【詩】饒舌な沈黙
ほとんどいつも、好きな人がいる。
それが健康的なことなのか、私の不安定さそのものを表すのか、わからない。
その時々の環境で、「許せない人」も必ず一人居る。
集団生活をしていれば、そういうものなのだろうか。
私だって、なるべきく嘘はつきたくないし書きたくない。
だけど、最近は色々な人のフィルターを通して喋っている。つまり、とても疲れている。「〇〇さんにはこう言われるかな」「〇〇さんはどう思うだろうか」などと考えている。すると心に靄がかかってきて、自分の気持ちが見えづらくなる、胃腸の調子が悪くなる。詩を紙に産み落とすタイミング(スイートスポット)をみすみす逃す。。。
その時の私の暫定的な答えとして、詩が書きたい。
誰かを否定して詩を書きたくない、
私を肯定して詩を書きたい。。。
饒舌な沈黙、私はいつもうるさい。
言葉にできない時の方が、言いたいことは山ほどあった。
それをわかって欲しくて、掬い取って欲しくて、
私はいつも誰かを好きでいる。
饒舌な沈黙
「使えないな」
と聞こえてどきりとする
煙草を指先で弄ぶ
バッテリーはすぐ切れた
肝心なときに嘘をつくほど
私は老いてはいない
いつも、
我が身に欺かれるイノセンス
下校のチャイムで駆けるとき
軽率に指切りするとき
どこかで別れが始まってゆく
坂道は自転車で下る方が早いと
当たり前のことに
無気力な抵抗を試みる
本当は私たち
危機感を持った方がいいのかもと
誰かが嘯く
(どうでもいいよ)
無気力な楽観性
ただここで居合わせただけの友だち
こんなもの
なんのお守りにもならないよ
「初めてのことってそんなに大事かな」
「よく分からない」
と穴を開けたとき
あなたは社会そのものだ
きれいじゃなくても与えるわ
指を吸う仕草で
街灯が点る
手を握ろうとして
君はゆらりと身を翻した
(ユリイカ2024年6月号投稿作品)
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