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【記事化】#4-5 コミュニティ自体でマネタイズしない時に、ビジネス上の立ち位置はどうなるの?

※この対談記事は以下の放送についてAIを使用してまとめています。


けんすう:今回はコミュニティについて5回目ですね。

前回はコミュニティのマネタイズについてお話ししましたが、基本的にはコンテンツを作ってメディアにして広告を貼るという結論で終わってしまったので今回はその続きをお話ししたいと思います。

尾原:そうですね。結局のところ、広告で儲けるということは、ユーザーにたくさんページを見ていただくことが重要になります。

つまり、滞在時間とユーザー数の掛け算が多いことが肝になってしまうので、どうやってユーザーを増やすかという話が中心になってしまいました。本来的に言えば、売り上げを作っていくという観点からの話を補足した方がいいですよね。

コミュニティの収益化戦略

けんすう:そうですね。まず直接マネタイズで言うと、残りの課金とECについてさらりと説明します。課金については分かりやすく、ユーザーさんに機能に対して課金をする形になります。

最も多く見られるのは、CookpadさんやPixivさんが行っているような検索結果の並び替えなど、便利な機能に対して課金するというものです。例えば、人気順に並び替えたいというニーズに応えたり、広告の表示を非表示にするなど便利機能による課金が主流です。

尾原:つまり、ユーザーに時間をショートカットさせてあげることに対して課金を求めるパターンですね。ユーザーに対しては、書き込み手というよりも読み手に対してツールで課金するというのがよく見られるパターンです。

けんすう:その通りです。例えば、マシュマロというQ&Aサービスがあります。これはXなどでよく見かけるサービスで、私も利用していますが、回答の文字数の上限を100文字から1万文字に引き上げるという課金機能があります。

ただし、マシュマロで回答する人は見る人に比べて少ないので、このような便利機能の提供はありますが、やはりメインの収益源は広告になるのではないかと思います。

尾原:そうですね。一般的なメディアサービスではペイウォールと呼ばれる、ここから先を読みたい人はお金を払ってくださいというパターンが多いです。

ただCGM(Consumer Generated Media)の場合、ユーザーが書いたコンテンツなのに、ここから先を読むにはお金を払ってくださいというのは少し違和感があります。そのため、コンテンツを読むこと自体に課金するのではなく、先ほど言ったようなツール的な付加価値に対して課金する方向性になります。

けんすう:おっしゃる通りです。マシュマロの場合は、答える側が回答することによって自分のファンを作りたいとか、回答することで自分たちのプロフェッショナルな有料サービスにつなげたいというインセンティブがあるため、書き手側に対するツール的な機能向上のためにプレミアム課金するという形になっています。

一方で、食べログやCookpadのような場合は、早くいいお店にたどり着きたいユーザーに対して課金するという形のショートカットや機能拡張のパターンになります。

尾原:そうですね、おっしゃる通りです。

けんすう:次にECについてですが、これはより少しマニアックな話になります。例えば、YouTuberがチャンネルで自分のファングッズを売るというのもこれに該当します。より特殊な例としては、Tumblrという投稿サービスがありましたが、そこでは自分たちのグッズを売ってマネタイズを試みていました。

最近では、RedditがNFTを販売するなどの取り組みも見られます。ただし、これらのケースは散見されますが、基本的には発信者のファンビジネス的なECを行うか、サービスのグッズを売るかという方向性になりやすく、コミュニティビジネスにおいてはやや珍しいケースだと考えています。

尾原:そうですね。一般的には、コミュニティオブインタレストという形か、ファンサービスという形で展開されます。つまり、その人が好きだからその人の関連グッズを買いたいとか、その人と一緒に旅行ツアーに行きたいといった、いわゆるファンビジネスとしてのパターンがあります。

あるいは、コミュニティオブインタレストとして、その発信者の興味範囲に近いユーザーが集まっているため、例えば赤ちゃんがいる人のコミュニティでは赤ちゃんグッズを売るといった形で、興味関心をすり合わせるというアプローチもあります。

しかし、買いたいという気持ちに寄り添う際には、現在ではプロが取りまとめたキュレーションメディアの方が購買を促進する力が強い傾向にあります。そのため、コミュニティオブインタレストから関連グッズを購入するという市場は、期待されるほどには成長していないのが現状です。

