盛夏火 劇場演劇『スプリング・リバーブ』台本
『スプリング・リバーブ』
たつき---金内健樹
仁依星マヤ(にいほしまや)---新山志保
仁依星ドリ美(にしほしどりみ)---三葉虫マーチ(劇団「地蔵中毒」)
幕張みはる(まくはりみはる)---鈴木啓佑(コンプソンズ)
晩皐れい(ばんさつれい)---内藤ゆき
照明:ミキティ[波木虹香(なみきにじか)]---中西美樹
音響:ネガっくん[角田ネガ(かくたねが)]---カネタガク
舞台監督---小川陽子
【0.晩春の劇場/Late Spring Hall】
開場中〜開演までは音楽が流れている
[プレイリスト]
・Todd Rundgren – Izzat Love?
・Madosini – Yitileni
・Vanishing Twin – Magician's Success
・サニーデイ・サービス – あじさい(Intro)
・Gui Boratto – No Turning Back × David Wise – Stickerbush Symphony(Remix)
・Cocteau Twins – Frou-frou Foxes in Midsummer Fires
※開演5分前に劇場側が用意したアナウンスを流す
幕は開いている
ステージ中央にはマイクが 2本立っており、横に一本の白いバミリが貼ってある
【1.ジャンク・ジュブナイル・ジャンキーズ/Junk Juvenile Junkies】
※冒頭の展開は、トーキング・ヘッズのライブ映画『ストップ・メイキング・センス』(1984年/監督:ジョナサン・デミ)の1曲目『Psycho Killer』のパロディである
ステージ上手からたつきが歩いて出てくる
上下スーツ姿で、アコースティック・ギターを携えていて、ラジカセを持っている
ラジカセをバミリの場所に置き、スイッチを押すと簡素なドラムパターンが流れる
♪:たつき、アコギを弾きながらトーキング・ヘッズぽい歌を歌いはじめる
◎照明は陰影をつけすぎないスポットライトみたいな感じ
歌っている途中で、上手からバックを携えた仁依星マヤが入ってくる
マヤ 「おーい。・・・たつきー」
たつきは演奏を続ける
マヤ 「おーい、来たよー。・・・たつきーー?」
たつきはまだ演奏を続けている
マヤ、たつきの方に近寄っていく
マヤ 「聞こえないのかな?(怒)おーーーい!!!おい、止(と)めろ!止めろーーコラァ!」
たつき 「うわっ!」
マヤが怒鳴ると、たつきの足はもつれ、ドラムのパターンが崩れて止まる
◎照明、地明かりに
【2.フリー・ワークショップ/Free Workshop】
たつき 「あっ、なんだ。びっくりした、マヤか」
マヤ 「気づけよ。呼んでるんだから」
たつき 「ごめんごめん」
マヤ 「ここさ、めっちゃ関係者用の入口わかりにくくなかった?あっちの裏の、楽屋事務室だっけ?ちょっと迷ったわ」
たつき 「あー俺も来た時あそこでちょっと迷ったわ〜。・・・でも思ったより早かったんじゃない?(袖をまくり、つけていない腕時計を見る)」
マヤ 「(たつきの手首を指し)おい、適当に返すな。むしろちょっと遅刻したわ、島忠ホームズにも寄ってたから」
たつき 「おっ!俺が頼んだやつ?」
マヤ 「そう。これ」
マヤ、バッグから島忠ホームズのレジ袋を出し、たつきに渡す
たつきは袋をギターのヘッドに引っ掛ける
たつき 「センキュー、Merci・・・あれ、妹ちゃんは一緒じゃないの?今日来るよね?」
マヤ 「それなんだけど、ドリ美はやっぱりコンクールの本番には出れないってさ。近い日に別の舞台に出るんだって。ちゃんと人気ある劇団のやつ」
たつき 「そっか〜でも、音声だけとかでもいいからなんとかしてこっちにも出て欲しいなぁ〜」
マヤ 「一応今日はちょっと遅れてここに手伝いに来るとは言ってたけど・・・」
たつき、袋の中からメジャーを取り出し、舞台正面からマイクあたりまでの距離を測る
たつき 「59.3センチメートル・・・っと」
マヤ 「あ、レシート袋の中入ってるから。てか、今何やってたの?」
たつき 「ん?今?ほら、本番に向けてのギターのサウンドチェックっていうか」
マヤ 「ん?今回のコンクールって・・・演劇やるんだよね?芝居・・・」
たつき 「うん。演劇もいいけどさ、ほら、折角まぁまぁ大きいステージに立てるんだから、ライブしたいじゃん」
マヤ 「は?そんなんライブハウスでやればいいじゃん」
たつき 「(目を瞑り、両手で遮る)」
マヤ 「おい、その手やめろ」
たつき 「(遮りつつ)いいか?完全に無名な俺たちがだよ・・・例えば下北沢のライブハウスでワンマンライブをやったとして、客は何人くると思う?」
マヤ 「(一瞬考える)・・・まぁ、ゼロ・・・だろうね。・・・あ、まぁでも友達とかに頼んで来て貰えば、5、6人くらいなら・・・」
たつき 「そう。知名度の無い、知り合いでもないやつらのライブをわざわざ観にいこうって思う人間なんてこの世にはいないんだよ。一人も」
マヤ 「だろうね。好きでもない人の作った音楽を延々と聴かされ続けるのは苦痛でしかないからね」
たつき 「だろ?ところが、演劇だと、知りもしないパッと出の無名の劇団の舞台にでも、身一つで観に来るような好事家たちが一定数いるんだよ!老若男女ともに!特にそれがこういう公営のコンクールとかだとなおさら!」
たつき、袋の中からハンマーを出し弄ぶ
マヤ 「(考える)・・・あ〜まぁ・・・そういうもんなのか・・・でもなにもわざわざ演劇コンクールでこんなもん(ギターをはたく)やることはないでしょ?ヘッタクソなギターで・・・これに付き合わされる人たちの身にもなった方がいいよ」
たつき 「(遮り)わかってる、わかってる。俺だってこんなもん三十路を越えた自慰行為だって事もわかってるつもりさ・・・ただアスピリン片手にこのジェットマシーンに一緒に乗って欲しいわけよ」
マヤ 「ハァ?・・・ってか、そのハンマーは何に使うの?」
たつき 「なんか釘打ったりする時に使うかな、って」
マヤ 「そういうのは小屋入り日とか仕込み日にやるんじゃないの?」
たつき 「え、じゃあ今日はまだ必要なかったのかな?」
マヤ 「劇場の下見で釘打ちはじめたらマジで怒られるよ」
たつき 「そうなのか・・・あ、これ(袋の中のもの)合わせていくらだった?」
マヤ 「750円」
たつき 「ななひゃくごじゅ・・・え、高くない・・・?どこで買ったの?」
マヤ 「え?だから、そこの島忠ホームズだけど・・・」
たつき 「島忠ホームズの・・・・・・島忠ホームズ?」
マヤ 「うん島忠ホームズ。1階の」
たつき 「1階にある島忠ホームズ!?」
マヤ 「島忠ホームズの中の1階の島忠ホームズ」
たつき 「なんでだよ!?」
マヤ 「は?たつきが島忠ホームズで買って来いって言ったんでしょ」
たつき 「ちげぇよ!俺は島忠ホームズの2階にあるダイソーの事を言ったつもりだったの!・・・1階のホームセンター部分で買って来ちゃったわけか・・・すぐ上のフロアには、あったらいいなが揃ってるっていうのに・・・」
マヤ 「知らないっ!!あと、「あったらいいなが揃ってる」はダイソーじゃなくてキャン・ドゥのキャッチコピーだから」
たつき 「・・・わかった、750円はちゃんと払うよ。そりゃもちろんね!それに・・・演劇もやるし!ライブ演奏もやる!!これでwin-winだろ!?」
マヤ 「何がwin-winだよ!こっちにはマイナスしかないよ!ただでさえ演劇に出る時点で交通費とか稽古とか・・・仕事休んだりとかで色々マイナスなんだから・・・カラオケごっこやってる暇あんなら早く台本書き始めろよ!」
たつき 「いいだろ!まずは色々試してみるくらい!今日は下見で劇場の内見に来てるんだから」
マヤ 「ハイ。ま、ならまずは好きに適当にやってください。今舞台自由に使っていいなら(っ)(新山のやる見放した言い方)」
マヤ、舞台の正面端あたりに座って何か飲み物を飲む
たつき、ジャケットを脱ぐ
たつき、マイクとラジカセを隅に寄せ、アコギをスタンドに立てかける
マヤ、客席の方を向くと、割と入っている客たちと目が合い、気まずく笑う
マヤ 「え・・・(笑)あはは、ごめ(笑)なんかめちゃくちゃ人座ってない・・・?(笑)」
たつき 「あぁ。ね。劇場の一般開放日とかなんじゃない?ほら、市の施設だし。知らんけど」
マヤ 「私たちだけこんな、舞台好き勝手に使っていいのかな?(笑)」
たつき 「まあ、俺らはれっきとしたコンクール出場者としての劇場内見だし・・・。あ〜でも二人占めしてるのも悪いし、自由に上がってきてもらう?」
マヤ 「は?」
たつき 「2007年のフジロックの時のイギー・ポップのライブみたいに「お前らみんな全員ステージ上がってこいよ!」って(人々と肩を組んでジャンプする動き)」
マヤ 「いや、感染症対策上ダメでしょ」
たつき 「そっか・・・」
マヤ 「(客席を見回しながら)・・・うわぁ、でも本番の時もこんくらいお客さんいるのかな〜〜〜。緊張しそう」
たつき 「ははは(笑)気が早いな(笑)ま、今のうちから本番の舞台の上でも堂々とできるように、場慣れがてら好き放題に動いたりしようぜ」
マヤ 「そうだね」
たつきとマヤは舞台上で好き放題に動き回る
たつきはワッキーの『おばけの救急車』をやる
◎照明多少変化付ける?
