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【#短編小説】泥酔夢、或いは血まみれのメアリー。

 コーラには、ウイスキーよりラムが合う。そんなことを言い切ったら、多くの人から反感を買うだろう。だから私は、これは、あくまで、私の考えであると、前置きをせねばならないのだ。

「使うラムは、出来うる限り濃いほうがよい」

 ラムの甘い香りが、鼻の奥をひっかいた。
 朝方にブラッディメアリーを二、三杯ものめば健康管理はばっちりです。

「バーでこれ以上のむなと止められたことのない者に、酒を語る資格などないのであります」

 ピニャコラーダとチチが、パイナップル畑で恋を語れば戦争は終わるし、明日になればまた、砲弾、或いは血の雨が降る。

「酒が痛み止めになるならば、どうしてあのヒトは飛び降りたのか」

 ジンライムとシャンパンを交互にのんだ次の日の朝は、スズメバチに刺されたような夢を見た。

(だがそれは朝ではなく、夕方であった)

 日が沈めば、バックスが全てを許可してくれる。
 
 でも神様

 あなたはワイン以外のことは、よくわからないのでしょう?

「どうしようもなくて、どうしようもなくて切なくて。だからお願い、せめて中毒を名乗らせて」

 一言弁明させてくださいね。
 私がやってしまったのは酒のせいだ。
 はい、ええ、そうです。
 お酒のせいなのです。

「ええ、はい、いえ、責任逃れをするつもりなんてありません。酒をのんだのは私自身ですから」
「ぎたーをかついでじょうきょうするしょうねんがぜつめつしたのはインターネットのせいである。それはこのじけんとは似て非なるげんしょうである」

 ああ、裁判官は私に「少し、服役してみるのはどうでしょう」と、呆れ顔で提案するのだろうか。

(出所した私は、酒の味を覚えているだろうか)
(大丈夫。もう、お酒の味なんてわからない)

 ちゃんと、私とともに酒の罪も裁いてくれるだろうか。
 ウイスキーコークでも、構わないから。
 
「あなたですよね、血まみれのメアリー」

 嗚呼、懲役何年だろうか。


おしまい


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