揺れ動く猫ビギナー

吹雪の中、ノラミに引っかかれた傷は、相手が野良猫でもあるので、悪化するかもしれないと怯えていたが、とりあえずさほどひどくならず…あとは残ったけれど…よくなった。しかし、私の心についた傷は癒えず、ノラミとの距離はぐんと開いてしまったように感じていた。

しかし、ノラミの方はそんなこちらの気持ちに気付いていないようで、またやって来てニャアと鳴く。無視することは出来ず、餌はあげていたが、可愛がるような気持ちは萎えていた。唇、痛かったしね。

餌をあげ始めたのはこちらだし、取り敢えず、来なくなるまではあげよう。哀しいことだけれど、うちの周辺で野良猫が長生き出来るとは思えない。ノラミだってそのうち姿を見かけなくなる可能性の方が高い。

ノラミを家の中に入れて一緒に暮らすという方法が私には思い浮かばなかった。(一度の失敗でへこんでいたし)ネットなども見てみたが、結局、それでノラミの場合どうしたらいいの?と聞きたくなるような情報しかなかった。仕方のない話だ。ケースバイケース、その猫や状況によって対応は千差万別なのだから、万能の対処法などあるはずがない。

雪の日や雨の日はやっぱり心配で心が揺らいだが、以前のように何とかして家の中へ入れようとは思わなかった。そんな日が続いたある日、猫さんを亡くして悲しんでいたTのところに知り合いのところで生まれた猫さんを貰ってくれないかという話が舞い込んだ。その子にはきょうだい猫がいて、私にもよかったらどうかという。

まだ子猫なので犬とも共存出来るかもしれない。ノラミを家に入れるよりはずっと現実的で容易だ。可愛い写真を見て心が揺らいだが、踏み切ることは出来なかった。まだ庭にノラミが来ているのだから。
思えば、私はノラミが好きだったのだと思う。愛くるしい子猫よりも、短足で毛はぼさぼさで、コアラみたいな大きな鼻で、目つきの悪さはピカイチのノラミの方が。どう見たって可愛くはないし、チャーミングでもないのに。
いわゆる情が湧いたというやつだ。仕方ない。

(こんなに威嚇もされてたんですがね…)
(庭に放置してあった物置の下が避難場所だった。手前の皿でご飯をあげていたわけではないない…)

そうしてノラミに餌をあげ始めて二ヶ月以上が経ち、冬の気配が薄くなりかけた頃。いつものようにニャアという鳴き声を聞いて餌を用意し、庭でノラミに食べさせていると、少し離れたところから違う猫が見ているのに気がついた。
ノラミの倍はありそうな大きな灰色の猫だった。ノラミ以外の猫を初めて見たが、もしかして仲間なのだろうか。様子を窺っているようで近づいては来ない。ノラミが餌を食べ終え、ひょいひょい走って行くと、その猫も後を追いかけていった。
あれは…ノラミの家族なのか。お母さん?もしやあの猫もお腹を空かせているのか?あの猫にもご飯をあげた方がいいのか?
しかし、来る猫全てに餌を与えるような奉仕精神は私にはない。申し訳ないが、私は篤猫家ではない。

また来たらどうするか。悩んでいると、今度は別の猫がついて来た。

#猫
#ねこ #日記 #エッセイ

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