この点については、TikTokショップがアメリカで展開を始めていますが、これが日本でどのように展開されるかは注目に値します。

けんすう:そうですね。アフィリエイトのような形で、インフルエンサーが商品を紹介し、間接的に売り上げにつなげるようなケースは今後増えていく可能性がありますね。

古い例で言えば、Booklogという自分のおすすめの本をまとめるようなサービスがありますが、これも広義の意味ではEC的な要素があると考えられます。ただし、やはりこういった形態は人に依存する傾向が強いですね。

尾原:そうですね。中国などではライブコマースの中で商品がよく売れていたり、日本でいうところのインフルエンサーのInstagramから商品が売れるといった現象が見られます。一見するとコミュニティの中で商品が売買されているように見えますが、実際にはリーチインフルエンサーとキーオピニオンリーダー(KOL)を区別して考える必要があります。

KOLはそのジャンルに関して深い知識を持ち、的確なコメントや批評ができる人を指します。これがコミュニティなのか、それともプロの卵を多く集めてきて、プロになった人たちが効果的に商品を売れるようになっているのかという点は、議論の分かれるところです。つまり、これがプロフェッショナルジェネレイテッドコンテンツなのか、コンシューマージェネレイテッドコンテンツなのかという問題です。

単にフォロワー数が多いだけのリーチインフルエンサーと、しっかりとした意見を持っているからこそ、その人の意見で購入したいと思わせるKOLは区別して考える必要があります。

けんすう:おっしゃる通りですね。その境界線もかなり曖昧になってきていますね。

尾原:そうなんです。結果的に熱心なファンを持つ人は愛情があるためKOLになりやすい傾向があります。例えば、ゆうこすさんや最近では美容関連で本を出版して好調なMEGUMIさんのような方々がいます。

けんすう:そうですね。美容関係で非常に売れ行きが好調ですね。

尾原:このような方々は、もともと自分自身のケアに気を使っているからこそ美しさを保てていて、その結果としてリーチも増え同時にキーオピニオンリーダーにもなるという形になっています。つまり、必ずしもリーチインフルエンサーとキーオピニオンリーダーが二者択一ではなく、両方の要素を持つ中間的な存在も多く存在します。

ただし、一般のユーザーが投稿したコンテンツの中で商品が売れていくというものとは区別して考える必要があるでしょう。

けんすう:おっしゃる通りです。これまで、いわゆるコミュニティのビジネス化、マネタイズ化について話してきましたが、当然ながらマネタイズだけがビジネスではありません。尾原さんの知っている事例や理論で、コミュニティをこのようにビジネスに活用するとよいというものはありますか?

尾原:そうですね。先ほど述べたように、ビジネス化=マネタイズではありません。マネタイズとは、コミュニティそのもので売り上げを上げることによって持続可能な存在になることを指します。一方、ビジネス化するということは、コミュニティそのものが収益化しなくても、他のビジネスの収益に貢献することで成立するということです。

また、コミュニティそのものがビジネスとして成立する際に、コミュニティ単体で売り上げを上げなくても、別の形で貢献するというケースもあります。これは「フロントエンド商品」と「バックエンド商品」という概念で説明できます。日本語では「入口商品」と「本命商品」とも呼ばれます。

例えば、最近の事例で分かりやすいのが「チョコザップ」というジムです。月額2980円程度で、誰でも気軽に通えるジムとして展開していますが、これ単体でもある程度の収益を上げています。しかし、実際に最も収益を上げている部分は別にあります。

けんすう:え、何でしょうか?全く見当がつきません。

尾原:実は、チョコザップに通っている人の中で、かなりの確率でライザップに入会する人がいるんです。

けんすう:なるほど、確かにそうかもしれませんね。

尾原:現在は7人に1人程度の割合でライザップに入会しているそうです。これまでライザップは大々的にテレビCMを展開したり、多額の広告費を使っていました。しかし、チョコザップを作ったことで、チョコザップ自体は赤字にならない程度の収益を上げつつ、ライザップの広告費を大幅に削減することができました。結果として、全体の収益に大きく貢献しているのです。

インターネットのビジネスにおいて、多くの人が抱える悩みは集客です。現在のEコマース業界では、売上に占める広告費の比率は15%から25%程度です。さらに、将来的な成長を見込んで先行投資をする場合、広告宣伝費が売上の3割から4割に達することもあります。

