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本の感想をツイートしたら、遠くのだれかの世界がちょっと広がった話~オレンジページ広報さんに感謝を込めて~

発達障害をもつ小学生の娘へ、はじめての料理の本を

昨年のことです。当時9歳だった長女が「料理ができるようになりたいの」といい出したため、母である私はレシピ本を探していました。

我が家の長女は発達障害を持っています。様々な独特の感覚を持った子ですが、文字情報からイメージする力が弱いのも、そのなかの特性の一つです。文章の読み取りにも困難を抱えているため、学校にもお願いをして、教科書に分かち書き(※)という支援も入れてもらっています。

※分かち書き…「本日の天気は、晴れです。」→「本日の  / 天気は、 / 晴れ / です。」のように、文節に目印を入れて、わかりやすくすること。

一般的な料理のレシピ本は、細かい文字と狭い行間でびっちりと説明してあることが多く、読解に困難を抱える長女が理解するには難しすぎます。そこで私は、調理工程の写真ができるだけ多そうなものをネットで探し、購入することにしました。それが、オレンジページブックスの「ゆる自炊BOOK」との出会いと、その後に起こる驚きの展開の始まりでした。

届いた本を開いてみて、これは予想以上にうちの子にとっていい本だぞ!とテンションが上がりました。俯瞰で見渡せる食材のカット図と調理工程。完結で短い文章。それが矢印で写真に紐付けて提示してあります。うおー!!めちゃくちゃわかりやすいぞ…!!(画像は上記本より)

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実際、長女にも見せると「わかりやすい~!」とにっこり。
工程を親子で確認しながら、「材料を切るところはお母さんが担当するね」「炒めるところは長女ちゃんね」と相談しながら、調理を開始。

はじめは部分的にやっていた長女も、流れを覚えてからは、自分で調理の全行程をやるようになり、さらには献立を決め必要な材料を自分で買いに行くようにもなりました。母の私はあっという間に見てるだけの人。すごいな~。

流れるようにツイートする母、重版に一役買う

私はツイッター歴約10年で、フォロワーには同じく発達障害の子どもを育てている親御さんも多くいるため、こんなふうに育児や成長を助けてくれるおすすめアイテムに出会ったときは、普段から流れるようにツイートする癖があります。情報交換も育児にとっては重要だ!いつものようにぽちっとシェア。

このツイートがあっという間にバズりました。わーお!発達障害児育児中の親御さんだけでなく、発達障害の当事者の方、発達障害ではない方からもたくさんの「いいね」がとんできました。
でもわかる。すごくいい本ですもの、これ!

特にこのくさりかけ野菜辞典」への反応もすごかった。
わかる、わかるよ…!だれもが一度ならず何回も通る道…!しかしノウハウがあまり語られないやつ…!

そんなこんなで、オンラインの本屋から在庫が消え、入荷待ちになった様子は見ていたのですが、ついには私の感想ツイートから1週間後にオレンジページ広報さんのTwitterアカウントからこんなツイートが。

重版決定…!!わー、すごいすごい👏👏👏

もともとの本の内容が素晴らしいからこそ、私のツイートも拡散されたのは間違いないですが、自分が気に入っておすすめしたものを沢山の人が「いいね!」と言ってくれるのは、単純に嬉しいものです。推しの伝わる喜び!ヒャッハー!!

エアリプで投げたツイートに丁寧にお返事まで頂いてしまって、こちらこそありがとうございます…!!という気持ちとともに、ふふっと笑顔になったものの、ネットでバズった商品の在庫が一時的に消えることはよくある話です。そのままこの件は私の中で過去の出来事になり…。その間も、我が家の長女は少しずつ料理の腕をあげていきました。

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長女(10歳)が自分で作るようになった朝食

忘れた頃に起こった予想外の展開

それから1年ちょっとが過ぎた頃、オレンジページの広報室の方から、私のTwitterアカウントにDMが届きました。

そこに書いてあったのは、私のツイートをきっかけにして
・専門機関に本を紹介して回ったこと。
・今年1月から、発達障害デイケアセンターの調理プログラムの中で、実際に『ゆる自炊BOOK』をテキストに料理をしていること。
・デイの利用者さんも、初挑戦の料理を失敗することなくできて、料理を楽しんでいること。
などが書かれていました。

そして、「その取り組みに関してプレスリリースを出したいため、きっかけになったツイートを使わせてほしい」との私への依頼。もちろん断る理由などありません。「どうぞどうぞ!」と即OKしました。

そして公開されたプレスリリースがこちら。

【ニュース】烏山病院 発達障害デイケアの調理プログラムに出版社オレンジページが初心者向け料理本『ゆる自炊BOOK』で協力(2019/10/24)

オレンジページnetの上記リンクプレスリリース記事より引用

この〈 図解式の料理本『ゆる自炊 BOOK』は、発達障害の方におすすめ! 〉という要旨のツイートは、強い共感を伴って爆発的に拡散され(2.4 万件リツイート、6.6 万件いいね:2019 年 9 月末時点)、弊社への問い合わせも急増! 反響の大きさに驚き、「ニーズがあるのであれば、ぜひその現場に直接届けたい」という思いで、発達障害の専門家・専門機関にアプローチを重ねました。
そして、2019 年 1 月より、烏山病院発達障害デイケアで、実際に『ゆる自炊 BOOK』をテキストに、調理プログラムがスタート。弊社は、現場でのフォローと取材を進めてきました。

ひえぇ…!たった1年未満でプログラムの実現をしたの!?

