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従業員へのメンタルヘルスサポートを推進するPwC・スターバックスの事例

コロナウイルスの影響で企業が対応に迫られる中、アメリカにていち早く従業員のメンタルヘルス対策を強化したPwC・スターバックスの取り組みを、簡易的ながら"参考になる資料集"となるようまとめました。

はじめに(直近のメンタルヘルス領域の変化)

世界であまりにも大きい変化が起きている中、私の属する会社(cotree)が事業展開する「カウンセリング」ひいては「メンタルヘルス」の領域で劇的な変革が起きています。

対面で行われていたカウンセリングは多くの国や地域でオンラインへの移行がすすみ、カウンセリングの受診数が増加

コロナウイルスの煽りを受けて、これまで抵抗感が強かったオンラインカウンセリングの導入が一気にすすんでいます

この変化と並行し、業界だけでなく企業のメンタルヘルスに対する姿勢への影響がみられました。

直近アメリカでは、スターバックス・PwCのメンタルヘルスの福利厚生の強化がニュースになっています。

スターバックスは、4月6日以降米国で働く従業員とその家族に、心理士またはコーチとのセッション(年間20セッション)を無料提供すると発表しました。(引用元:Forbes
PwCは最近、従業員がストレスの原因と考えられることをプロのコーチに相談できるwell-being コーチングセッションを導入しました。(引用元:BUSINESS INSIDER


・この動きの背景にはどういった事実と文化、企業努力があるのか?

・企業がメンタルヘルスのサポートを導入する際、参考となる情報がないか?

これらを集めるため、2社(①PwC、②スターバックス)の事例をまとめました。

1-1.PwCの事例:"Well-being"プロジェクト

いくつかの記事によると、PwCでは従業員に"メンタルヘルスコーチング"を提供しています。従業員はメンタルヘルスの専門家にメールで、24時間365日いつでもコミュニケーションをとることができるようです。

その背景には「PwC’s Well-Being Learning Project」というWell-being、すなわち「心身ともにより良い状態であること」*とパフォーマンスの関係を、大学と連携しながら追究するプロジェクトの存在がありました。

企業のWell-beingに対する実践が個人のコミットメントと組み合わされると、個人だけでなく、チームや顧客との関係にもプラスの影響を与えることになる。これは「Well-Being Learning Project」から得られた重要な知見である。(※調査は6ヶ月間にわたって実施され、1,400人以上のパートナーとスタッフから収集したデータをもとに、個人、チーム、組織レベルでの行動を調査)

*以下の記述をもとに、文中の"Well-being"を定義

「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます(日本WHO協会:訳)(引用元:日本の人事部

1-2.PwCの事例:"Well-being"の議論におけるメンタルヘルスの重要性

上記のプロジェクトを追っていると、チームと個人の力を最大化したいと願う企業のガイドとなるようなデータや取り組みが多くみられます

2020年1月に公開されたPwCのChief People Officer・Michael Fenlon氏へのインタビュー記事では、Well-beingの議論におけるメンタルヘルスの重要性が語られています。

PwC Health Research Instituteの調査によると、75%の雇用主がメンタルヘルスプログラムを提供している一方で、81%の従業員が過去5年間にメンタルヘルス問題の治療を求めたことがないという結果が出ています。ストレスやうつ病の症状が出たり、不安を感じているにも関わらずです。
この事実は語られていませんが、私たちがどうベストな状態で働ける環境を作るか、ポテンシャルを引き出すことができるか、そして変化や混乱に満ちた世界の中でどうレジリエンスを高めるかといった議論とともに存在しています。これらは単なるバズワードではなく、誰もが経験しているはずです。
PwCは「健康的な習慣への取り組み」は努力する価値があると結論づけています。PwCが大学と共同で行った、従業員と組織の幸福度を高める要因に関する調査では、「健康的な習慣を身につけている従業員は、顧客との関係性の改善、team dynamicsの改善、燃え尽き症候群のレベルの低下、会社に留まる意思の強さを報告している」としています。

1-3.PwCの事例:実用的な指針となる調査結果

プロジェクトの研究から得たファインディングスは、社員のWell-beingを追究する企業にとって指針となりうる重要なポイントとなりそうです。

●個性を尊重する
社員が自分自身で、自分にとって最も意味のある習慣を選び、継続できる仕組みをつくること。柔軟性は社員の参加を促し、Well-beingの指標を高めるために不可欠です。
●包括的なチームは成功に不可欠
リーダーが、社員が仕事に参画する機会と環境を作ること。そしてチームが互いに支え合い、健康的な行動を共に行うこと。それによりWell-beingの習慣が定着し、チームはよりその効果を認識します。
●Well-beingの重要性を示す
Well-beingプログラムを成功させるためには、ビジネスの優先事項として最優先で取り組む必要があります。そのためには、職場環境やチームの力学を変え、Well-beingが可能な環境を作る必要があります。
●エンゲージメントを高める
行動を促進するサービス・テクノロジーを導入する。企業のウェルビーイングを目に見える形でサポートし、活力を与える役割を果たします。不可欠なものではありませんが、説明責任、相互作用、さらにはチームの有効性に対する認識の向上を促進します。

