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人事×経営 〜人事戦略を語る note.1

企業の成長を支えるのは人材です。人事トップに人事戦略、その背景にあるビジネス戦略を伺いました。どのような組織・企業文化をつくっていくのか、どのように人材を育成するのか、どのような人材を採用するのか。インタビューを通して探ります。

コカ・コーラ社の戦略「Growth Behavior」と「イノベーション」

日本コカ・コーラ株式会社
人事本部 副社長 エリコ・ターリー 氏

上智大学を経てアメリカの大学を卒業。アメリカにて大手メーカーの人事、スタートアップのHRマネジャー、ソフトウェアメーカーのHRBPリーダーなどを経験した後、日本へ。アマゾンジャパンのHRディレクター、フェイスブックのAPAC・HRリーダーを経て、2017年より日本コカ・コーラにて現職。
日本コカ・コーラは、世界200以上の国でビジネスを展開しているザ コカ・コーラ カンパニーの日本法人として1957年に設立されました。原液の供給と製品の企画開発やマーケティング活動を担っています。(ボトラー社とは、製品の製造・販売などを担います。)

Q:日本コカ・コーラに入社するまでのご経歴を教えてください。

日本で生まれ育ち、大学の途中までは日本で過ごしました。その後、アメリカの大学に移り、それ以降しばらくアメリカにいました。日本に帰ってきたのは12年ほど前のことです。

アメリカで最初に就職したのは大手メーカーで、人事担当役員の秘書となりました。私は本当に幸運な人間で、このときたまたまHRという仕事に巡り合ったんですね。秘書の立場で、私は福利厚生や報酬体系の変革プロジェクトを見ることができました。その後、私は希望してHRスペシャリストとなり、C&Bを担当しました。

次にインターネット系スタートアップに転職して、いきなりHRマネジャーとなりました。部下はたった一人でしたが、それでもマネジャーとしてうまく仕事ができるか不安でした。最初は大変でした。ただ、当時はシリコンバレーが本当にエキサイティングな時期で、日々革命的な変化がいたるところで起こっていました。多くの聡明な方々とワクワクしながら働くことができ、本当に楽しかったですね。ここでは最後HR Directorまでさせて頂きました。

この会社がヤフーに買収されたことを機に、私は6カ月のサバティカル(長期休暇)を取り、その後で次の会社へ移りました。そこもシリコンバレーにあったんですが、その頃には街が発展しすぎて、渋滞が酷くなるなど、日に日に住環境が悪くなっていたんです。それで郊外にあった電話の自動音声応答サービスのソフトウェアを開発する会社に入社しました。ここでは、約20カ国をカバーするHRBPのリーダーを務めました。さまざまな国を訪ねて、各国HRメンバーと話し合ったことで気づいたのは、文化が違っても、人には共通する部分が多いということ。結局、お互いに尊敬の念を持っていれば、みんな気持ちよく働けるし、みんな気持ちよく働くことを望んでいる。その意味で、私たちは誰しもそれほど変わらないんです。世界を飛び回って、それを知ることができたのは大きな収穫でした。

12年ほど前、私は家庭の事情で日本へ帰ってきました。幸運なことにアマゾンジャパンからオファーをいただき、HRディレクターとなりました。当時はまだ300名程度の会社でしたが、7年半後に私が離れるときには3000名規模の会社に成長していましたね。その間、私たち人事チームが最も力を入れたのは、もちろん採用です。採用ニーズがどんどん多様になり、求めるスキルのレベルが急速に高まっていったため、採用は簡単なことではありませんでしたが、そのつど課題を乗り越えていきました。また新鮮だったのは、はじめてグローバル本社ではなく、日本法人という一支社に所属したことです。本社の声を受け止め、日本の声を本社に届ける役割となったことで、これまでとは違う見方ができるようになりました。日本で働きはじめて、私は人間的に成長したと思います。

8年近く働き、更なる成長機会を求めた私は、フェイスブックに移りました。フェイスブックでは、シンガポールと日本を行き来しながら、APACのHRリーダーを務めました。フェイスブックもまたすばらしい会社で、イノベーティブでクリエーティブ、かつオープンな社風。本当に優秀な方ばかりでしたね。APAC内のさまざまな国に赴き、考え方に直接触れることができたのも大きな財産です。

