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【読書感想16】世界史序説/岡本隆司

以下要約。
西洋中心史観は思い上がりである。大航海時代以前の世界史の中心はユーラシアのオリエント以東であって、そこにおいては遊牧民(=軍事、商業)と農耕民(=生産)の結節点(=シルクロード)が繁栄した。ちなみに、ユーラシアの中でも古代はオリエントが優勢であった(ローマ帝国はその一部)が、オリエントにおける森林資源の枯渇と中国における石炭の利用開始によって比重は東に移った。大航海時代が来ると新大陸からの銀が海路で大量に運ばれるようになり、シルクロードは衰退し、ヨーロッパにおいてもシルクロードの最西端としてのイタリアから西欧へと比重が移った。西欧の中でもイギリスだけはアジアの産品を産業革命によって輸入代替することに成功し(ex.綿布)、君民の距離が近かった(三流国家だったので、国債など、資金や軍事力を最大限動員するシステムが早くに開発されていた)ために生産力の増大を軍事にも反映させることに成功し、世界の覇権を握った。その後の歴史は周知の通り。
ちなみに、遊牧民のいない日本とヨーロッパは類似の史実経過(ex.封建制)をたどった。それが近代化の前提条件たる中世を日本に準備した。

(コメント)筋は通っているので一読に値するけど、実証的でないのでこの本だけでは信じられない。そもそも、新書一冊で世界全史を実証することは不可能なので、著者の言う「選択の体系」(どの史実に着目して世界史を描くか)を示すための本だと思って読めばいいのかもしれない。この体系を実証するための研究は後から為されればいいんだと思う。
ただ、シルクロードから海路に比重が移るところの説明はいまいち判然としない。シルクロードの時代にも海路は活発に利用されていたわけで、16Cに航海技術の進歩があったのか、どのくらいあったのか触れないと、どうしても説明しきれないように思う。
あと、モンゴルすげえ。イギリスも、条件的には全く恵まれてないのにやり方だけで覇権国家へと上り詰めて、すげえ。

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