けんすう:なるほど、そうなんですね。

尾原:一方で、急成長したサービスの多くは、GoogleやFacebookの検索アルゴリズムをうまく活用したり、TikTokのようなソーシャルメディアをハックすることで集客を伸ばしてきました。しかし、こういった方法は、プラットフォーム側がアルゴリズムを変更した瞬間に効果がなくなってしまう危険性があります。

けんすう:確かにそうですね。

尾原:そのため、実は集客エンジンとしてのコミュニティの価値が再評価されています。3年前に、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)というベンチャーキャピタルが発表したブログで「コミュニティ・テイクス・オール(Community takes all)」という概念が注目されました。

これは、以前からあった「勝者総取り(Winner takes all)」の考え方のパロディです。ネットワーク効果を活用できれば、一度優位に立ったサービスが市場を独占できるという考え方でした。同様に、コミュニティを持ったサービスが、その垂直市場(特定の分野やニッチ市場)において優位性を獲得できるという考え方です。

けんすう:面白いですね。

尾原:実際、先ほど広告収入の話をしましたが、けんすうさんも意図的に広告を貼らないページをコミュニティの中に作ったりしませんでしたか?

けんすう:はい、そうでした。特にヘビーユーザーの方は広告を見るために来ているわけではないので、広告が非常に邪魔になってしまいます。そのため、ページ単位というよりは、指名検索でトップページに来た人には広告を減らすなどの対応をしていました。

グロースループの重要性

尾原:そうなんですよね。結局、ビジネスの本質は、コミュニティに長く滞在してもらうことや、他のユーザーを連れてきてもらうことにあります。特にソーシャルメディア時代では、他のユーザーを紹介してくれることが重要です。

そのため、他のユーザーを連れてきてくださったり、たくさんのページを読んでコメントをしてくださるような、書き手の人が喜ぶような存在にはあえて広告を上の方に出さず本当に関連しそうな広告だけを下に表示するといった工夫をします。

一方で、検索エンジンから来たユーザーは、特定の人の記事を読みに来ているわけではなく、例えば頭痛の対処法を知りたくて頭痛に関するブログに来たり、中古車の情報を知りたくて来たりしています。

つまり、情報を探しに来ている人なのでその情報に関連した広告が表示されれば、その人にとっては邪魔な広告ではなく、むしろ「広告で探していたものが見つかった、ありがとう」と思ってもらえる可能性があります。そのため、そういったユーザーには広告を多めに表示するなどの工夫をします。

このように、集客を安定させるコミュニティの力と、収益を上げることは、二者択一ではなく、両立させながら設計していくことが重要です。

けんすう:例えば、noteというサービスでは有料の記事を共有すると無料で読めるようになる機能がありますが、これも分かりやすい例ですよね。

尾原:そうですね。note側から見ると一人一人のお客様が支払っている有料記事の解約率は、通常5%から高くても20%程度です。つまり、新規のお客様が1人入ると、平均して5ヶ月分のユーザーの売り上げに相当します。そのため、1人のユーザーに1記事を無料で提供したとしても、それによって新たに1人が課金してくれれば、5ヶ月分の売り上げが入ることになります。

さらに、その人を無料にしたことによる売り上げの損失は全体の20%に過ぎません。また、デジタルコンテンツの場合5人に無料で読ませても追加のコストはかかりません。

このような仕組みを「グロースループ」と呼びます。つまり、成長が自然と循環する仕掛けを作ることが、ネットビジネスにおいて非常に重要です。特にここ3年ほど、大量の資金を調達して大規模な広告投資を行い、市場シェアを獲得してネットワーク効果を得れば勝てるという考え方のバブルが崩壊しました。

そのため、ある程度の投資は必要ですが持続的に顧客が増加していく仕組みを作ることが重要になってきています。

そして、グロースループを作る最も効果的な方法の一つがコミュニティです。コミュニティがあると、その中で自分らしさを見つけたり、友達に共有したくなるような記事やネタを見つけたりします。場合によっては、TikTokのように友達と一緒に何かをすることでより楽しくなるような仕掛けを作ることもできます。