(゚∀゚)<こ、こ、行動力の化身か…!!!!

これはDMで直接、広報の方から伺った話なのですが、オレンジページの担当の方は私のツイートを読んで、居ても立っても居られないような気持ちになり、まず知識がなさすぎると感じ情報を集め、さらにツテを頼ったりしながら、今回のこのプログラムの実現ができたんだとか。

(゚∀゚)<ち、ち、知識なしで走ったんか…!!!!

私自身、発達障害児の親としていろいろな支援施設とも関わりがありますし、いろいろな支援活動のお手伝いをすることもあります。縁も知識もないところから、1年かからず実現することの大変さたるや…うわー!

それに、昨今では発達障害自体の認知も世間では進んでいるとはいえ、それでも「障害」というものに対し、慎重に身構えすぎる例もたくさん見てきました。そういうものを飛び越えて、ツイートから1年未満でプログラム実施にこぎつけたオレンジページさん…!これほど企業としてフットワークの軽い例はなかなか珍しいのでは!?

(゚∀゚)<パ、パ、パワフルか…!!!!

もちろんきっと、烏山病院発達障害デイケアさんの体制もよかったからできたことなのでしょう。いやー、みなさんのパワーすんごいな!!

私のツイートをきっかけに新しい繋がりができ、新しい世界が広がり、できることが増えて喜ぶ人がいて…なんだか私もとってもいいことをさせてもらった気分……ってよく考えたら、私は本を買ってツイートしただけの人でした。えへへ…。

ただの個人の感想ツイートを、拾って次に繋げる担当さんも、それにGOを出す企業としての姿勢も、オレンジページさん、最高すぎです!

「自分でできる」素晴らしさをこれからも

「料理」と簡単に一言でまとめてしまいがちですが、実際はたくさんの覚えなくてはならない工程があります。

・献立の計画をたてること
・予算を検討すること
・材料を購入すること
・食材を管理すること
・安全に調理(洗う・切る・煮る・焼く…)すること
・後片付けをすること

これらを段取りよく整理して、順番に実行しなければならない。しかも生活としての料理は、他の日常のタスクこなしながら、多くて1日に3回分もやらなければならないという、実はかなりの重労働。

母親である私自身も、実は発達障害の当事者です。20年前に高校を卒業した直後の初めての一人暮らしでは、最初の1週間は、たらこスパゲティしか作れず、ようやくチャレンジした次のメニューの豚汁でニンジンと一緒に指先を包丁でバツンと切って、病院で縫合騒ぎになったりもしました。

公共料金の支払管理も、洗濯も掃除も整理整頓も、すべてがぐちゃぐちゃ必死だった初めての一人暮らしの中で、私が少しずつ料理の手際をあげ、生活を整える助けになってくれたのも、当時コンビニで買ったオレンジページの入門向けムック本でした。

デイケアでの調理プログラムで料理に取り組んだ発達障害の当事者の方々のエピソードだけでなく、他にも私の本の感想ツイートに対して、「自分もオレンジページの本で料理を覚えた」という方からのリプライや引用RTをいくつもいただきました。一人暮らしを始める子どもに『ゆる自炊BOOK』を手渡したという話もたくさんありました。そんな話を聞くたびに、あの頃の私と重なったのは言うまでもありません。

食べることは生きること。自分で自分の食事の用意ができるというのは、生きていくための大きな力です。

今月、長女は11歳になりました。今年の誕生日のケーキは、本人が用意してくれました。

「わたし、ひとりでつくるからね!」という宣言のもと、計画・買い物・調理・後片付け、全てをほぼ一人でやりきった長女。ケーキ自体はゆる自炊ブックにはないレシピですが、料理をするということを少しずつ身につけたからこそ、自信をもって完成させることが出来たのだと思います。それに、このケーキを囲んだお祝いの夕食は、私達家族をとても幸せな気持ちにしてくれました。

料理を通じて積み上げてきた達成感や自信、誰かを幸せにした思い出…。これらの経験や食べるためのスキルは、これから先も本人が生きていく上で、大きな支えになるのは間違いありません。

私や長女や、多くの方々にとってそうであったように、オレンジページはこれからも、だれかの「初めての料理」を応援していくのでしょう。そんな生きるためのパワーを持ったオレンジページを、私はずっと応援しています。たくさんの感謝を込めて。

この記事が受賞したコンテスト

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