たつき 「イエーーイ!!」
マヤ 「ワーー」
あらかたやっていると
マヤ 「あ、そうだ、今のうちから発声練習しとこ。あー、あー。ハッ、ハッ!あいうえお、いうえおあ、うえおあい、えおあいう・・・」
たつき 「(立ち上がりマヤに詰め寄る)おい、おい!待て、ちょっと待て!やめろ!」
マヤ 「何?」
たつき 「あんまりそういう演劇っぽいムーブはやるなよ」
マヤ 「?いいでしょ。演劇やるんだから」
たつき 「なんか・・・なんかイヤな業界っぽさが出るだろ!厳しさだけを主軸に据えたような。挨拶全部「おはようございます!」で強要するような」
マヤ 「別にいいだろ」
たつき 「いや、ダメだ。その昼夜を問わずずっと朝です感が、エンタメ業界のこの過剰労働にも結果的に結びついているのではないだろうか!?」
マヤ 「んー・・・わからなくはないけど。でも滑舌の練習くらいさせてよ」
たつき 「滑舌の練習するにしても、アエイウエオアオとかじゃなくてもっと意味のない言葉とかにしなさい」
マヤ 「おい、それはまた別の強要だろ。・・・てか、アエイウエオ以上に意味のない言葉って何?」
たつき 「う〜ん・・・それは・・・スーパーカリフラジスティックエクスピアリドーシャス(ドヤ感を伴ったわざとらしい言い方)とかじゃない?」
マヤ 「は?バカが。・・・ア!エ!イ!ウ!エ!オ!ア!オ!!カ!ケ!キ!拙者親方と申すは!ういろう売りでござる!・・・続きわかる?」
たつき 「わかんないよ!」
マヤ 「(息が切れる)あー!!すぐ疲れるわ・・・」
たつき 「すぐ疲れてもらうのも困るよ!めっちゃ大声出したり、ジャンプしたり走りまくったりするフィジカルな作品にしたいんだから」
マヤ 「えぇ〜。あ、私自転車乗りたい!(笑)」
たつき 「自転車・・・あぁ〜」
マヤ 「演劇見てて自転車出てくる演出があるとなんかアガらない?」
たつき 「たしかに・・・自転車が出てくるだけで演劇作品の傑作感が増す気はするよな・・・でもよくあるっちゃあるからな〜自転車出てくる演劇って」
マヤ 「そっか・・・ありきたりか・・・」
たつき 「そうだね。自転車はまた別の機会に・・・」
【3.自転車/Bicycle】
上手から勢いよく、自転車に乗った幕張みはるがやって来る
みはる 「すいませんすいません。遅れちゃいました〜」
マヤ 「うわっ!」
たつき 「みはるちゃん!?」
マヤ 「なんで自転車!?」
みはる 「いやぁ〜家で今回のコンクールのチラシ情報の校正を劇場さんにメールしてたら遅れちゃって」
マヤ 「あ、やってくれたんだ。ありがとう・・・」
みはる 「そんでめっちゃ漕いで飛ばして来たんですけど、せんがわ劇場どこに自転車停めたらいいかわっかんなくて、あっちの、楽屋事務室ってとこの関係者入口から、とりあえずそのまま乗って来ちゃいました(来た方向を指す)」
たつき 「そんなもん島忠ホームズにでも停めて来りゃいいんだよ!でけー無料駐輪場が実質停め放題の無法地帯になってんだから!」
みはる 「島忠ホームズ・・・?」
たつき 「劇場の入り口出て右行ってしゃぶ葉右折したとこにあるホームセンターだよ!(手振り付きで)」
みはる 「でも・・・何も買い物してないのに停めたら怒られちゃいませんかね?」
たつき 「ンあぁ!さっきマヤが島忠であれ(先程の島忠のビニールをはたく)買ったのに停めてない分の権利が1余ってるからいいの!!」
みはる 「あぁ、そうですか!じゃ、今停めてきます!(乗ったまま行こうとする)」
たつき 「(呼び止める)いや、待て待て。自転車停め行くのは後でいいから、みはるちゃんも一緒に色々と考えてくれよ」
マヤ 「そう、今本番でどんな事やるのがいいか考えてて。演出とか」
みはる 「演出ですか?あ!そうだ、言われてたアレ作ってきましたよ!」
たつき 「おっ!マジで!?」
みはる、自転車を停めると、丸められた大きめの模造紙を広げる
たつき 「Ni-ce!」
マヤ 「これ何?」
みはる 「仙川のこのあたりの地図を拡大コピーしたやつです」
マヤ 「へー。この地図使って何すんの?」
たつき 「ほら、俺らが小学生の頃とさ、結構街並みも変わってきてるじゃん?」
みはる 「あ、そっか、たつきさんとマヤさん仙川地元でしたもんね!」
マヤ 「うん、そう。小学校の時の学区内で。うちらは家、坂の下の入間町だったけど」
みはる 「へぇ、いいですね〜」
たつき 「この地図上に、なんかうまいこと小学生時代の記憶とかノスタルジーみたいなもんを浮かび上がらせる視覚的なインスタレーション?的な事やると評価が爆上がりして優勝できないかなって」
マヤ 「インスタレーションの意味ちゃんとわかってる?そもそもさ・・・視覚的にって、これ客席に見えんの?」
みはる 「あ・・・どうでしょう・・・(客席を見て小声で)ぅわ、なんか今日めちゃくちゃ人座ってません?(笑)舞台公演ある日くらい」
たつき 「ね。劇場開放日とかなんじゃない?知らんけど」
みはる 「ぁ、そゅことか」
みはる、模造紙を持って舞台中央淵に行く
たつきとマヤは両横から身を乗り出して模造紙を見る
みはる 「見えそうですかね?」
マヤ 「(客席と模造紙を交互に見て)最前列でギリとかじゃない・・・?」
たつき 「降りて一人ずつ見せに行く?」
マヤ 「感染症対策上ダメでしょ。下降りたら多分失格だよ」
たつき 「(背中側の舞台端を見る)えっ、じゃあこのステージのここは崖で、こっち下マグマって事!?」
みはる 「ははは、そんな感じですかね」
たつき、ゆっくりとみはるの背後に回る
たつき 「・・・ワッ!(後ろからみはるを押そうとする)」
みはる 「うわぁ・・・!!危ないっ!(紙を持ったままよろける)」
マヤ 「・・・おい、お前それ本番では絶対やんなよ(たつきの胸を強く小突く)」
たつき 「ヴッ(スーパードンキーコングで敵に当たって死ぬ時のような声で)」
マヤ、再び模造紙に目をやる
マヤ 「あ、でもこれうちらの小学校ちょうど切れちゃってて載ってないね」
みはる 「二人は小学校どこだったんですか?」
たつき 「(地図を指しながら)こっちの、坂降りてってすぐんとこ」
