見出し画像

5年間の単身赴任で得たもの

2019年の3月からなので、そう、私は単身赴任5年続けてきました。
大阪での仕事がひと段落ついて大阪に居ないとできない仕事がほとんどなくなる一方、東京に行く機会が頻繁になったことを理由に私の単身赴任は終了します。
今週末(2024年5月下旬)で部屋を引き払って家族のいる東京に戻り、家族一緒の暮らしが再び戻ってくることになります。

一人暮らしは独身時代に何度も、何年もしているのですが、単身赴任というのは今回が初めてだったことに今更になって気づいています。
そのくらい、単なる一人暮らしをするノリで単身赴任をしていた感覚が私にはあったのかもしれません。

しかしこの五年間は私にとってはとっても貴重で、単なる一人暮らし以上に得るものが多かったように思っています。単身赴任で何が得られたのか、それは今度の人生にどのように影響をしてくると考えられるのかを少し整理してみようと思います。

自由

最初に手に入れたという実感があったのは「一人暮らしという自由」でした。
ワンルームのマンションを借り、ずっとしたいと思っていた最低限のモノとの暮らしが始まりました。

単身赴任だから、戻ったらあるものは買わないというつもりで最初からいましたが、生活家電である冷蔵庫、洗濯機、電子レンジは揃えました。これらが本当の意味で活躍するのはコロナ禍になってから(家で食事を作るようになった)なのですがその時になって買っておいて良かったと感じました。

それ以外はテレビも家具も買いませんでした。その代わりに天井に据えつけるタイプのプロジェクターを買って(私の妻は「無駄なものを買った」とお怒りでしたが)でストリーミングを観るようにしていました。

モノはあまり買いませんでしたけれど、服は結構買いました。
コロナ禍後に在宅勤務が増えたことで、部屋着が増えたのもありますが、今までは家族の目もあって着なかったものや値段を理由に買わなかった長く着ることができる定番のワードローブを買い揃えていったように思います。

家族のことを気にしないで暮らせる、周りの目を気にしないで好きなことをできるというのは一人暮らしならでは当たり前のことなのでしょうけれど、家族を得てから20年以上経っていたので、その感覚は懐かしくもあり、すごく解放感を感じました。

若返り

赴任した大阪は、私が社会人になった時に最初に住んだ土地でもありました。
本当は千里や緑地のように緑の多いところに住みたかったのですが、赴任したタイミングが空き部屋がなかなか出てこない時期であったこともあり、結局住んだのは新大阪に近い西中島南方でした。

この土地は、私が社会人になって勤めたオフィスがあった地で、当時は独身で元気でラグビーもやっていた頃でした。
会社のラグビー部は淀川の河川敷の芝のあるところで練習をしていました。当時と今では淀川の河川敷もだいぶ様子が変わってしまいましたけれど、河川敷の草や土の匂いは変わっていないので、懐かしく思いながら一時は毎朝散歩をしていました。

20代に関西にいた時、私は神戸によく遊びに行きました。
神戸の美しい街並み、山と海が近く景色が綺麗で季節感を味わえるところ。
そして、なかなか東京では見つけられないような服や雑貨を神戸で見つけることができるし、食べ物も美味しいので大好きな街です。

このように20代の頃の思い出のある場所や、大好きだった土地を訪れてゆくうちに私の中には若返ってゆく感じがありました。
精神的にも20代の若々しい考え方、前向きな考え方になっていったと思います。

ルーティン

コロナ禍で在宅勤務が始まったのは2020年。私の単身赴任が一年たった頃でした。
人事部長という立場もあって、それまでは毎日会社に通っていたのですが、コロナ禍で出社することにリスクがある状況になってからの出社は月一回あるかないかになりました。それが、2年ほど続きました。

コロナ禍では多くの人がそうだったように、私も会社に通う時間がまるまる自宅にいる時間に変わり、有り余るほど時間ができました。
最初は、自宅で大人しくNetflixを見たりダラダラと過ごして時間を潰していましたが、以下の写真のソファに座ってすっかりくつろいで動かなくなった私は「このままではダメ人間になる」と強く感じました。

コロナ禍になった時に買った「ダメ人間になれるソファ」

そこで、自己コントロールをするために、いくつかのルーティンを作ってゆきました。
朝起きてからの一日の過ごし方を決めるだけでなく、週末のルーティン、月末・月初のルーティンを徐々にセットしてゆきました。

一日のルーティンでは、エンタメばかりにならないように、ニュースを必ずみるようにしつつ、手を動かしながら情報を得たり学んだりできるようにVoicyを聴き始めました。朝起きてから毎日決まった時間に巡回するようにするとともに、その前に瞑想もするようにもなりました。
瞑想は苦手感があったのですが、あまり考えずに続けているうちにできるようになったかなと思っています。

食習慣も変えました。
具体的には、朝と晩は基本いつも同じものを食べます。朝はコーヒーとシリアルとヨーグルトだけ。晩は豆腐とサラダと発酵食品と味噌汁だけ。お昼だけはエネルギーの補給とストレスがないように好きなものを食べるようにしました。
これにより体型と体重は維持できた…というよりもさらに引き締まったかもしれません。

