【解説①】改正「給特法」によって働き方改革は進むのか?~序文~
①まずはじめに
◯何回かに分けて書いていく本連載記事は、タイトルにあるように、第一には「給特法の改正」に伴って来年度以降の学校現場に起こることを情報共有するのが目的です。
◯その一方で、教育現場のブラックな労働環境の最大の要因ともいえる「部活動顧問」の事実上の強要から身を守る(=毅然とした態度で断る)ための最強の理論武装をもお示ししています。さらに、部活動顧問業務に限らずあらゆる「搾取的労働」に対して援用可能な理論となっています。
◯長い記事になり恐縮ですが、それだけ強い思いを込めて書いたつもりです。ここに記載した理論を武装してもらえれば、現在、望まない部活動顧問を始めとした過重な業務負担に苦しむ教員を助けられるものになると自負しています。もちろんあなた自身が使う勇気を持つ必要はありますが、その勇気を出せるようにするために書かせていただきました。勇気を出して行動することができれば、きっと、あなたの身に絡みついている「搾取の呪縛」を解き放つことができる、そう信じています。
◯現状の学校現場の労働環境について少しでも疑問を抱いている方は、ぜひ最後までお目通しください。また、今は現状にさほど不満を抱いていない方の中にも、いつかきっとそのおかしさ(搾取される側にいたという事実)に気づく方がいることでしょう。そのときには、そんな予言をしていた記事があったなと思い出していただき、ここに戻ってきてください。きっとあなたが感じた「おかしさの正体」を突き止めることができるはずです。
*それでは、前置きはこのくらいにして、本題に入っていきます。
②2021年4月、「給特法」改正法の全面施行へ
◯2019年10月18日に「給特法」(教職員給与特別措置法)の改正案が閣議決定され、12月4日に改正法が成立しました。来年度(2021年4月1日)から全面的に施行されます。
◯教員として働く者においては、この「給特法」の改正を軽く考えてはいけません。岐阜県の高校教員の西村祐二さん(斉藤ひでみの名義で活動)らは、すでに早い段階からこの法改正に潜在する危険性を指摘し、反対署名運動を展開してきました。
◯いったい西村祐二さんらはなぜ先頭に立って警鐘を鳴らし続けるのでしょうか。
◯それは、教員の「働き方改革」を推進することが目的のはずの改正「給特法」が、むしろ教員の長時間労働をさらに悪化させる改悪法になるのではないか、という疑念が拭えないからです。
◯焦点となっているのは、改正「給特法」によって導入されることになる「変形時間労働制」です。
◯私も「変形時間労働制」の導入には危機感を表明します。その最大の理由は、「部活動顧問が業務として合法化する」ことです。その他にもたくさんの理由がありますが、部活動顧問が「合法化」されることで強制可能となるのは看過できない事態です。
◯この「変形時間労働制」の導入によって引き起こされうる諸悪の事態がいかなるもので、そしてそれらにどう対処すればよいのかということが本連載記事のテーマであるわけですが、その話に入る前に少しだけ講釈を垂れることをご寛容ください(度々、必要な横道に逸れますが我慢してお付き合いください)。
◯先日(8月14日)Twitter上で #先生死ぬかも がトレンド入りして話題になったことをご存知の方もいると思います。
◯きっかけは、8月14日に内田良さん(名古屋大学准教授)や西村祐二さん(斉藤ひでみさん)さんらが共同で主催した、ZoomとYouTubeを使ったオンラインイベント(「コロナ禍の子どもの教育と教員の働き方改革を問う」)でした。
◯このイベントにゲスト出演したたかまつななさんが、 #先生死ぬかも のハッシュタグをつけたツイートを拡散することで、教員の長時間労働是正に向けた世論をつくることを発案しました。この呼びかけに共鳴したイベント参加者たちが中心となって始まった #先生死ぬかも のツイートは、瞬く間に輪になっていき、ついにはトレンド入りという成果に結実したのです。
◯TwitterなどのSNSで広く教員アカウントとつながりをもっている方なら、このあたりの経緯や事情はリアルタイムでキャッチしていたでしょうし、中には自らも #先生死ぬかも のツイート運動に参加した方も多いでしょう。
◯しかし、おそらく大多数の教員は、公務員という身分上、Twitter等を用いてそうした社会的ネットワークを築いたり、自ら情報を発信したりすることに躊躇する気持ちがあって一線を引いています。学校の教員の間には、未だに「教員がTwitterをやっているのはまずいだろう」という空気があります。そのため、このオンラインイベント開催の情報はもちろん、「給特法」それ自体についての情報さえ持ち合わせていないというのが現状だと思います(実際、私の周辺はそうです)。
◯特に搾取の対象となりやすい若手教員に、正しい知識を得る機会がないことが問題です。ひいては教員志望の学生諸君にこそ、そうした知識を予め装備しておいてもらいたい。残念ながら、現場のベテラン教員の意識改革には限界があります。若手教員の意識が学校の働き方改革につながる。改革の担い手はいつの時代も若い世代です。
◯善意から申し上げるのですが、私はまず一人でも多くの教員がTwitterを始めてみることを勧めたい。そして、学校現場が置かれている不条理な労働環境に対する危機意識を持つ教員アカウントとつながることで、自らを守るための有益な情報を得てもらいたいと願っています。
◯多忙なのは私自身もよく分かっています。しかし、多忙にのまれることによって情報から遮断されてしまうと、自らを情報弱者(情弱)に追いやってしまうことになります。この高度情報化社会において「情弱」であることは、「お金や時間を搾取される側」に回ることを意味するのです。
◯あらゆるジャンルの最新情報にキャッチアップするのは不可能です。しかし、最低限、自分の働く業界のトレンドや新着情報くらい、常に守備範囲に収めておかなければなりません。
◯教育現場で働く者としては、せめて文部科学省の動きや教育関連の法改正などには常にアンテナを張っておき、敏感に反応する必要があります。それが労働者としての自分を守ることにつながります。自らの頭で考えて判断し、搾取される側に回らないように努力しなければなりません。
◯そして、前述のオンラインイベントの中でも、改正「給特法」によって導入される「変形時間労働制」の危険性が言及されていましたが、第一線で発信者となってくれる方々がいるからこそ情報が入ってくるのです。だから、受信者としての立場に留まらず、私のように後追いでも構いませんので、自身も発信者となっていくべきです。発信していくからこそ新しい情報や発想を得ることができます。
③まずは「給特法」について知ることから
◯随分冗長な書き出しになってしまいましたが、ここからは、
①そもそも給特法とは「どのような法律」なのか。
②「なぜ」給特法は改正されたのか。
③給特法の「何が」改正されたのか。
④給特法の改正は「どのような影響」をもたらすのか。
という視点で解説し、
最後にもっとも大切な
⑤この情報を労働者として「どう生かせば」いいのか。
について考えていきたい思います。段階を踏んでいくため長くなるので、ゆっくりお時間のあるときにお付き合いください。
◯まずは給特法についてしっかりと押さえていきましょう。
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