みはる 「んーと・・・?えっと、駅がここでせんがわ劇場がここだから・・・どのへんだ?(目線を地図から宙に向けて)」
たつき 「だから、劇場出て右行ってしゃぶ葉右折して島忠越えて、おもちゃのエミーの横んとこの道入ってガーって行って坂下ったとこだよ!(手振り付きで)」
みはる 「おもちゃのエミー・・・」
たつき 「知らない!?おもちゃのエミー」
みはる 「はい。僕地元民じゃないんで」
たつき 「俺らが生まれる遥か昔からある最高にイカしたおもちゃ屋だよ!桐朋学園の横あたりにある!エアガンやレーザーポインタから爆竹、警棒まで。男子は全員武器全部あそこで買ったんだ!」
マヤ 「あぁ〜なんかそんなお店あったよね。まだやってるのかな」
たつき 「え、女子っておもちゃのエミー行った?」
マヤ 「いや・・・仙川でお小遣い使って遊ぶ時は大体ハラジマ文具店行ってたかな。商店街にある」
たつき 「え!?女子ってお小遣いをおもちゃじゃなくて文房具に使ってたの!?文房具なんてあれって要は勉強道具の一種じゃん!?」
マヤ 「ぃゃ女子にとってキラキラのペンとかぷくぷくのシールとかの文房具はおもちゃ以上なの!プロフ張とか!」
たつきとみはる、「?」って顔して目を見合わせ肩をすくめる
みはるは模造紙を隅に置く
マヤ 「あ”あ”!いいよわかんなくても!くそ〜男2に女1だから不利なんだわ絶対」
たつき 「なんだよ、そこまで言うなら女子にもう1人聞いてみるか!?」
マヤ・みはる 「?」
【4.ミキティ/Mikitty】
たつき、舞台先端中央に立つと、上の方を見て叫ぶ
たつき 「ミキティーーーーーーーーーー!!!!!」
マヤ・みはる 「!?」
たつき 「ミキティーーーーーーーーーー!!!!!」
照明ブースからマイクを通じて照明:ミキが喋る
ミキの声 「(マイクをONにする音)はいー」
マヤ 「ん!?・・・あ!照明ブース!(指す)」
みはる 「あ!」
たつきを真ん中に、3人は正面中央で身を寄せて照明ブースを眺める
たつきは手を振る
たつき 「照明やってもらうミキティ」
マヤ 「・・・あ!だからさっきからいやに一々照明が気が利いた感じになってたのね!」
ミキの声 「照明の波木虹香(なみきにじか)です〜。よろしくお願いしますー」
マヤ 「あ、仁依星マヤです〜お願いします〜(愛想笑い)」
みはる 「幕張みはるですー!本番もよろしくですーー!」
たつき 「ミキティー?ミキティー!」
ミキの声 「はい」
たつき 「ミキティって小学生くらいの頃、文房具はおもちゃとしてカウントしてた!?」
ミキの声 「・・・あー、小学生の時は文房具だとシールとか本当にめちゃくちゃ集めてましたね」
たつき 「うんうん。へぇ〜」
マヤ 「ほら?ね!?」
ミキの声 「遊ぶ時はシール交換が必須事項だったんで、可愛いの買うためにお小遣い結構割いてましたし・・・文房具はやっぱり可愛いって言われたかったんで、友達となるべく被らないもの選んでたりして。キャラだと・・・「なっとうちゃん」っていうのが当時めちゃくちゃ好きで。たしかサンリオではなかったと思うんですけど」
たつき 「おいおい(笑)ミキティ、急にめちゃくちゃ喋るじゃん(笑)(みはるに顔を向ける)」
マヤ 「(たつきに)おい、お前から聞いといてバカにすんな。(ミキに)・・・なっとうちゃんね、ありましたよね〜!若干マイナーだったけど・・・私もサンリオよりもどっちかっていうとサンエックス派で〜」
ミキの声 「あぁ、サンエックス〜(名称は知っているが具体的にはわかってない感じ)」
みはる 「サンリオ派とかサンエックス派って僕らでいうとなんなんですかね?」
たつき 「コロコロ派かボンボン派か、みたいな感じじゃない?」
みはる 「なるほど」
マヤ 「(たつきとみはるの会話に被りながら)サンエックスだと〜リラックマ出るちょっ前だったんで、アフロ犬とか、こげぱんとか、あとは・・・あ!私自転車たれぱんだのやつ乗ってましたよ!(笑顔)」
ミキの声 「あ、こないだ写真見せてくれたやつですね!」
マヤ 「・・・?写真?・・・ん?こないだっていうのは・・・」
ミキの声 「あ!!いや、そうだ・・・勘違いです。ははは」
マヤ 「ははは・・・あ!ちょっと大きくなるとモー娘。のブロマイドとかも買いませんでした?」
ミキの声 「あ、私は高学年になるとディズニーチャンネル見るようになって、それからはマイリー・サイラスに憧れてましたね」
マヤ 「あぁーハンナ・モンタナでしょ!?じゃあ私の妹と近い世代かな?」
ミキの声 「あ、かもですね(笑)」
たつきとみはる、段々飽きてくる
たつき 「ねーーえ!!もっとビーストウォーズとかカスタムロボV2とかの話しようよ!!」
マヤ 「ね!?わかったでしょ?女子にとっては文房具とかファンシーグッズが十分過ぎるほどにおもちゃなの!!」
たつき 「はいはい!わかったわかった!今日そもそも下見の日だからな!?せっかく劇場の下見に来てるんだから下見をしようぜ!」
みはる 「あ、忘れてましたね」
たつき 「・・・ミキティー!引き続き、場の雰囲気に合わせていい感じに照明やってみてくれ!・・・あ、会話に混ざりたかったらいつでもマイクで入ってきてね!もしくは、YESの時は照明の点滅1回、NOの時は2回で合図してくれ!・・・「アイシテル」のサインの場合は点滅5回でヨロシク!!」
ミキの声 「はーい(マイクをOFFにする音)」
◎照明が1回点滅する
【5.カーテンコール/Curtain Call】
みはる 「今回って舞台上に出るのはこの3人だけなんですか?」
たつき 「ん〜〜〜まだそんな決まってない」
みはる 「はぁ。そんなんで間に合いますかね?何か今のとこ決まってる演出とかは・・・」
たつき 「ん〜、バンド組んでライブしたい」
みはる 「ん。演奏・・・は、どうですかね・・・」
みはるは自転車のカゴの荷物からファイル留めされた紙の資料を出して読む
みはる 「一応、演奏がNGとは書いてないですけど・・・明記されてるNG行為は、火と水使う事と・・・」
たつき 「ちょっと待てよ!?本物の火と水を使うのはウチの一番のウリだろ!?」
