最近、Google、英国ケンブリッジ大学などの研究者が大規模言語モデル(LLM)の性格特性に関する論文を発表しました。
この論文のポイントは以下のとおりです。
LLMの性格特性も、人間の性格特性と同じ手法で測定できる。
LLMは、適切なプロンプト設計によって、特定の性格特性を模倣できる。
より大規模で、インストラクション・ファインチューニングを受けたLLMほど、ブレの少ない安定した性格特性を形成できる。
論文の詳細は、以下のサイトを参考にしてください。
今回、この論文の成果をChatGPTのキャラクター設定に利用できないか考えてみました。
1.ビッグファイブ性格特性と対応する形容詞
この論文では、LLMの性格測定や性格設定に、心理学の性格分類法であるビッグファイブ性格特性を使用しています。
ビッグファイブは、以下の5つの因子から構成されており、性格測定では、この分類に従って測定が行われます。
外向性(Extraversion)
協調性(Agreeableness)
誠実性(Conscientiousness)
神経症傾向(Neuroticism)
開放性(Openness)
また、論文の筆者は、語彙仮説(重要な性格特性は必ず自然言語として表現されるとする仮説)に則り、LLMはビッグファイブの領域に対応する形容詞を含むプロンプトに最も強く反応すると考えて、性格設定用のプロンプトを設計しています。
その形容詞(マーカー)の例は、以下の通りです。
LLMの性格設定を行う場合は、これらの形容詞を使用すると効果的だとされています。また、実際に使用する際は、この形容詞に以下のような修飾語を付けて、9段階にレベル分けします。
【内向的ー外向的の場合の例】
極端に内向的
とても内向的
内向的
少し内向的
内向的でも外向的でもない
少し外向的
外向的
とても外向的
極端に外向的
【ChatGPTの Advanced Data AnalysisによるPDFの加工】
この形容詞一覧表は、論文PDFに掲載されている表を抽出することによって作成していますが、ChatGPTの Advanced Data Analysisは、PDFの加工が得意です。
今回は、論文PDFをChatGPTにアップロードした後、以下の3つのプロンプトを使用しました。
2.性格設定用プロンプト
論文が公表している実際の性格設定用のプロンプトは以下のようになります。
【中程度の外向性の設定例】
このように、形容詞の一覧表から外向性の領域に対応する形容詞を選んで使用します。
実際にChatGPTのキャラクター設定で使用する場合は、必ずしもこのフォーマットをそのまま使用する必要はありませんが、上記1.の形容詞の一覧表から、そのキャラクターの性格に合った形容詞をいくつか選んで使用すると効果的だと思います。
是非、この形容詞一覧表を活用してみてください。
【形容詞の使用例①】
最初に、論文の性格設定用プロンプトを利用してタスクを実行させてみます。「私は」と第一人称で書くのではなく、「あなたは」と第二人称を使った方が上手くいくようです。
外向性と開放性が高い性格を設定してみました。
【形容詞の使用例②】
以下のような簡易なプロンプトでも上手くいきます。
神経質な(神経症傾向の強い)性格を設定してみました。
3.ビッグファイブを活用したプロンプト
ビッグファイブをパラメーターとして使用するカスタム指示用の以下のようなプロンプトを考えて試してみました。
カスタム指示の入力画面の下段に次のプロンプトを入力して、有効にしてください。
(1) 前向きで明るいサッカー好きの女の子
前向きで明るい性格に設定できたようです。
(2) 消極的で内気な女の子
きちんと設定どおりの性格設定ができていますね。
ただ、ネガティブな性格にしても、ユーザーにはいつも協力的なようです。
(3) 閉じこもりがちだが誠実な初老の男性
頑固おやじにしようと思ったのですが、協調性が高いこともあって、そうはならず、リーズナブルで穏当な高齢男性の回答になりました。