食習慣を変えるだけでなく、運動も習慣になりました。
最初は河川敷の毎朝の散歩からでしたが、コロナ禍でそれをする人が増えたのとマスクをしながら散歩をするのも気持ちよくないので、部屋の中で筋トレができるようにしました。在宅勤務で動かなくなった分だけ特に下半身の強化に力を入れました。頻度は三日に一回(筋肉の超回復を助けるため)でしたが、ウェイトをつけた状態でのスロースクワットを200〜300は行い、汗びっしょりかいてカロリーも燃やしました。

週末のルーティンは、振り返りと創作
このnoteもそうですね。2020年の4月から始めましたが、何かをアウトプットしてゆこうという考えがあって始めたものです。
月末にはその月を振り返ることもルーティンになりました。

そうして4年ほどが経った今では、これらのルーティンが私自身の「マイペース」になっています。
これらのルーティンができないとストレスにはなりますが、どんなに気持ちが乱れてもこのルーティンをこなしてゆくことで自分を取り戻すことができます。

またルーティンの作り方がわかったのも収穫だったかもしれません。
私的には、あまり意味や効果を考えずに生活の中に組み込んで続けていくことがコツかなと思います。3ヶ月ぐらい続けた時にふと立ち止まって自分の中に起きている変化に目を向けると、そこで効果は実感できるものです。効果がないようであれば、そこで他の行動と入れ替えをすれば良いわけですから。

人とのつながり

一人暮らしで時間があること、コロナ禍になってから人と会えなくてもzoomなどのツールを通じてネット経由で遠くの人と簡単に繋がれるようになったこともあり、私の交友関係はとても広くなったと思います。

東京にいた時の友人とのつながりを維持するとともに、ネットのコミュニティに参加して新しい人たちと知り合って行きました。
複数の学びのコミュニティで知的刺激を受けることに喜びを感じていましたし、世の中には本当に色々な人がいるものだと知ることもできました。

zoomなどを使った画面上のコミュニケーションを円滑するにための方法も学んで実践してゆきました。
私が特に意識していたのは、相手にこちらの気持ちが伝わるようにするためにリアクションや表情をややオーバー気味に露わにすることでした。

関西は文化的に相手の懐に入る必要があり、こちらの考えが伝わるようにするために言葉でこちらの感情を伝えるコミュニケーションを意識してはいました。
それに加えて、非言語部分でもメリハリをもって表現することを意識したことで、私のコミュニケーションは相手により伝わりやすく共感しやすいものに変わっていったようです。

不思議なもので、そのようなテクニカルところから始めても自分の意識や価値観の変容は起きてくるもので、ロジックを重視していた私はそれと同じくらい気持ちの高まりや感情の動きに注目し重要視するようになりました。
そう、人はロジックでは自分から動かない…気持ちが動くから自分から行動することができるのだということが本当の意味で理解できたと思います。

これは、自分自身にも当てはまることでした。
自分自身も感情が動く体験をしたかったこと、そんな体験に没入して感動を味わいたいと心から願っていたのだと気づくことができました。

自分のスタンスを確立する

こうして振り返ってみて、一人の思い通りに、好きなようにできたことで、私は「自分を取り戻した」のではないかと思っています。
それが5年間続いたことで取り戻した自分が確立したとも。

人は生きてゆく上において常に何らかのしがらみに関わっているか囚われているかしているのかもしれません。
その中でも自分を大切にすること、それができたのは押しつぶされそうな孤独感の中でも自分を好きになれるために何ができるのかを考え続けてきたからではなかったかなと思います。

周りの目から解放され、自分がやりたいことを思い切りやってみたこと…
若くて元気があった頃の、大好きな自分に戻ってみる体験をしたこと…
ダメ人間にならないように自分をコントロールするルーティンを作ったこと…
自分の気持ちを分かりやすく伝えるように工夫したことで自分が本当に求めていることに気づいたこと…

自分が何がしたいのか、自分は何に気持ちが動くのか。
単身赴任で家族と離れているからこそ、自分に集中して考えることができた、それが五年も続けられたことで自分の立ち位置というかスタンスが完成したという実感があります。
それは、これからの人生で自分の生き方に迷いが出てこなくなるようなガッチリとしたスタンスです。

来週には家族との暮らしに戻ります。
誰かを共に暮らすことで、家族や周りの誰かに合わせることは出てくるでしょう。しかし、自分のスタンスが何であるのかを忘れることはないでしょうし、そこにいつでも戻れるのではないかと思います。
再び一人で暮らすことがなかったとしても。

そして今、私の妻に本当に感謝しています。
単身赴任中にあまり私の生活に介入をしてくることなく、自分に好きなことをさせてくれたので、今の自分ができたなと思います。

東京に戻ったらその分のお礼をしてゆかないと、ですね。

最後まで読んでくださってありがとうございました ( ´ ▽ ` )/ コメント欄への感想、リクエスト、シェアによるサポートは大歓迎です。デザインの相談を希望される場合も遠慮なくお知らせくださいね!