校長先生!まず廃止するのは『サッカー部』でどうでしょう!


文部科学省は、公立学校の教員の時間外勤務の上限を月45時間、年360時間とするガイドラインを策定する見込みです。

公立学校の教員は給特法により時間外手当が支給されないので、「サービス残業を国が認めるようなものではないか」という至極真っ当な指摘が既になされています。当然、ガイドラインの策定で終わってはダメで、長期的には「時間外勤務ゼロ」または「時間外勤務手当の支給」のいずれかを国として目指さなければなりません。

ただ、過労死ラインを超える時間外勤務が常態化している教員が非常に多い現状を思えば、教員の業務負担軽減は喫緊の課題です。「月45時間・年360時間」が示されるならば、まずはそこを目指さなければなりません。そして、そのために改革が避けられないのが部活動です。

部活動のうち運動部に関しては、平成30年3月にスポーツ庁からガイドライン(以下、「運動部ガイドライン」とします。)が出されており、「平日1日以上、休日1日以上の休養日を設けること」、「1日の活動時間は平日2時間程度、休日は3時間程度」などの目安が示されました。これにより活動日と活動時間は減少傾向にあると聞いています。

しかしながら、今回の「月45時間・年360時間」を踏まえると、運動部ガイドラインを遵守するのみでは足りません。運動部ガイドラインで上限の目安とされた平日4日2時間ずつ、休日1日3時間の部活動に従事するとなると4週間で44時間。これだけで月上限の45時間にほぼ達してしまいますし、年360時間は大幅にオーバーします。時間外勤務が発生する要因は部活動だけではないことも踏まえると、一人の先生が部活動すべての時間に従事するこれまでの部活動の在り方は改革を迫られることになります。

「月45時間・年360時間」の達成のためには、一つの部活動を数人の顧問で回していく形式等も模索しなければなりませんが、そのような策も含めて部活動の負担を軽減するために検討しなければならないのが部活動数の削減でしょう。

部活動の歴史を紐解くと、最初は教員と生徒による正真正銘自主的な活動であった部活動が次第に拡大し、生徒数の増加ともに学校ごとの部活動数も増えていきました。しかしながら、少子化により生徒数が減少しても、部活動数は同様には減っていません。

生徒数が減ると学級数が減り、その結果教員数も減りますので、部活動数を維持し続けることは教員負担が増加していくことを意味します。今後も少なくとも数十年は少子化が進行することが確定していますので、教員の負担軽減の機運が高まっている今のチャンスに部活動の削減に向き合わない学校は必ず破綻します。

それでも部活動数が減らないのは、保護者や地元からの反発や摩擦が予測され、つい尻込みしてしまうからでしょう。「中学校に上がったらこの部活に入ることを楽しみにしている子がいる」なんて言われると、「諦めてください」と簡単に言えない気持ちもわかります。

定年退職間近なのにわざわざ嫌われながら部活動削減を推し進める気力が沸いてこない校長先生も多くいらっしゃることでしょう。そんな校長先生に提案したいのが、まずは『サッカー部』を廃止することです。

普通の発想ならば、部員数の少ない部を廃止し、サッカーなどの人気種目の部は維持して当然でしょう。しかしそれは、学校の中しか見ていない考え方です。

もう一歩引いて、「地域の子どもたちがスポーツする場を守る」という視点に立てば、学校の外に出しても維持しやすいのはサッカーやバスケといった人気スポーツです。人気スポーツがゆえに会費制のクラブも存在していますし、人気スポーツがゆえにボランティア指導者主体のチームも多くあります。サッカー部を廃止しても、子どもたちがサッカーする場が無くなるわけではないのです。

部活動はこれまで子どもたちのスポーツに多大な貢献をしてきましたが、教員の献身と犠牲の上にこれを維持することはもはや限界です。とはいえ、一つの部活動を複数の顧問がシフトを組むように回す体制では、競技力向上に本気で取り組みたい子どもにとっては望ましい環境ではありません。

これまで部活動が担ってきた役割を、徐々に地域スポーツクラブに移行していく流れを踏まえれば、「独り立ち」できる種目から地域に移していくべきで、その文脈の中でなら「まずは『サッカー部』を廃止します」という説明も可能ではないでしょうか。

サッカー部を廃止すると言えば、多くの方が疑問に思い、多くの批判にもさらされることでしょう。しかし、教員の負担軽減が喫緊の課題であること、そして、時代の流れや地域の実情、子どもたちの利益を考えたうえでの判断であると学校外部の方々に理解してもらえれば、後々の改善や改革にも理解が得やすくなるかもしれません。今、少し苦しい思いをしておけば、後の世代がずっと楽になるのです。もうすぐ定年退職の校長先生だからこそ、後の世代のために戦っていただけたら。

ついでに注文をつけさせていただけば、部活動ではなく地域スポーツクラブで活動する生徒が内申点、ひいては受験において不利な扱いを受けることがないようにしていただきたい。

また、スポーツ振興の観点から申し上げれば、有償のスポーツクラブが学校施設を利用して子どもたちに指導ができる環境整備にもお力添えいただければと切に願います。

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