マヤ 「いや、ここ劇場だから。今まではあんたの家でしかやってこなかったから好き勝手に火ィ焚いたりできてただけで」
たつき 「hmmm・・・」
みはる 「・・・あとは、客席に降りて演技するのはダメみたいです」
たつき 「(ステージ下を指して、マヤに目くばせして)あ、ね。マグマね」
みはる 「・・・でも、そことそこの横の通路(客席両側の通路)は通るだけならOKみたいですね」
たつき 「なるほど、マグマが冷えて固まってんだ。横は。でも、「通るだけ」って?」
みはる 「”演技をするのは不可”って」
たつき 「それは・・・演技しないで感情とか何も持たずに無表情で歩けって事?表情が豊かすぎて演技としてカウントされたら即失格になるの?」
みはる 「そこまではさすがに・・・いいんじゃないですかね?まぁセリフ言ったりとか声出したりしなければ・・・」
マヤ 「そうだよ。そんなん誰がジャッジすんのよ」
たつき 「なら、もし横んとこ使うときはめちゃくちゃに明るい顔して歩いてやろうぜ(めちゃくちゃに明るい顔をして足踏みする)」
みはる 「はは。間違っても声は出さないように気をつけてくださいね。(資料を読む)あ、でも一個、コンクールの決まりとして、その緞帳が締まり切ったところで各団体の作品終了ってルールみたいですね(緞帳を指す)」
たつき 「ふーん・・・(緞帳を見に行く)」
マヤ 「じゃああれか、最後こう私たちお辞儀して、横からあの幕がガーって閉まって来て・・・」
たつき 「最後ってお辞儀して終わるの?」
マヤ 「え?さぁ、知らないけど。演劇の最後って大体そんな感じじゃない?」
たつき 「演劇の最後のお辞儀ってさぁ・・・あれってそんないいもんかね?」
マヤ 「わかんないけど・・・」
たつき 「いや、お辞儀はまだいいかもだけどさ。その前に、ラストで、暗転してからもう一回明るくなって、そのままの形でフリーズしていた役者たちが表情とか体のこわばりが急にフって素に戻って前向くとこって・・・なんか見ててゾッとしない?」
みはる 「ん?」
マヤ 「どんなだっけ?」
たつき 「ミキティーー!!演劇の最後っぽい暗転からの明転をおねがーーい!!」
◎照明:最後っぽく暗転
◎照明:カーテンコールっぽく明転
何かのポーズで固まっていたマヤとみはる、正面を向きお辞儀をする
たつき 「うわ!ほら!これ!」
みはる 「ん?あぁ、これっすか?(やってみる)」
たつき 「そう!感慨深げな、やり切ったみてぇなツラしやがって!!」
マヤ 「あ、これね(やる)」
みはるとマヤ、何度かやる
たつき 「きっっっ持ち悪リぃぃーー!!みんなこれ好きでやってんの!?本編が超良くても最後これなだけでスッゲー萎えない!?」
マヤ 「9割がた、どの演劇も大体こうやって終わるよ」
たつき 「でもさ演劇って身体性が重要なんだろ!?終わった瞬間に手放すなよ身体性を!!・・・ってかそもそも身体性ってなんだよ!?なぁ!これか?これが身体性か!?(自分の顔を殴る)これが身体性なのか!?ああ!?(みはるに詰め寄る)」
みはる 「ぅゎぁ」
マヤ 「それは・・・身体性では無い!!」
たつき 「あぁ〜〜〜最後急に素になるとこ、本当に気持ち悪すぎる。(目を閉じる)・・・ちょっともう一回だけやってみようぜ。今度はみんなで」
マヤ 「気持ち悪さがクセんなってるじゃん」
たつき 「今度は、演出家とかスタッフとかも全員裏から感慨深げな顔でワラワラ出てくる、みんなで気持ち悪い方のパターンね!俺もあっちから出てくるから」
みはる 「は、はい・・・」
マヤとみはる、適当な向きに向き直る
たつき、上手へ
たつき 「ライツカメラアクション!」
マヤ 「カメラ無いから」
◎照明:最後っぽく暗転
♪:最後っぽい音楽、音量が上がって下がる
◎照明:カーテンコールっぽく明転
マヤとみはる、表情が素に戻り正面を向き、一歩前へ出る
上手側からたつきが、下手側から音響:ネガが出てくる
下手側から、ネガ→マヤ→みはる→たつき、の順に横並びになる
全員感慨深いような表情をしている
マヤ 「(ネガに気づいて)うわ!!あんた誰!?」
ネガ 「ん?あぁ、どうも」
たつき 「音響やってもらうネガっくん。今日も一応来てもらってて」
マヤ 「あ!だから今それっぽい音楽流れてたのね!(上の方を指す)」
たつき 「あと、時間計測もやってもらってる。俺が最初に出てきてから、今で大体何分?」
ネガ、たつきにストップウォッチを見せる
ネガ 「こんなもんかな?」
たつき 「hmmm...」
ネガ 「あれ?俺今変に止めちゃわない方が良かった?(笑)」
みはる 「いえ・・・そんな事はないですけど・・・」
ネガ 「(ガク特有のドヤ顔)スタッフもみんな出てくるって言うもんだからさ。俺も出てきちゃったよ。ははは」
ネガ、下手に戻る
♪:消える
みはる 「あ、そっち(下手)にずっといらっしゃったんですね・・・」
マヤ 「てかさ、さっきのが嫌ならどんな終わり方なら許せるのよ?」
たつき 「うーん、もっとこう・・・全てがゴワーーってなって、ジャーーンってバーンアウトして人も舞台も一気に全て消失して終わるみたいな・・・」
みはる 「ちょっと抽象的過ぎますね」
たつき 「だから!それこそ全てが抽象と混沌に帰して終わるみたいなのがいいの!カーテンコールとか一切なしで!」
マヤ 「そんな言うならやってみろよ!ちゃんと具体的な演出でな!?」
たつき 「んぬぬ・・・ネガっくーーん!?めっちゃクライマックスっぽい音出して!大音量で!」
ネガ 「了解〜」
たつき 「ミキティー!可能な限り照明を全開でビカビカにしてー!!」
ミキの声 「やってみます」
たつき 「よし、いくぞ!!」
♪:The Beatles『A Day in the Life』の最後のとこと『ツァラトゥストラはかく語りき』の最後のとこを合わせたような音楽
◎照明:とにかく明るく、強い、派手な、電力全開の照明。可能ならストロボなども
みはる 「うわああああ!すごい!!それっぽい!!」
マヤ 「うおおおお!」
たつき 「うおおおおお!!いくぞ!くるぞ!?・・・せーのっ!!」
3人、ジャンプしようとする?
