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手切りの人参の愛

汗だくになりながら、人参を6本千切りしているとスタッフから
「人参の千切りって飽きませんか?」
と聞かれた。

飽きない、と言えば嘘になる。
正直千切りなんて全く得意ではないし、好きじゃない。むしろキライ。
でも、僕は人参は絶対手切りすると決めている。

去年料理人たちと人参でもめた事がある。
スライサーで人参を千切りしようとしていたのを咎めたところ、
料理人たちが噛み付いて来たような形だった気がする。

スライサーの人参には愛が無いように感じる。
料理は愛だ。
美味しくなるかならないかは、その一皿に愛が足りているかいないかが最終決定すると思う。

スライサーの人参には食感がない。
多少不揃いでもいいから、手切りの人参の食感が好きだ。
ちなみに僕は包丁の扱いがまだまだ下手くそで、いい味が出すぎる乱雑な千切りになる。

外に食事しに行った時、スライサーの人参の千切りが出てくると、他がどれだけ良くてもかなり萎えてしまう。
ちょうど先月とある人気カフェに行った時にそれが出て来て、ひどくがっかりしてしまった。

去年僕があれだけ人参は手切りと言ったのにも関わらず、数ヶ月前社員がスライサーで人参を切っていたのを知った時、もう彼とは働きたくないと思ってしまった。
彼はカレーもものすごくラクをして作ろうとしてまるで離乳食かのような美味しくないカレーを作っていた。
美味しいカレーは玉ねぎを炒めるだけで数時間かかる。

料理には、ラクした方がいいポイントと、絶対に手を抜いてはいけないポイントがあると思う。
きっと料理に限らず他の仕事でもそれらはある。

今後どれだけ忙しくなろうと、人参だけは手切りし続けたい。
そして、人参の手切りをし続けてくれるような人と働きたい。
そんなことだけを考え続けた一日だった。

本日もお越しいただきありがとうございます。
また明日お待ちしております。

2020.07.04 Issey Shibata

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