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[#45] イギリスの家庭料理というもの

皆さんは、イギリス料理と言ったら何を思い浮かべるでしょうか。
フィッシュ&チップス、ポテト、赤い色のドロドロした豆、何食べてるかわからないけど美味しくなさそう…。渡英前の私がイギリス料理に持っているイメージはこんな感じでした。

ホームステイ先のホストマザーが作る家庭料理を半年食べさせてもらった結果、事前のイメージは半分当たっていて、半分間違っていました。
例えば、フィッシュ&チップスはディナーには出てこなかった、とか、何食べてるかわからないけど美味しいものある、とか。

私のところのマザー(以降おばあ)は料理が好きで、出かける用事がある日や疲れている日以外は、基本的に全て手作りのものを振る舞ってくれたので、ディナーだけで100種類以上のイギリス家庭料理を食べました。

その経験から、私が感じたイギリス料理あるあるというものを紹介したいと思います。

■味付け薄くしがち

まずはベタなものから。
イギリス料理は味がないとよく言われますが、確かに薄味です。
イギリスの食卓には塩とコショウが置いてあって、各自自分で好きに味付けしなさいと言うスタイルが普通なので、なにか足りないと思ったら遠慮なく塩コショウを振りましょう。
醤油や味噌に親しんだアジア人の舌の感覚からすると塩味が足りなくて物足りないと思います。あと出汁をとる文化もなさそうなのでコクも足りないことが多いです。

■なんでもオーブンで焼きがち

イギリスのメイン調理器はオーブンです。野菜や肉をぶつ切りにカットして耐熱容器にぶち込んでオーブンで焼いて出来上がり、のパターンが多いです。その調理工程の中に重ねるような味付けはほぼありません。切った、焼けた、以上。なので薄味なのだと考えられます。
年配の世代は電子レンジは身体に悪いと思っている人が多いらしく、冷凍食品を温めるときもオーブンをよく使います。
うちのキッチンにはオーブンの他にガス台もありましたが、おばあが何かを炒める姿は見たことがあっても、煮込む姿と揚げる姿は見たことありませんでした。

■ワンプレートで済ませがち

メインと付け合わせが大きなお皿に一緒にドーンと盛られて提供されます。時々パン類が別皿で置かれることがあっても、スープ類が出てきたことはただの一度もありませんでした。ナイフとフォークで食べるからワンプレートの方が食べやすくていいんですけどね。

■めちゃくちゃポテト食べがち

渡英前、イギリスの主食はポテトだと聞いてはいましたが、まさか日本におけるお米のポジションだとは思っていませんでした。
ですのでイギリスの家庭料理はポテトの食べ方のバリエーションがすごいありますし、めちゃくちゃ頻繁に出てきます。
大きなポテトを皮付きのまま火を通したジャケットポテト(上には赤い豆=ベイクドビーンズとチーズ)。コロコロした小さなポテトを皮付きのまま火を通したローストポテト。マッシュポテト。ポテトサラダ。ハッシュドポテト。シューストリングフライドポテト、ウェッジカットフライドポテト、くるくるしているカーリーフライドポテトなど…、考えつくありとあらゆる姿のポテト料理を食べたと思います。

同居人だった韓国人留学生は、実はポテトがあまり好きではなく、食卓にポテトが出るたびにゲンナリした顔をしていました。その顔があからさますぎて面白かったので、ポテトの日はそれが楽しみでした。

なお、イギリスではポテトフライのことをチップスと言い、ポテトチップスのことはクリスプスといいます。

■パスタぐずぐずに茹でがち

これも有名な話ですが、イギリスは「これ何分茹でたの!?」ってレベルの柔らかさのパスタが出てきます。

おばあのパスタを食べた同居人だったイタリア人留学生は「こんなのパスタじゃないよ!僕が本当のパスタを食べさせてあげます!」ってイタリア版の山岡士郎と化し、本当に翌日キッチンに立ってパスタを作ってくれました。
おばあ、私、同居人の台湾人が期待して食べましたが、私にはイタリア人の彼のパスタは麺がぐずぐずじゃないってだけで、そこまでの味の違いはわかりませんでした。

■グレイビーソースかけがち

グレイビーソースとは肉を調理した際に出る肉汁を調理した液状のソースで、イギリスの名物料理ローストビーフやサンデーローストなど、結構なんにでもかかっています。
イギリス料理は出汁をあまり取らないと前述しましたが、グレイビーソースだけは旨味が凝縮されているので美味しかったです。
なお、おばあに言わせるとグレイビーは"ソース"ではなく、"グレイビーというもの"なんだそうですが、私には理屈がよくわかりませんでした。


全般的に貶しているようなニュアンスのことばっかり書いてしまいましたが、私はおばあの作るイギリスの家庭料理が好きでした。飽きさせないようにメニューに変化を出してくれるし、たまに出てくるおばあが解釈したアジア風の料理なんかも斬新な味付けだったので、食事の時間も新たな発見が多くあって楽しかったです。

ではまた。

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