♪:最後の「ジャーン」のところで、エンジンがオーバーヒートする音(ミレニアム・ファルコンのものを使う)
◎照明:突然落ちて真っ暗闇になる
マヤ 「うわっ!真っ暗!」
みはる 「わああ」
たつき 「あれ!?ミキティー!ミキティー!?」
ミキの声 「(くぐもってる)すいません。電力使いすぎてヒューズが飛んだみたいです」
ネガ 「音響の電源も落ちてるー!」
たつき 「えぇーー!?」
みはる 「たしか・・・舞台上手側に分電盤があったはずです!」
たつき 「俺行ってくる!(小走りする音)」
みはる 「転ばないように気をつけてくださいね!」
マヤ 「あ!危なっ!今舞台から落ちるところだった!」
みはる 「明るくなるまで動かない方がいいですよ〜〜〜」
と、舞台上で狼狽えるなか、客席右側通路から懐中電灯の光がステージに向かってくる
たつき 「(舞台袖から)あ!あった!これだ!」
♪:エンジンが復旧する音(ミレニアム・ファルコンのものを使う)
◎照明:戻る
みはる 「あ!戻った!」
【6.花キューピット/Flower Cupid】
と、舞台上手寄りの淵を改造ランドセルを背負った晩皐れいが登ろうとしている
マヤ 「うわっ!」
みはる 「はっ!大丈夫ですか?」
みはる、れいの手をとり舞台上に登らせる
れい 「あ、ありがとうございます・・・。あのぉ、せんがわ劇場のメインステージってここで合ってますか?」
たつき・マヤ・みはる 「?」
みはる 「え・・・はい。ここだと思いますけど・・・」
れい 「あ!よかった!暗かったし、何かやってるっぽかったんで入っていいのか不安でした〜。花キューピットです〜どうぞ」
れい、舞台上で3人に一輪ずつ花を配る
みはる 「?・・・どうも」
マヤ 「花キューピットってこんな感じだったっけ・・・?」
れい 「いえ、これは試供品のサービスみたいなもので・・・(ランドセルを床に置いて、伝票を見る)ええと・・・こちらが、にいほし様へのお花のお届けものです。ラベンダーが100輪」
れいがランドセルを開けると中にラベンダーが沢山入っている
ランドセルには花キューピットのマークが描かれたカバーが付いている
たつきとみはる、マヤを見る
マヤ 「仁依星は私ですけど・・・え、でも私花なんて頼んでないよ?」
たつき 「あ、あれじゃない?「祝ご出演」的な花みたいなやつ。だとしたら相当気が早いな(笑)」
マヤ 「(たつきに)そんなわけないでしょ。(れいに)あの、私それ頼んでないんですけど・・・」
れい 「本当ですか?(伝票を見る)今日このお時間にピンポイントで指定だったんですけど・・・東京都調布市仙川町1-21-5調布市せんがわ劇場メインステージ・・・」
たつき 「あ!お前あれだろ!花の押し売りだろ!よく駅前とかでマルチビジネスに引っかかった若者が台車引いてアイス売らされてるやつ!あれの花版!」
れい 「違いますよ!代金も前払いで頂いてますし・・・(伝票を見る)えー・・・にいほしドリ美様から、2ヶ月前に」
たつき 「ドリ美って・・・」
みはる 「あ、マヤさんの、」
マヤ 「妹だ。私の・・・」
みはる 「ね、妹さんですよね?」
れい、伝票とマヤの顔を何度か見比べる
れい 「あれ・・・マヤちゃん・・・?やっぱりマヤちゃんだよね!?・・・仁依星って!(自分を指して)ほら!れい!」
マヤ 「・・・え?あ!!れいちゃん!?」
れい 「そう!れい!晩皐れい!覚えてる!?小学校一緒だった!」
たつき 「ん!?」
マヤ 「覚えてるよ〜!」
みはる 「あ、お二人の同級生ですか!?」
マヤ 「そう。お家が仙川で・・・あっちの商店街でお花屋さんやってて・・・。うわ〜久しぶり〜・・・」
れい 「あ、そう(笑)これ(ランドセルの花キューピットのマークを指す)、家業」
たつき 「・・・あ!晩皐さんって、晩皐生花店の晩皐さん!?」
れい 「そうですそうです。2009年にFLOWER SHOP BANSATSUになりましたけど」
マヤ 「・・・ほら!こいつ、たつきだよ。れいちゃん覚えてる?」
たつき 「あ・・・どうも、お久しぶりです」
れい 「たつき君って・・・あ!エアガン学校に持ってきたのが問題になって、それでおもちゃのエミーがうちの生徒にエアガン売るの禁止になった、あのたつき君!?」
たつき 「うわ!なんでよりによってそのエピソードで覚えてるんだよ!」
れい 「たつきくん・・・あ〜ごめん、苗字の方忘れちゃったけど・・・(たつきの身長を手で測って)あの悪ガキのチビ助がこんなに大きくなって・・・」
たつき 「え?あはは・・・そんな伸びたかな?(微照)」
れい 「たしか同じクラスにはなった事なかったけど、5,6年の頃何回か仙川の商店街で遊んだよね〜。ほら、クイーンズ伊勢丹の前の公園ができたばっかりの時・・・」
マヤ 「あ!その時私もいたかも!」
れい 「マヤちゃん大体いたじゃん〜わざわざ坂下から自転車で来てくれて。あ、ほら、たれぱんだの自転車で(笑)」
マヤ 「うわ!なんか恥ずかしい(笑)」
れい 「高学年の時うちら遊んだらめっちゃハラジマばっか行ってたよね(笑)」
マヤ 「あぁ(笑)ハラジマ文具店でしょ?さっきも丁度その話してて」
れい 「あ、ね、見て。(ペンを何本か出す)あの頃遊ぶたびにハラジマでキラペン買ってたからさ、まだ一杯うちに使い切ってないやつあって。全然現役で使ってるの(笑)」
マヤ 「うゎ・・・!キラペン懐かしい〜〜〜」
マヤとれい、しゃがみ込んで話す
れい 「うちの配達のサインとかでもこれ使ってるんだけどさ、書きづらいってお客さんからよく怒られる(笑)」
マヤ 「キラペンはサイン向きじゃないでしょ(笑)あ、これ匂い付きのやつだ(嗅ぐ)・・・あ、そうだ、見て、これ・・・(鞄から手帳を取り出す)私も小学生の時に買ったプロフ張、外側だけまだ現役で使ってる(笑)スケジュール張として」
れい 「え、可愛い〜〜〜!(手帳を見る)あ、これ、星とか虹とかHAPPYとかLOVEとか一杯書いてある・・・あのやつ!これ一緒にハラジマで買ったやつじゃない?」
マヤ 「あ、そっか!そうだったっけ!」
れい 「私、絶対ポムポムプリンがいいよって言ったのに、マヤちゃん聞かなくって(笑)」
マヤ 「ほら、私サンリオよりサンエックス派だったから(笑)」
れい 「これはサンエックスですらないでしょ(笑)。でもマヤちゃんいっつも”じゃない方”選ぶタイプだったもんね(笑)ほら、みんなモー娘。なのに一人だけ相当早い段階でBerryz工房になる前のハロプロエッグ追ってたじゃん!」
マヤ 「えー!でも私漫画はりぼん読んでたよ!(笑)」
たつきとみはるは手持ち無沙汰になっている
たつき 「もー!!なんで女子って文房具とかファンシーグッズの話するとこうも止まんねーんだよ!もっとゴールデンアイとかの話しようよ!!Berryz工房じゃなくて化学工場でモーションセンサー爆弾縛りの話しようよ!」
マヤ 「だ・か・ら!女子にとっては文房具とかファンシーグッズが十分におもちゃなの!!」
みはる 「あ、間とってポケモン金銀の話とか・・・いや、ポケットピカチュウの話しません!?あれなら男子も女子もやってたし・・・!」
マヤ 「あぁ私それ持ってなかった。ヨーカイザーってやつならやってた」
みはる 「ぅゎ、じゃない方・・・!」
【7.漂流劇場/Drifting Stage】
れい 「というか、マヤちゃんたち、こんなとこで何やってんの?」
マヤ 「あ、実はね。私達今度ここでやる演劇コンクールに出るから・・・」
れい 「コンクールって・・・あ、外にポスター貼ってあったやつ?」
