな感じで。
止まり切っていた日記を再開させていきます。
更新は7月終わりで止まっていたので、おおおよそ半年間。

まずは何があったか聞いてほしい。

アラサー;就活おわったので、婚活はじめました。~パート4ですよ~

ジリジリと照りつける太陽にセミの鳴き声がかさなる。夏の暑さの二枚看板が肩をならべる7月下旬のことである。


marrishを使って、私は驚いた。
何に驚いたのか。それが言葉の形にならない。これでは結局、何に驚いているのか。自分で自分が1番よく分からなかった。ドキドキすぎて何をすればいいか分からない。それほど頭のなかは混乱を極めていた。

部屋のなかで、スマホを握りしめたまま、夜の空気に同化する。コチリ、コチリとうごく時計の音がやけに大きく、部屋のなかにひびいていた。

静けさをやぶって、

「……だ、ダメだ。逃げたい。登録したばっかりなのにアカウント消したい」

本音が駄々漏れた。
──って! いや、ダメだ。ダメだろ。
私は婚カツをするんだ。そのために登録したんだ!
そうたがら……。

逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……

…………よし。

『消すか。』

だって耐えきれない。
誰とも会ってないし、なんならまだ画面をさわっただけだ。誰ともマッチングしてない。
逃げるなら今しかない。

削除ボタンをポツリと押そうとした。だがそのときだった。

「いいね」届きました

とんだタイミングだな!!!!
いや、でも待て。落ちつけ。
こういう時──

慌てたほうが負けなのよね。

頭のなかにうかぶガンタンク。
…………、すうっ。
深く息を吸って、私は改めて画面を見つめた。確かに「いいね」がある。
でもどうしたらいいのか、てんで分からない。
とりあえず画面をタッチしまくってみて、

「はあ──ッ!?」

叫びとともに画面には、『マッチングしました』という、やたらピンクでキラキラの文字が表示されていた。

マッチングしちゃったんですか?
そうですか、そうなんですねぇ。
なぜなんでしょうねぇ、どうしてでしょうねぇ。
きっと画面をタップしまくったせいでしょうねぇ。
※正解です※

真っ白になっていく頭をぶるりと左右に振って、私はうなずく。

こういうときはまず、スマホを閉じる。
そして、消す。
画面を消す。
ついでにスマホの電源を落としておく。

………………はあ。

あからさまなため息をついて、私はベッドにダイブした。ふかっとしたやわらかな布で体を包みながら、枕に顔をふせる。シトラスノートの香水がふわっと私の鼻をくすぐった。

「……どうしよう、マッチングしちゃったよ」

コミュ力レベル1──いや、レベル3くらいまではあってほしいが──レベル3への思いが願望でしかない私は、結局、レベル1のコミュ力しかない。
枕のうえで、右と左に三回転して、ストレッチのように足先をグッとのばす。もともと硬い体には久しぶりのストレッチが心地よかった。

2,3回伸びをしたあと、やがてついに腹がくくれた。

まだだ、まだ終わらんよ!

私は婚カツをするんだ!
にぎった拳に力をこめて、私はスマホの電源をたちあげた。

たちあがれ、たちあがれ、スマホ!

黒い画面が光をともし、端末画面を三原色が彩っていく。

「……よ、よし」

わすがに声がふるえた。初めてのことは緊張する。なにも知らないから。なにも分からないから。緊張する。もうどうしようもないくらいに。
……大きく息を吸って、私はmarrishのアプリをタップして、

「ん?」


『メッセージ 0』


なんと誰からのメッセージも届いていなかった……!

あれ? 思ってたよりも、私、モテないじゃないですか──ッ!?

次回、【初の婚活アプリ marrish編 2】につづく

※台詞の引用は有名なアニメからお借りしています。
 日本のステキなアニメに心から感謝を。

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