日本コカ・コーラにやってきたのは、「HRのトップとして、組織にイノベーションをもたらしてほしい」と誘って頂いたからです。2017年春にジェームス・クインシーがCEOに着任し、イノベーションを加速させる方針を打ち出していました。私は新たな一員として、組織とビジネスに革新をもたらすチャレンジをすることに魅力を感じました。また、「コカ・コーラ ファミリー」という言葉が使われるほど、人を大切にする温かい会社である点にも惹かれました。それで2017年、私はここにやってきました。

日本市場向けに開発されたユニークな製品群やCoke ON(自販機アプリ)などがグローバルから注目されている

Q:日本コカ・コーラではどのような変革を進めているのですか?

グローバル本社および各国から、日本はビッグマーケットであり、日本コカ・コーラと日本のボトラー社は、あらゆる面でイノベーションを起こす組織だと広く認知されています。特に2017年のCEO交代以降、日本コカ・コーラは世界から注目される存在となっているのです。

第一に、「ジョージア®」、「い・ろ・は・す®」、「綾鷹®」など、日本市場向けに開発されたブランドがいくつもあります。外資系企業としては珍しいことでしょうが、コカ・コーラ社では、各国の消費者ニーズにきめ細やかに対応した製品を開発することができるんです。日本コカ・コーラは、原液の供給と製品の企画開発やマーケティング活動を担っています。中でも、製品の味覚設計を担当するR&Dチームは極めて優秀で、その点で非常にすばらしい会社として、世界中のコカ・コーラに知られています。もちろん、現在も新製品開発に力を入れており、優れたオリジナル製品開発と製品ポートフォリオの充実に余念がありません。

第二に、私たちは自動販売機のイノベーションにも精力的です。日本は、自動販売機が至るところにあるという点で、世界的にユニークな市場です。その特性を最大限に活かすため、自動販売機のエネルギー使用量の削減などにも積極的に取り組んでいます。こうした点においては、各ボトラー社の協力が欠かせません。日本には、世界第3位の規模を誇るコカ·コーラ ボトラーズジャパンがあります。彼らをはじめとするボトラー5社と強力なタッグを組み、機敏かつ大胆なビジネスの改善を進めています。HR部門も彼らとの連携を密にしており、定期的にHRミーティングを開いたり、共同で海外のキャリアフォーラムに出展したりしています。

第三に、マーケティング面でもイノベーションを起こしています。特に先進的なのが、自販機アプリ「Coke ON」です。2016年のサービス開始以来、自動販売機と連携したロイヤリティプログラムを実装することでダウンロード数を劇的に増やし、現在は1500万以上のダウンロードを誇る一大アプリとなっています。先日は、東京2020オリンピック 聖火ランナーになるチャンスを提供する「キミ色で、走れ。」キャンペーンも話題となりました。これも日本発の画期的な施策として、本社および世界から注目を集めています。

第四に、サステナビリティの面においても、昨今世界中で問題となっているプラスチックごみ問題について、先駆的な取り組みを進めています。日本では「設計」「回収」「パートナー」の3本の柱から成る「容器の2030年ビジョン」を「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)」とのグローバル目標に基づき定めました。この日本の目標は、グローバル目標よりもさらに高い水準を目指す、日本のコカ・コーラシステム独自のものです。具体的には、①2022年までにリサイクルPET樹脂の使用率50%以上を達成、2030年にはその比率を90%にまで高めること、②2025年までに、日本国内で販売するすべての製品の容器をリサイクル可能な素材へと変更すること、③2030年までに全てのPETボトルを100%サスティナブル素材に切り替え、新たな化石燃料の使用ゼロの実現を目指すことなどの目標を、設定し、実現に向けて動いています。(参照:World Without Waste「廃棄物ゼロ社会」に向けて取組み

Q:HR部門ではどのような取り組みを行っていますか?

いまコカ・コーラは、グローバルでGrowth Behaviorという行動規範を設けています。「Curious」「Empowered」「Version 1.0, 2.0, 3.0」「Inclusive」の4つです。この4つのGrowth Behaviorを組織に浸透させるのが、HRの大きな仕事の1つです。

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