たつき 「え、もう貼ってあった?」
みはる 「(たつきに)もうポスターできたんですね。ついさっき校正を送ったばっかりなのに」
たつき 「今それの下見?的なやつで来てて、舞台上で色々作品構想を練ってて、ストーリーとか演出考えてんのよ。(隅に置いてある、先程の地図を指す)ほら、その仙川の地図とかもなんかで使おうかな〜とか」
れい 「おぉ、すごい。たつき君が話作るんだ」
マヤ 「まだ全然なんにも決まってないけどね」
れい 「いつやるの?見にいくよ」
マヤ 「えっと、いつだっけ・・・5月の、えっと、にじゅう〜〜〜?」
みはる 「僕らは初日の土曜の一番手で・・・」
れい 「5月中?え!じゃあ本当にもう残り少ないじゃん!(笑)間に合うの?」
マヤ 「え?そうかな?」
たつき 「まぁ・・・だよな。5月なんてもう、すぐだと思って進めないとな・・・あぁ、出演者とかもどうしよう・・・あ、晩皐さん出る?(笑)」
れい 「いや私は演技とかそんなん恥ずかしい恥ずかしい(笑)」
マヤ 「そうだ!れいちゃん今度一緒にお花見しない!?うちらこの演劇の稽古で頻繁に仙川来るからさ。ほら、クイーンズの前の公園とか、あそこ桜の木あったよね?」
れい 「えー(笑)マヤちゃん何言ってんの?さすがにお花見は季節はずれでしょ(笑)」
マヤ 「ん?そうかな・・・まだ咲ききってはないけど、もうあと1週間とかで満開くらいだと思うけど・・・」
みはる、一人だけ少し離れたところでいぶかしんだ顔をし始める
れい 「ん?ん?(笑)ふふ。まぁ、またすぐ連絡するね。(届け物のカバンを見る)あ、そうだ、これ・・・どうする?」
マヤ 「あぁ〜・・・でもドリ美が本当に注文してはいるんだよね?今日、この場所の指定で・・・」
れい 「(伝票をみる)そうだね。にいほし様、せんがわ劇場メインステージ必着、2022年5月21日13:30・・・」
マヤ 「ん!?5月!?」
れい 「そう、21日。今日の13:30で」
たつき 「今日?」
マヤ 「えっ?」
たつきとマヤ、顔を見合わせる
みはる 「・・・ハッ!」
みはる、その場で小ジャンプをすると突然舞台上手へ走り去る(ほりぶん『かたとき』参照)
たつき 「みはるちゃん!?」
みはる、少しすると大きめのコンクールのポスターを持って戻ってくる
みはる 「(少し息が上がっている)さっきからずっと・・・何かおかしいって思ってたけど・・・今・・・ロビーに行ったらこれが・・・!」
ポスターを広げると「本日初日」とデカデカと添え文字が貼ってある
たつき・マヤ 「あぁっ!!」
たつき 「”第12回せんがわ劇場演劇コンクール本選!本日初日!!”」
マヤ・みはる 「あっ、あ、あぁぁ・・・」
たつき、正面を向き、ポスターを指し示す
たつき 「みんなこれを見ろ!!ぼくたちはコンクール当日へきてしまったんだ!!」
マヤ・みはる 「ええっ!!(楳図かずおタッチの顔で)」
マヤ 「そんな!そんなことってある!?」
みはる 「ずっと会場の様子がいやに張り詰めてるなぁ、おかしいなぁ、って・・・(『エンドレスエイト』の時の朝比奈みくるの言い方で)」
マヤ 「・・・ハッ!じゃあこの客席に座っている人たちは・・・」
たつき 「・・・なんてことだ!今の俺たちはずっと審査対象にされていたんだ!!」
みはる 「(客席に)やめてください!!最初からやり直させてください!!!」
れい 「ちょっと!ちょっと待って!さっきからマヤちゃんたちずっと何言ってるの!?今日は最初っからまぎれもなく2022年の5月21日だよ!」
マヤ 「そんな!そんな・・・今日は、今日は・・・」
れい 「落ち着いて。マヤちゃんたちの時間では今日はいつだったの?」
マヤ 「今日は3月の・・・春分の日、のちょっと前の土曜日の・・・」
れい 「私より2ヶ月くらい遅れてる!」
マヤ 「じゃあ・・・じゃあ、れいちゃんは未来人ってこと!?」
れい 「(一瞬客席の方を見る)・・・違うの!私が未来人なんじゃないの。・・・たつきくんとかマヤちゃんたちの方が過去人なの!」
みはる 「カコジン・・・」
たつき 「オール・ザ・ピーポー・・・」
マヤ 「そんな・・・今朝・・・今朝家出た時は絶対普通に3月だったはずなのに・・・川沿いの桜もまだ五分咲きくらいで・・・」
れい、隅に置いてあった仙川の地図を持ってくる
れい 「(何かに気づく)そうか・・・。ねえ、みんな、仙川の町の東側には実際に仙川っていう川が流れてるのは知ってる?」
たつき 「え?あぁ・・・あのドブ川だろ・・・?」
れい、みはるに地図を持たせる
れい 「(地図に太めのラメのペンで描きながら話す)いい?これが仙川ね。逆S字に流れてて、水の流れはこっち向き。そうすると、フレミングの左手の法則(実際に手でやる)と同じで、コイルに電流流した時みたいに磁場が発生するの。この場合、仙川の逆S字がコイルの螺旋の巻いてる方向で、水流が電流だと思って。そうした時に、一番強力な磁場が発生する、この逆S字のカーブが一番急になってる所の延長線上にあるのが・・・」
れいの左手人差し指は地図上のせんがわ劇場を指し、ラメペンで地図上に記す
みはる 「この、せんがわ劇場・・・!」
たつき 「おお、ラメが照明に反射して見やすい・・・」
れい 「この建物のロビー入口は東側だったけど・・・マヤちゃんたちはどっちから入ってきたの?」
マヤ 「えっと・・・あっちにある楽屋事務室のとこのスタッフ用入口だけど・・・」
れい 「(方位磁石を出す)・・・やっぱり!あっちは北側!マヤちゃん達が元来たっていう3月、春分の頃は北が鬼門になりやすいの!きっと、強い磁場の中で、その楽屋事務室の所にできた鬼門を通っちゃったから、みんなは2ヶ月も未来の今日、5月21日に飛ばされて・・・(3人の目線に気づいて)ん、あれ、もしかして、私、急に宇宙の話とかし出す厄介なやつみたいに今思われてる・・・?」
みはる 「いや・・・」
たつき 「そんな事は・・・!」
マヤ 「全然思ってない・・・!大丈夫、全然思ってないよ!(れいの肩を強く持つ)・・・で、5月に飛ばされたって・・・じゃあ私たちはもう元の3月には戻れないってこと!?」
たつき 「それじゃコンクールに間に合わない!!」
みはる 「間に合わないもなにも、もう始まっちゃってるんですよーー!!」
れい 「(背負ってきたランドセルに目をやる)大丈夫・・・5月21日はまだギリギリ春だから。春はタイムリープ起きやすい季節だから、みんなが元いたっていう時間まで、もう一度帰れるかもしれない!」
たつき・マヤ・みはる 「えっ!!??」
【8.三月からの電話/March Hotline】
れい、ランドセルから大量のラベンダーを取り出して床に並べ始める
みはる、地図などを隅に置く
たつき 「(少しの間の後)ねぇ晩皐さん!タイムリープが起きやすい季節って、夏じゃなかったの!?ねぇ、ねぇ晩皐さん!?」
マヤ 「その花は・・・」
れい 「(並べながら)ラベンダー。・・・そう、ラベンダーの香りには、時をこえる力があるって言われているから・・・。そっか、私が今日この劇場にラベンダーを配達に来るって事も、2ヶ月前から決まってた運命だったのかも・・・」
みはる 「たしか・・・2ヶ月前にラベンダーを注文したっていうのは・・・」
マヤ 「(携帯電話が着信している)あ!ドリ美から電話だ!」
たつき 「!、ネガっくん!!」
ネガ、一瞬顔だけ幕の裏から出てくる
ネガ 「回線5番からメインに繋ぎます!」
♪:ドリ美からの電話が繋がる
◎照明:マヤに軽くスポット?
