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【投資】ストラテジックキャピタル vs. ダイドーリミテッド - 日本経済新聞広告から

本日(2024年6月4日)の日本経済新聞朝刊の紙面。本記事以上のハイライトはアクティビストファンド、ストラテジックキャピタルの全面広告。近々株主総会を迎える7社に対して株主提案を実施、その内容をまとめたものです。特にダイドーリミテッド(3205)に関しては紙面の4割近くを割く力の入れよう。当方それぞれの会社の株主ではありませんが、著名アクティビストがどういう観点で株主提案をしているのか、その考えを知ることは自身の株式運用にも参考になります。今回は特に、ダイドーリミテッドに関する株主提案についてのポイントをまとめてみようと思います。

日本経済新聞2024年6月4日付朝刊広告より

ストラテジックキャピタル

ストラテジックキャピタルは、先日このnoteでも紹介した『「モノ言う株主」の株式市場原論』の著者で、あの村上ファンド出身の丸木強氏が率いる国内系アクティビストファンドです。

著書の内容と同じようなことが現実に起こっている、というなんという臨場感(笑)

ダイドーリミテッド(3205)

そしてそのストラテジックキャピタルから株主提案を受けているダイドーリミテッド(3205)は主力ブランド「ニューヨーカー」を展開するアパレルの中堅企業です。大手飲料メーカーのダイドーグループホールディングス(2590)とは違います。

四季報によれば"不動産賃貸が安定収益源"とあり、もうそこだけで???、また"不動産強化"というコメントもあり、それだけで「本業の苦戦を不動産で補っているのか?」という想像はできますね。

株主提案の内容

そんなダイドーリミテッドに対するストラテジックキャピタルの株主提案の内容を簡単に確認します:

経営陣の刷新

赤字が続き、さまざまな問題を抱えている同社に経営陣の刷新を求めています。そして今回の株主提案で現経営陣に変わって6名の取締役の選任を提案しています。

長期の赤字継続による株価の下落

同社の業績は直近2年こそ不動産売却益のおかげで最終損益はプラスでしたが、営業損益は過去10年連続でマイナス。その結果株価も低迷。保有不動産の時価を加味した修正PBRは1倍を大きく下回っています。

長期にわたる衣料事業の不振、M&Aの失敗

過去10年の衣料事業の累積損失は200億円超、そして近年2度のM&Aはいずれも5年以内に減損損失を計上。

従業員のリストラと経営陣による1円ストックオプションの利益享受

こうした中、従業員をリストラ、平均年間給与も引き下げてきた一方で、同社の経営陣及び監査役には、行使価格1円、株価が下落するほど得られる株数が多くなる仕組みのストックオプションを付与。ストラテジックキャピタルの度重なる改善要求にもかかわらず、いまだ同仕組みを継続中。

資本コスト未満の収益しか得られない不動産賃貸業の継続

旧本社を売却した資金であらたに不動産を購入。同社の資本効率改善に寄与していないと。これは丸木氏の著書でも議論されてましたね。

取締役候補者について

ダイドーリミテッドが提案している代表取締役候補者はすでにフルタイムを含む多数の役職を兼務しており、また現在その代表取締役候補者が代表取締役兼CEOとなっている企業との利益相反を懸念しています。

他、この代表取締役候補者の選定プロセスや実現性に乏しい中期経営計画等、反対理由満載です。

他の株式への示唆

上記の内容、率直な感想として「このダイドーリミテッド、経営陣は"上場している(公開している)"企業としての意識ゼロ、完全に会社を私物化している」感満載ですね。自分は同社を保有していないのでただ見物しているだけですが、こういう企業がアクティビストからの圧力によって変わっていけるのかどうか注目です。

こうした中で、ここから今後自分の株式投資について示唆される、参考にあるポイントをあげると:

  • 経営陣の能力(取締役、社外取締役含む):彼らが"本業"を遂行できるに足るスキル、コミットメントがあるか?

  • 各事業部門の収益性:それぞれが株主資本コストを上回っているか?"安定収益源(不動産賃貸とか)"という誘惑にひかれて、収益性の低いビジネスに資本を無駄に投入していないか?

  • 経営陣の報酬スキームは適切か?従業員にも前向きに働いてもらえる報酬体系になっているか?

そうした点は保有企業や今後保有を検討していく企業に対して、しっかり確認していくべきかなと思う。

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