けんすう:なるほど、面白いですね。

フックループという仕掛け

尾原:さらに詳しく説明すると、「グロースループ」と「フックループ」という2つの概念があります。フックループは新しく来たユーザーがサービスにハマっていく仕掛けです。

例えば、Cookpadの場合を考えてみましょう。最初のユーザーは料理のレシピを見て作り、それが上手くいくと嬉しくなります。そして、そのレシピの投稿者に「いいね」をつけたりコメントしたりし始めます。これが最初の「トリガー」となります。

このトリガーを経験すると、今度は自分も料理を作って投稿してみたくなります。周りからコメントがもらえると楽しくなるからです。ここで重要なのが、Cookpadの「つくれぽ」という機能です。

けんすう:なるほど。レシピに対して自分が作ったよという投稿ができる機能ですね。

尾原:そうです。新しいレシピを一から考えるのは難しくても、「私も作ってみました」とか「私はこんな盛り付けにしてみました」、「私はこんなアレンジを加えてみました」といった形で参加できます。これが「インベストメント」(投資)の段階です。

そうすると、「つくれぽ」を投稿することで「そうか、こんな盛り付けをすると子供が喜びますね」とか「こういう味付けにしたら仕事から帰ってきた私のご褒美になりますね」といった形で、周りからコメントが返ってきます。これが「リワード」(報酬)となります。

この報酬によって、さらに「つくれぽ」を書こうとか他の人にコメントを書こうという気持ちになり、サービスにハマっていくループが形成されます。これが「アクション」から始まり「トリガー」を経て「インベストメント」し「リワード」が得られるから再び「アクション」したくなるという「フックループ」です。

さらに面白いのは、こうして投稿しているうちに、友達が来たときにその料理を振る舞ったりすることがあります。そうすると「これ何?」と聞かれたときに「これはCookpadで知って、私なりにアレンジしてみたら、みんなからこんな風に褒められて、すごく楽しいの」といった話をすることになります。

けんすう:確かに面白いですね。

尾原:そうすると、その会話が自然と他の人を招待することになり、新規ユーザーを呼び込むことになります。そして、その新しいユーザーもまた「アクション」して「トリガー」され「インベストメント」して「リワード」を得るというフックループに入っていきます。

けんすう:そうすると、その人はその人でまた今度はマフィンではなくて新しいパンケーキで他の人を誘うかもしれませんね。

尾原:その通りです。このようなグロース&フックループを作ることで先ほど言ったように売上の25%程度を有料集客広告などに費やす必要がなくなってきます。

けんすう:ましてや、GoogleやFacebookなど他社のアルゴリズムに振り回されることなく、自分たちで何があっても持続的に顧客が集まってくるような事業構造を作れるということですね。

尾原:その通りです。非常にシンプルに言えば、広告予算やマーケティング予算を削減できるということになります。

さらに重要なポイントは、広告などを使うということは他のプラットフォームに依存することを意味します。そうすると、そのプラットフォームの方針次第で、これまで成功していた戦略が突然通用しなくなる可能性があります。

もう一つ大事なことは、広告など他のプラットフォームに依存するということは、ライバルがより多くの資金を投入すれば顧客を奪われる可能性があるということです。

けんすう:そうですね。この点は重要ですね。

尾原:そうなんです。ここ3年ほどの間に起こった、いわゆるSaaSバブルの冷却は、まさにこの点に起因しています。「相手が資金を投入するなら、私たちはもっと資金を調達してさらに投資すればいい」という考え方による消耗戦になってしまったのです。

けんすう:確かにそうですね。3倍の資金調達をすれば3倍の広告を出せるため、それだけでもかなりの差を縮められてしまいます。これは先発企業でも起こり得る問題ですね。

尾原:その通りです。そうなると、どんどん激しい競争になり、結局誰も利益を上げられない状況に陥ります。最終的に儲かるのは、GAFAMと呼ばれる巨大テクノロジー企業だけということになりかねません。

そこで、このグロースループという概念が非常に重要になってきます。グロースループを作れるものがコミュニティであり、コミュニティを最初に独自に構築したサービスがインターネットの世界では勝てるのではないかという考え方が生まれています。これが「Winner takes all(勝者総取り)」に対する「Community takes all(コミュニティ総取り)」という考え方です。

けんすう:ただ、少し疑問があります。コミュニティに来ている人はコミュニティを楽しみに来ているので、他のビジネスに移行してくれるかというと、それほど簡単ではないという感覚があります。この点についてはどうお考えですか?

