スポーツ現場から暴力を無くすには

ヒューマン・ライツ・ウォッチという国際人権団体が、日本でスポーツをする若者たちへの虐待についての報告書を発表しました。

50種の競技、計800人以上を対象に調査され、24歳以下の回答者のうち約19%(つまりほぼ5人に1人)が暴力被害を経験したというショッキングな内容も含まれます。

スポーツ現場における暴力やパワハラ的指導はこれまでも問題視されており、スポーツ現場に近い人ほど、そういった不適切な指導は決して珍しくないものだと認識しているはずです。今回の報告は、改めてそのことを数字付きで明らかにした大変価値あるものだと感じています。


暴力を振るう指導者やそれを容認する周囲の大人の根底には、「暴力を含んだ指導が人間的な成長を含めて子どものためになる」、「勝利のために暴力を含んだ指導が必要である(あるいは効率的である)」というような価値観や考え方があろうと推察されますが、どちらも明らかに誤った考えであり、やはり暴力を振るう指導者は未熟だと断ずるほかありません。

しかし、前に「なぜ日本のスポーツは問題だらけなのか」という記事で書いたように、指導者の大部分を教員含むボランティアに依存している現状で指導者の質の低さを指摘するだけでは何も変わらないでしょう。


上記の記事では、「それぞれの地域で頑張っていこう」というふわっとした結論で締めていますが、もっと具体的な方向性を考えるうえで、新潟総合学園スポーツ推進室長の高橋孝輔さん( @kosuke_39 )が常々指摘している「スポーツの教育的効果」は重要なキーになると思います。

私なりの解釈・言葉で整理すると、スポーツが持つ様々な効果・効能のなかで「人を育てる」という部分を中心に据えることで社会に価値を産み出し、スポーツの価値を認めてもらおうということだと思います。

いま、日本の教育は変革を求められており、単に知識や技術だけでなく、思考力・判断力・表現力、そして人間性を育んでいくことが課題になっていますが、スポーツはひとつの大きなアンサーになる可能性を持っています。スポーツと真正面から向き合えば、それは課題解決の連続であり、チームの一員として他者と関わり合いながら結果を出していくことが求められます。まさに、これからの教育に必要だとされている要素です。

スポーツの目的は第一に人材育成であり、しかもそれは、選手やスポーツ人材だけではなく、分野を問わずに社会の至るところで活躍するための力を養うことである。そのような前提を、指導者も、保護者も、支える人々もしっかり共有し、スポーツが社会に価値をもたらしていると認めてもらえれば、スポーツを支える力も今まで以上に大きくなり、結果として質の高い指導者が増えるでしょう。

人材育成を中心に据えれば、暴力など容認されるはずはありません。殴られることで服従を学んだ人材に価値がある時代ではありません。「暴力。ダメ。ゼッタイ。」というアプローチも必要だと思いますが、スポーツ教育的効果を念頭に置いた正攻法のアプローチを忘れてはならないと思います。

まずは、プロクラブを母体としたチームやスクール、私立学校、法人運営地域スポーツクラブといった比較的運営基盤がしっかりしているところや行政のスポーツ振興部門や公的なスポーツ団体が誇りをもって「スポーツの教育的効果」を前面に打ち出し、地域のスポーツ環境をリードしていくことを期待しています。

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