2-1.スターバックスの事例:メンタルヘルスをサポートする取り組み

2019年9月時点で、スターバックスはメンタルヘルス、Well-beingへの取り組みの強化を発表しています。具体的な取り組みは以下。

・米国の全従業員に短期のカウンセリングを提供するプログラムを強化
・スターバックスのストアマネージャーは、精神疾患のある人のサポート方法を人に教えるトレーニングを開始
・レディーガガの非営利組織「Born This Way Foundation」、退役軍人のメンタルヘルスに関する取り組みを支援する非営利団体「Team Red White&Blue」などの組織と提携

2-2.スターバックスの事例:取り組みから見つかった課題

様々な取り組みにより得られた課題を、CEO・Kevin Johnson氏は以下のように語っています

慎重な分析と継続的な従業員とのコミュニケーションの結果、多くの従業員が自分のメンタルヘルスのことを話すことを恐れていることを発見しました。例えば、スターバックスが提供する従業員支援プログラムでは、短期のカウンセリングなどを提供していますが、十分に活用されていません
私たちは、これは社会的な問題であると考えている。この課題を乗り越えるために、課題が存在することを認め、必要としている人にサービスを提供するための新たな対応をすすめます。

2-3.スターバックスの事例:従業員サポートの拡張とリーダーの育成

過去の取り組みを受け、2020年に入り3つの新たな取り組みが発表されました。ここで触れたいのは、従業員のサポートだけでなく、リーダーへのトレーニングも同時に行っていることです。

①Headspaceというマインドフルネスアプリを従業員(アメリカ・カナダ)に無料提供

Headspaceは、ストレス、睡眠、集中力、不安をサポートする数百のテーマ別セッションとエクササイズを提供しているとのこと。(瞑想・マインドフルネスはアメリカでは普及が広がっており、市場が成長しているようです。)

②従業員にメンタルヘルスセラピストまたはコーチによる年間20回のセッションを無料提供

メンタルヘルスケアの福利厚生を全面的に刷新することを発表。4月6日より、米国内のすべての従業員と家族に対し、Lyraというサービスを通じてメンタルヘルスセラピストまたはコーチによる年間20回のセッションを提供。

③店長を対象としたトレーニングプログラム開始を発表

米国とカナダの全店長を対象に、精神疾患の兆候への対応方法を教える専用のトレーニング開始を発表。

"メンタルヘルス、薬物利用の問題、または危機を経験している可能性のある人の話を聞き、必要なリソースを提供するために必要な指導とスキルを提供すること"を目指しています。

さいごに

今回事例をまとめた背景には、PwCとスターバックスの取り組みに見られた動きが、私の属するcotreeが目指すものと限りなく近しいと感じたことにあります。

・個人が「よりよく生きる」ために自分に必要な習慣を選ぶ。

・Well-beingはリーダーシップのスキルである。リーダーがトレーニングを受け実践することで、他の人々を導くことができるようになる。

・これらが実現すると、組織は大きな成果とインパクトを得る。

PwCのWell-beingの取り組みには大きな成果とインパクトがあると考えています。Well-beingに投資することで、社員がより幸せになり、回復力が増し、燃え尽き症候群になりにくくなり、仕事への意欲が高まり、情熱を持って仕事に取り組めるようになると確信しています。(引用元
Well-beingはリーダーシップのスキルだと信じています。幸福度が高まると、より刺激的で革新的で、弾力性があり、思いやりがあり、職場や家庭、世界中の人々とつながり、他の人々を導くことができるようになります。(引用元

この2社は、早くからメンタルヘルスの問題に取り組んでおり、昨今の状況により対応が始まったのではありませんでした。ただ、「もし企業がメンタルヘルス支援を通じて従業員をサポートする重要性を認識してこなかったとしても、今は疑問の余地はないはずだ」語られているとおり、多くの人が今、その重要性を感じているのではないでしょうか。

今回まとめた事実が、「すべての従業員が"よりよく生きること"を追求できる環境を作りたい」と考える方の実現をサポートする資料となったら、嬉しく思います。

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最後になりますが、cotree(コトリー)では個人向けオンラインカウンセリングコーチングサービス、グループ会社のCoachEd(コーチェット)では「チームを育てるリーダー」になるためのコーチングスキル習得プログラムを提供しています。

また、オンラインカウンセリングは法人向け福利厚生プランもございます。サービスが必要な時に、思い出していただけると嬉しいです。




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