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じゃあどこにIT投資を行ったらいいんですか?(後編)

「IT投資の前編・中編では、IT投資を行うには明確な達成イメージがなく、金銭的リターンも考えにくい性質の中で、どんなリターンや投資対象があるかを中心に話したね。」

「企業組織におけるIT投資は3つのグループがあって、内部統制、業務改善、ビジネスモデルの改革でしたね。中編では、内部統制について説明がありました。」

「というわけで、次は業務改善だ。業務というのは、会社の内外でみなさんがやっているお仕事の総称。特に、"日常的に行う必要があり、同じやり方で繰り返し行っている作業”を、ITを使って改善しようという試みだね。」

「改善というのは、効率を上げるという意味ですか?」

「それもあるけど、改善=効率化とは限らない。言い換えると、改善の意味する内容が、業務の効率化だけじゃない。簡単に言えば、リモートワークや在宅勤務の環境整備をすることも、業務改善だよ。」

「できることを上手くやれるようにしたり、できなかったことをできるようにする。そんな感じですね。」

「そうそう。ただ、何をどうやるにしても、これだけは絶対に徹底しないと何もならないから肝に銘じて欲しい。それは、紙で業務を回すのを廃止することだ。

「え、何かしら紙を出さないで仕事を回すのは難しいじゃないですか。ペーパーレスと言っても、会議体では紙を出したりしますし、請求書等をお客さんに郵送したりしますよね。」

「会議資料は全部GoogleドキュメントやPDFで行えばいいし、議事録などはその場で草案を作ればいいだろう。郵送するにあたって、誰か特定の部署や個人が封書詰めしてする必要はない。日本郵政もWebレターというサービスをやっていて、信書も送ることができる。」

「・・・色々やり方はあるのだから、何故その検討をしないのか、と?」

ペーパーレス化を阻害する要因に、ツールやサービスが対応していないということはあり得ない(それを言い訳には出来ない)ということを、まず認識してもらいたい。で、次いこう。ペーパーレス化とは、紙媒体を使うなと言う話ではない。私としても、じっくりと紙で見たい資料はたくさんある。紙とペンは」

「ペーパーレス化、出来てないじゃないですか」

「自分個人で紙媒体を活用する分には、全然問題ないよ。仕事の受け渡しを行うにあたって、紙媒体でないと回らないのはNGだ。ペーパーレス化というのは、仕事の受け渡しを紙ではなくデータを共有し、連携して行うこと。

「仕事の受け渡しが紙でしかできない、それがNGだと言うことですか?」

「業務効率の観点から言えば、紙で仕事を回すメリットはない。デメリットだけ。紙で仕事を回すデメリットはいくつかある。データの連携ができないので、転記や二重入力の手間がかかること。データ化していないので、入力内容のチェックも人が確認しないといけないね。」

「紙のデメリットはまだある。保管コストが高く、中身を確認して探しだすのが大変なこと。同時に複数の人が同時に編集できないこと。回覧した場合に、他の人が状況を管理できないこと。複数人で同じ情報を共有するにあたって、デメリットが多いことがわかるだろう。」

「一応聞きますけど、メリットは何かあるんですか?」

「フォーマットが自由であること、持ち運びが簡単なこと、作成コストが低いこと、入力が簡単なこと(キーボードを打鍵するより手軽)、ディスプレイに比べ、格段に目に優しいことかな。」

「仕事の受け渡しを良くすることには、つながらないですね。1画面で見きれない情報を好きな形に集約できるメリットは有ると思いますけど。」

「紙がなくなることはないし、紙媒体を使うことがメリットが高いケースも当然有る。だけど、業務品質や効率を向上させるには、今やっている業務をデータ化して連携できる素地を作らないと始まらない。その上で初めて、在宅勤務やリモートワークができるようになる。この順番を間違えないでほしいね。」

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一旦、この連載はおしまいです。引き続き、別軸で色々書いていきます。

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