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#256 映画記録『怪物』主観の排除は不可能。

 映画「怪物」を観てきてかなり余韻が残っているので、感想を書いていこうと思います。

 あらすじをざっくり書きますと「とある港町。嵐の夜に、小学生男児二人が失踪した。失踪した息子を愛するシングルマザー。男児二人の担当だった新任教師。校長やクラスメイトなど、関係者の証言は食い違うばかり。二人が失踪したのは一体なぜ……。」という感じ。

 一見、ミステリが始まりそうなあらすじですが、実際には人間ドラマだな、と感じます。(伏線が張られ、それを回収する、という要素もたくさんあるのですが。)




ネタバレ要素多いので、以降、ご注意ください。






 観終わって感じたのは主にふたつです。

1)娘がこれから生きていく中で「世の中の普通」から外れて悩んだとき、素直に打ち明けてもらえるような関係を築けるだろうか。

2)「差別や偏見」はなるべくなくしていくべきものであるが、人は自身が生き、他者と関わっている時点で、すでに自分の価値観を世に示すことになっている。人間はどうしたって主観で物を見るし、気づかぬうちに誰かに枷を嵌めたり、誰かを傷つけてしまうことがある。どんなに中立でいようとしても、その影響をゼロにすることは不可能だ、と自覚していることの方が大事。


 嵐の夜に、失踪した男児の一人、ミナトくんは、母にも誰にも打ち明けられない感情をうちに抱えて悩みます。それは誰かに直接「いけないことだ」と言われたものではないのですが、他者と関わる中で、その感情が決して母や担当教師など身近な人が望んでいるものではないことを当然理解しています。だから、自分自身すらも、その感情を否定し、蓋をし、見ないようにしますが、そうやって嘘を重ねることで、担当教師にいわれない罪をかぶせ、母とは真に理解しあうことができず、すれ違うことにもなります。

 子を持つ母の目線で見ると、こんなふうに子供が悩む時、わたしは子供を受け止められるだろうか、「心を晒しても大丈夫。」と娘に思ってもらえるような親であれるだろうか、と考えさせれるものがありました。
 ミナトくんが、母に本音本心を打ち明けられないのも「母を悲しませたくない、母に迷惑をかけたくない。」という愛情があるからこそ。お互いを大切に思うがゆえにすれ違ってしまうのであれば、いくら私が子供が辛い時に寄り添いたい、と思っても、うまくいかないこともこれから起こりうるのだろうな、と感じます。







以降、よりネタバレ要素あり。またテンションの落差にご注意ください。





 そして、夫には隠して、他の異性に好意を持っている一女性としての視点で見ると、ただただ「自分の感情を直視するのってつらいよなあ〜〜!!!自分自身ですらそれを認められない、素直に表現することが許されない(と自分で思っている)のはつらいよな〜〜!!!」というところに共感してします。




 そして単にこれは私のフェチですが、堪えきれない感情が吐露されるシーン、が、とにっっっっかく大好きなので、ミナトくんが「行っちゃ嫌だ…。」というところ、エリくんが「ミナト。」と呼びかけるところがもう………。…。…..。もう、もうほんっっっっっとうに大好きです!!!!万歳!!!!(テンションの落差スミマセン。数年前までは腐女子をやっていたのでつい。)


 という感じで、私の中のいろんな役割それぞれで感じるものが多い映画でした。いや〜〜〜。よかった。あともう一回観てもいいな。



2023.07.06 いて(元ていこ) 1,426  文字

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