尾原:そうですね。その点については、先ほど触れたフロントエンドとバックエンドという概念で考えると理解しやすくなります。例えば、TikTokのようなサービスでは、これらが完全に融合しています。TikTokは音楽を楽しんだり動画を見たりする受動的な立場もありますが、同時に「自分も歌ってみた」や「踊ってみた」動画を作ってみようという能動的な参加も促しています。

さらに、一人で踊るよりも友達とコラボレーションした方が楽しいという要素もあります。このように、コミュニティの性質自体がサービスの本質的な楽しさと直結していると、両者は不可分になりグロース&フックループが非常に効果的に回ります。

けんすう:なるほど。つまり入り口の商品として成立しているコミュニティでないと、ちゃんとした集客装置としては機能しないということですね。

尾原:そうですね。それが従来のパターンでした。しかし、最近では様々なアプローチが見られます。例えば、近年急成長したサービスの一つであるFortniteというゲームを考えてみましょう。

従来のアサシンクリードのような一人用ゲームは、一人でプレイして楽しむものでした。一方、Fortniteは最初からみんなで一緒にプレイすることを前提としており、さらに現実の友達と一緒にプレイするとより楽しくなるという特徴があります。これにより、自然とグロース&フックループが回るようになっています。

しかし、フロントエンドとバックエンドの話に戻ると、例えばPinduoduoのようなサービスもあります。Pinduoduoは単に商品を購入するだけでなく、10人の友達を集めると割引が受けられたり、一定人数が集まると特典が得られるといったソーシャルバイイング機能を備えています。これにより、他のECサイトで購入するよりもPinduoduoで購入した方が安くなるだけでなく、友達を誘って一緒に買い物をすること自体がエンターテインメントになっています。

けんすう:確かにそうですね。

尾原:一人で楽しむよりもみんなで楽しんだ方が良いという価値観や、詳細なデータを見たいというニーズを課金ポイントにしつつ、コミュニティがそれを活性化させるというサブシステム的な役割を果たすケースもあります。

さらに発展すると、Robinhoodのようなサービスも登場します。Robinhoodは投資サービスで、主に株式や金融商品の売買手数料で収益を上げているビジネスモデルです。

けんすう:結局、株式投資では素早さが勝負ですよね。

尾原:その通りです。そうなると、コミュニティで盛り上がっている銘柄をいち早く見つけ、そのコミュニティ内でみんなで情報を共有し「これはいける」と判断した瞬間に購入できる方が有利です。

このように、コミュニティそのものでは直接的なマネタイズを行わなくても、コミュニティからメインのビジネスへのつながりをスムーズにする、つまりフリクション(摩擦)を減らすことで、全体としての収益化を図るアプローチも登場しています。

けんすう:なるほど。

尾原:この辺りが、先ほど述べたフロントエンドとバックエンドをどのように分けていくかという議論の応用になります。多くの企業がこのアプローチを採用しているわけです。

例えば、先ほど触れたチョコザップのようなサービスは、気軽に利用できるジムとして入り口を提供しています。そこに通っているうちに、周りの人たちも利用していることに気づき、みんなで本気で取り組みたくなってきます。

そうすると、「じゃあ、本格的にRIZAPに一緒に行きませんか?どちらが先に目標を達成できるか競争しましょう」といった流れが自然に生まれ、コンバージョン率が高くなるのです。

けんすう:なるほど、面白いですね。

コミュニティの4つの機能

尾原:このように、コミュニティ単体で収益を上げなくても、ソーシャルには4つの重要な機能があります。

1つ目は「グロースループ」と呼ばれる、先ほど説明した成長の仕掛けです。サービスにハマることで他の人を呼びたくなるという循環です。

2つ目は「リテンション」です。コミュニティがあるからこそ、サービスを継続して利用したくなります。周りの友達がいるから参加しよう、周りから褒められるから続けようという動機付けが生まれます。