ドリ美の声 「(ノイズが多い)もしもし?お姉ちゃん?ごめん今向かってて、もうすぐでせんがわ劇場着くけど・・・」
マヤ 「ドリ美!ドリ美!?今日は何月何日!?」
ドリ美の声 「え?今日?・・・今日は、えっと・・・3月の・・・」
マヤ 「3月!私たちが元いた3月!!」
たつき 「ドリ美ちゃんは3月!!マーチだ!!」
マヤ 「・・・ドリ美!?一回しか言わないからよく聞いて!今すぐに、花屋さんでラベンダーをできるだけ多く、花キューピットで注文して!」
ドリ美の声 「ん?え?なんで?」
マヤ 「いい!?花キューピットで2022年の5月21日、午後1時半過ぎにせんがわ劇場のメインステージ、私宛に配達させて!!」
ドリ美の声 「え?5月って・・・2ヶ月も後だけど、いいの?あれ、21日ってコンクールの本番じゃ(なかったっけ・・・)」
マヤ 「(遮るように)いいから!」
ドリ美の声 「は、はい・・・あ、ちょうど今花屋さんあったから、ここで注文してみるね・・・」
マヤ 「それと、今日は絶対にせんがわ劇場には来ないで!!楽屋事務室の出入り口を通るとドリ美まで大変な事になる!」
ドリ美の声 「ん・・・?はい、行かなくていいのね・・・?(入店する音)」
れいの声 「いらっしゃいませ〜」
ドリ美の声 「あ、すいません〜花キューピットでラベンダーを送りたいんですけど・・・」
れいの声 「はい、花キューピットですね。お届けのお日にちは・・・」
♪:電話のノイズが多くなり、切れる
【9.ラヴェンダー・ランデヴー/Lavender Rendezvous】
れい、ラベンダーを円形に並べ終わる
みちる 「妹さんが・・・ドリ美さんが今日の僕たちまで送ってくれたんだ」
れい 「ラベンダーの季節は6月末。まだ少し早いのに・・・なんでこんなに沢山のラベンダーを注文するんだろう、って。3月の私はそんなふうに考えていた。そんな時期が私にもありました」
マヤ 「れいちゃん・・・!これでどうやって3月に帰るっていうの!?」
れい 「落ち着いて。マヤちゃん、少し深呼吸してみて」
マヤ 「えっ・・・(深呼吸する)」
れい 「どう?(目をつむり呼吸する)むせかえるようなラベンダーの香り。ラベンダーはね、鎮静作用のある酢酸リナリルやリナロールの効用が有名だけど、カンファーって成分の持つ興奮作用も実は同じくらい強いの。この興奮作用こそが、個人における時間跳躍に最も欠かせないと言われているわ」
たつき 「一体どの界隈で!?」
マヤ 「じゃあ、このラベンダーの力で・・・」
れい 「みんな・・・強く念じて・・・!3月の春分の前の土曜日、劇場北入口の鬼門を通った時の事・・・なに室だっけ?」
マヤ 「え?・・・あぁ、楽屋事務室?」
れい、たつき、マヤ、みはる、ラベンダーを囲むように手を繋ぎ輪になる
◎照明:だんだん明るくなっていく
れい 「土曜日の、楽屋事務室!!」
4人 「土曜日の、楽屋事務室!!!!」
何も起きない
◎照明:普通に戻る
たつき 「・・・あれ?」
マヤ 「なにも変わらないよ・・・?」
れい 「だめか・・・5月21日はまだギリギリ春だと思ってたけど・・・ひょっとしたらもうすぐ初夏なのかも・・・今日(実際の当日前後の気候に合わせて、ここ最近、昨日、など)なんて春なのに25度を超えていこうとするような日だったから・・・」
たつき 「クソが!2ヶ月先のこっちの世界はとんだデート日和だな!!」
れい 「でも、春は・・・春ならタイムリープ起きやすい季節だから・・・。こうなったら無理矢理にでもやるしかない!(腕時計を構える)晩春と初夏の狭間の今日午後2時過ぎ!この一瞬の狭間に、全宇宙に・・・いや・・・全仙川に存在しない時間を1秒間だけ作る!!1秒間だけ仙川の春を延長させる!!ギター貸して!!」
たつき 「えっ!?」
れい 「いいから!!」
たつき 「あ、あぁ・・・はぃ・・・」
たつき、アコギを取りに行く
【10.後取り約束/Reservation to the Past】
れい、アコギを受け取る
ステージ中央でAM7add9コードを鳴らす
◎照明:春&愛っぽく?
れい 「AM7add9(エーメジャーセブンアドナイン)・・・これが春のコード、愛の和音。火、水、風、土、その4つの元素を超越した、形なき5つ目の元素・・・」
マヤ 「たしかに・・・なんだか春の空気感をまとったような響き・・・!」
みはる 「それに、胸が少しキュっとなります・・・。これが愛なんでしょうか?」
れい 「この和音・・・愛の和音には時を超える力があるの。(ギターを何度か鳴らす)でも、これだけじゃまだ弱い、音が小さい・・・」
マヤ 「何か、ほかに使えそうな楽器無いかな!?」
たつき 「探してくる!」
たつきは上手に、みはるは下手に、小ジャンプをしてから駆け出す(ほりぶん『かたとき』参照)
たつきは下手から、みはるは上手から帰ってくる
たつき 「だめだ・・・」
みはる 「この劇場にはもう他に楽器なんてないですよ〜!」
たつき 「・・・いや、あ!?違う!!なぁ、俺たちはこれからまた3月に戻るんだろ!?なら・・・えっと、もし!本当に3月に戻れたら!本番の、5月の今日までに、絶対!絶対劇場の舞台裏に、楽器を一式仕込んでおくっ!!」
みはる 「でも、今舞台裏ザッと見たけどそんなんなかったじゃないですか!?」
たつき 「あ・・・そっか・・・あ!じゃあ、あそこ(上手を指す)の、鍵の付いたロッカーの中に隠しておくっ!!絶対!今日までに!!」
マヤ・みはる・れい 「!!」
たつき、マヤ、上手舞台裏に走って行く
マヤは冒頭でたつきが隅に置いたハンマーを持って舞台裏へ走っていく
♪:(上手から)ハンマーでロッカーを破壊する音
3人は楽器やアンプ一式を持って上手から戻ってくる
エレキギター、エレキベース、アンプx2、エフェクター、フルート
みはる 「あった〜〜〜!!」
マヤ 「これ、私のフルート!!」
れい 「よし!早くこれで演奏しましょう!!」
みはる 「あ!・・・でも、電気使いすぎるとまた電源落ちちゃうんじゃ・・・!?」
ネガ 「心配ない!!」
ネガ、電気コードに絡まりながら舞台上に出てくる
ネガ 「この建物の2階と3階の電源をバイパスさせて、せんがわ劇場全ての電力を1階のこの舞台上に集中させた!上の階で楽屋とかふれあいの家使ってる人たちが居たら、すまねえ!!電源はこれを使え!あと、(ストップウォッチを見る)たつき君が最初に出てきてから、もうxx分だ!残り時間が少ない!急げ!!」
ネガ、みはるに電源タップを渡す
一同、楽器をアンプに繋ぎ音出しをする
◎照明:クライマックスっぽく?