3つ目は「ディフェンシビリティ」です。先ほど説明したように、集客を他のプラットフォームに依存しなくて済むようになるため、ビジネスの防御力が高まります。

4つ目は「エンゲージメント」です。コミュニティに参加することに誇りを感じたり、そこに貢献したくなったりと強い絆を感じるようになります。

これらのグロースループ、リテンション、ディフェンシビリティ、エンゲージメントという4つの観点でコミュニティを活用する方法があります。TikTokのようにメインのサービスと完全に融合させるアプローチもあれば、RobinhoodやVenmo、Commonstock等のように、サブシステムとしてメインビジネスにつなげていくアプローチもあります。これらをどのように組み合わせていくかを考えることが重要です。

けんすう:なるほど。非常によく整理されましたね。コミュニティ自体でマネタイズする前回までの話とともに、今回で言うとグロースループとフックループを回すための潤滑油のような概念ですね。

尾原:そうですね。最も重要なのは、多くの企業が集客に悩んでいる中で、集客を外部プラットフォームに依存すると振り回されるリスクがあるため、独立性と持続性を担保するために自社でコミュニティを持つことです。そうすることで、コミュニティのメンバーが新しい人を連れてきてくれるようになります。これがアメリカのコンテキストでは最も重視されている点です。

けんすう:ありがとうございます。

尾原:さらに、ハイパー起業ラジオ的な観点から新規事業を行っている方へ、もう一つ重要な点があります。多くの人がマーケティングというとプロモーションマーケティングばかりに注目しがちですが、プロダクトマーケティングとしてのコミュニティの重要性も忘れてはいけません。

結局のところ、ユーザーがなぜあなたの製品やサービスを選んでくれるのかというベネフィット(利点)は、提供者が想定している以上のものをユーザーが見出してくれることがあります。これは以前のペルソナ編でも議論したポイントです。

このため、製品を持っている会社がコミュニティを持つことで、ユーザーが何に価値を感じているのかをいち早く発見できるのです。これはプロモーションのためのマーケティングではなく、プロダクトのためのマーケティングとして非常に重要です。

場合によっては、オープンソース開発のような形で、ユーザーと一緒に製品のバリエーションを増やしたり、改良を加えたりすることもできます。ビジネス化を考える際に、ついつい集客マーケティングばかりに目が行きがちですが、それと同時にプロダクトマーケティングとしてのコミュニティの役割も忘れてはいけません。これがビジネス全体を考える上で重要なポイントです。

けんすう:そうですね。例えば、STUDIOというランディングページなどを簡単にノーコードで作れるサービスがありますが、そのSTUDIOの中にコミュニティサービスがあります。そこでは、ユーザー同士が「こういう場合どうしたらいいですか」といった質問をし合ったり、「こう使えばいいですよ」といったアドバイスを共有したりしています。

そこで出てきた要望やアイデアが、実際にサービスに反映されることもあります。これにより、ユーザーのエンゲージメントが上がるだけでなく、プロダクトの質も向上するという、非常に質の高いコミュニティが形成されています。このようなパターンも見られますね。

尾原:その通りです。有名な例としては、スターバックスもこのようなアプローチを採用しています。このような考え方は、コミュニティそのものをSaaS的に提供している企業も増えてきています。

何より重要なのは、最初から製品を持っている会社の方が、明確なファンがすでに存在するという点です。

けんすう:ただ、コミュニティを作る際には「コンテンツが先か、ユーザーが先か」という議論がよくありますが、一方で強力なファンがいて、その人たちがコミュニティを牽引してくれているというケースもあります。

これは「ハードサイド」と呼ばれる要素の一つですね。そこを起点にコミュニティサービスを考えていくというのは、コミュニティをメインビジネスにするのではなく、ビジネスのサブシステムとして考える際に非常に重要な視点だと思います。

尾原:なるほど、勉強になりました。ありがとうございます。

けんすう:このように、コミュニティのビジネス化についてはこのような形でまとめられると思います。次回は、これからのコミュニティの未来について話そうと思います。

尾原:広い視野で考えられそうで、とても楽しみですね。

けんすう:はい。2000年代や2010年代のコミュニティの形態を振り返りつつ、2020年代以降どのように変化していくのかという話をしたいと思います。

尾原:これはまたけんすうさん独自の視点が展開されそうですね。

けんすう:そうですね。詳しく解説していきたいと思います。

尾原:はい、次回も楽しみにしています。ありがとうございました。


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