れい 「いい!?春のコード、愛の和音だけを使って音を出して!AM7add9と、A6と・・・EM7add9からのAと・・・」
【11.ドッペルゲンガー/Doppelgangers】
たつき、ギターやアンプを準備中に思い出し、舞台正面へ行く
たつき 「あっ、そうだ!!・・・ミキティーーー!!ミキティも早く舞台の上に来るんだ!!一緒に3月に帰ろう!!」
ミキの声 「あ、私は大丈夫です。私は最初っからこっちの・・・5月の人間なんで」
たつき・マヤ 「えっ!?」
ミキの声 「すいません。こっちのたつきさん達から元々話は聞いてましたんで、実は今日も最初っから、それっぽい感じで照明やらせてもらってました」
♪:照明ブースに人が入ってくる音がする
たつきの声 「ミキティ、最後まで照明どうもありがとう」
マヤの声 「色々紛らわしくてすいませんでした」
たつき・マヤ 「えっ!?」
みはる 「(照明ブースを指す)うわぁ・・・!あっちに、僕たちがいます!!この時間の!!」
たつき 「テメエ!!今日コンクール本番だってのに、なんで何もせずに俺たちが右往左往してるのをただボーッと見てるんだ!!お前らがこの本番のステージに立てよ!!」
たつきの声 「違うんだ。もうお前達は・・・いや、俺たちはコンクールの本番をやってしまっていたんだ。俺たちからすると・・・そう2ヶ月前に。今のお前たちがな!だからわざわざ今の俺たちがここで出て行く必要はない」
マヤ 「この時間は本来あんた達の時間でしょ!?なんで私たちがこんな面倒なことしないといけないの!?」
たつきの声 「お前達は3月に戻って、今まさに都合よーく設置されてた楽器とかを仕込む必要があるだろ?」
たつき 「いや、それはお前らがやってくれればいいだろ!?」
たつきの声 「まさにその通りだ。そうだ、俺たちがやったんだ。俺たちがやったんだよ。俺たちは、お前達がもう一度今年の3月に帰ってから、それから5月を迎えたお前達なんだ」
みはる 「うわ〜〜〜頭がぐるぐるする〜〜〜」
みはるの声 「とりあえず、今はこのコンクール出場作品を最後までやり終えてください!制限時間内に!」
みはる、自分の声にハッとする
たつき 「という事は・・・俺たちは今本番を先にやって、その後で過去に戻って楽器類の仕込みをやらなきゃいけないって事か!?」
たつきの声 「そうなるかな」
たつき 「自分がこれから経験する記憶がもう一人の自分の口から語られるなんて・・・!これはディック的恐怖だよ!・・・あ、ディックって言ってもおちんちんの事じゃないよ?」
マヤとマヤの声 「「うるせえ!」」
みはる 「じゃあ・・・まず最初に本番があるって事ですか!?」
たつきの声 「そう。で、その後、今俺たちはこうして観客としてお前らを見ているってわけ!」
たつき 「普通の演劇の順序と逆転してる!!狂ってる!!ってか、自分の声客観的に聞くと気持ち悪!!」
れいの声 「ははは。大体たつきくんいつもこんな声で喋ってるよ(笑)」
マヤ 「れいちゃん!?れいちゃんもあっちに居るの!?」
マヤ、舞台上のれいと照明ブースを見比べる
れいの声 「はい。こっち居るよー」
マヤ 「れいちゃんって元々こっちの、5月の時間の人じゃなかったっけ!?」
たつき 「そっか!晩皐さんまで俺たちと一緒に3月に戻ったら、2ヶ月間人よりムダに多く歳を取る事になるぞ!?『ハリーポッターとアズカバンの囚人』の時に時間を戻しまくって同じ時間帯の授業に全部出席していたハーマイオニーと同じ事が起きてしまう!」
マヤ 「わかりにくい例え!」
れいの声 「あぁ、あぁ、あぁ〜!ううん、」
れいとれいの声 「「大丈夫!私、早生まれだから!2ヶ月程度時間がダブったって、まだ全然同級生の範疇!ほら、私、早生まれだから!」」(ユニゾン)
マヤ 「うわっ!」
たつき 「そっか!なら大丈夫か!」
れいの声 「うん、大丈夫」
みはる 「ちょっと待って!今僕たちがこのまま3月に帰れたとしても、舞台上の撤収作業ができなかったらその時点で失格になっちゃいますよ!?(舞台を見回す)」
たつきの声 「それは任せろ。せめて後片付けくらいは俺たちがやっといてやるよ」
たつき 「おい!?ほんとだな!?任せたぞ!?」
マヤの声 「今日本番なのに私たち全然やる事無くてヒマだったもんね〜(笑)」
たつき 「あっ!なんて言い方だ!ムカつく〜」
たつき、舞台上のマヤの方を見る
マヤは心底不服そうな顔で抗議する
たつき 「あ・・・そうだ!なぁ、俺たちはこのコンクールで優勝できるのかー!?」
たつきの声 「それはまだ俺たちにもわからない。表彰式は明日だからな!未来は白紙なんだ!」
マヤの声 「それじゃ、あとは頑張って!」
♪:マイクの切れる音
【12.スプリング・リバーブ/Spring Reverb】
たつき 「FUCK!」
れい 「ライツ・ミュージック・アクション!」
たつき、エレキギターを鳴らす
♪:演奏トラックが流れ始め、演奏を始める
れい 「いい!?今から仙川の春を1秒間だけ延長するよ・・・!私が合図したらみんな残響を、できるだけ長く残して!!その一瞬に、飛び込むっ!」
ネガ 「俺も入れてくれ!俺も3月から来てるから!」
ネガ、出てきて輪に加わり、ボンゴで演奏に加わる
れい 「(客席に)会場のみなさんも!いいですか!?飛び込む瞬間、1秒間だけ、絶対に息をしないで!できれば心臓も動かさないで!そうしないと、時間の狭間に挟まれて、下手すると全身がバラバラに弾け飛びますよーー!!」
たつき 「ヒッ・・・!」
れい 「土曜日の楽屋事務室!!」
5人 「土曜日の楽屋事務室!!!!」
音楽が盛り上がる
◎照明:めちゃくちゃ激しくなる
れい 「行くよーーー・・・!みんな息を止めて!!」
5人 「せーーーのっ!!!!!」
全員ジャンプする
◎照明:ジャンプ中に完全に真っ暗になる
♪:ジャーーン!(AM7add9)
♪:残響が長く残り、弦楽器などはフィードバックしている
◎照明:少しするとうっすらとだけ明るくなる
舞台上からは人が消え、楽器だけが残されている
◎照明:少しすると5回の点滅が何度も繰り返される
♪:山下達郎 – LOVELAND, ISLAND (を出演者たちが順番に歌ってるカバー)
【13.撤収作業/We Cleanup Spring】
客席側通路から、夏服姿のたつき、マヤ、みはる、れい、ネガが入ってくる
たつき、声は発しずにめちゃくちゃに明るい笑顔を全方向に振りまいている
◎照明:夏っぽく
持ち上げたり引っ張ったり協力しあって舞台に上がる
舞台に上がった者から声を出し、楽器の後片付けを始める
マヤ 「あぁ〜終わった終わった!まぁ、今日私たち何もやってないけど」
みはる 「なんやかんやでうまいこといったみたいですね」
たつき 「いや〜本番日こんだけしかやらなくていいなんて本当楽だな〜!」
れい 「私もこれでやっとうちに帰れるよ〜」
マヤ 「ようやくこの世界に居るれいちゃんが一人だけになったね(笑)」
みはる 「あ〜〜〜!自転車!!2ヶ月間も自転車なくてほんと大変でしたよ〜」
ネガ 「そろそろこれ(緞帳)閉めてもらったほうがいいんじゃないの?」
みはる 「そうだ!作品終了はこれ閉まるところまででしたもんね・・・!」
たつき 「やべ・・・お願いしまーす」
楽器類を片付けているなか緞帳が閉まる
♪: F.O.
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