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9.ウサギの走り方 臀筋 第三転子 盲腸

以下の動画、ジャックラビットです。たぶんアンテロープジャックラビットだと思います。
アメリカにすむノウサギで、見ての通り非常に長い手足をもちます。

後肢の振れ幅が意外と短いです。チーターのように大きく後肢を後方に蹴り出して歩幅が広くなるストライド走法ではなく、蹴り出しから比較的早めに脚を引き、前方に持っていくピッチ走法といえます。
この蹴り出しはウマに似ていて、臀筋の瞬発力を感じさせるものです。

チーター型だけではなかった

実は最近までウサギがこんなにピッチ走法をしているとは知りませんでした。チーターのように「背骨を丸めて伸ばす」を忙しくやっていると思っていたので、そうではないと知り驚きました。

いくつかの動画を確認してみるとストライド走法もあるので、状況によって変えている可能性があります。あるいは種によって得意な走法に違いがあるものと思います。

ピッチ走法で逃げる

上記はピッチ走法です。オオカミに追われ持久戦が展開されております。
二頭のオオカミがほどほどのスピードで頭脳戦を仕掛けているのに対して、ウサギはほとんど全力疾走で逃げております。全力でこの長さを走れることに驚かされます。

ストライド走法で逃げる

上記動画はダイナミックなストライド走法です。こちらもほぼ全力疾走を継続している点に驚かされます。
0:53〜 2:04〜 2:50〜 背骨の波がチーターなみ
1:42〜 後肢の引き込みが凄まじいです。後ろから襲いかからんとする鷹の羽音が聞こえたのでしょうか。捕まるまいとして、後肢を目一杯引き込んだように見えます。

この動画では、ウサギはただやみくもに目一杯跳んでいるばかりではなく、地を這うように低く跳んだり、後肢を引き込んで前後長を短くしたり、さまざまな走り方をしているように見えます。

ウマとの比較

ピッチ走法においては、顕著な臀筋利用がうかがえます。臀筋に荷重を寄せて、その反力を瞬発力に使うという走法です。比較的前よりに後肢を着地させると臀筋に荷重が寄ります。

この臀筋荷重走法は奇蹄目に顕著に見られ、その現れとして、大腿骨に第三転子が発達します。人間でいう臀筋粗面が隆起し、「足場としての頑丈さ」と「テコ比の増大」が起こります。

ウサギの第三転子

ウサギとネコの大腿骨

出典元:Comparative morphological interpretations on the bones of the pelvic limb of New Zealand rabbit (Oryctolagus cuniculus) and domestic cat (Felis domestica) - PMC

Aはウサギの左大腿骨。右上のLetのところが第三転子です。
Bはネコの左大腿骨ですが、第三転子がありません。
Hが骨頭です。
(第三転子はThird trochanterなので、省略するとTht。小転子はLesser trochanterなので省略するとLet。つまりA図の表記は逆です)


奇蹄目の第三転子はよく知られているのですが、ウサギの第三転子はあまり知られておりません。わたしも今回調べてみて初めて知り、驚きました。

アンテロープウサギのような脚の長いウサギと短いウサギ、ノウサギとアナウサギ、天敵、利用する走法種類の偏りなど、種による違いなどが分かると面白いですが、ちょっと資料を集めるのが難しいです。

ウサギとネコの小転子比較

引き続き先の大腿骨写真をご参照下さい。
ウサギは小転子(AのTht、CのLet)の発達も凄いです。対してネコの小転子(DのLet)が意外と未発達なのも驚きです。

ウサギの小転子の二山形状と縦に長いのが特徴的です。これは全哺乳類の中でも珍しい形状であり長さです。二つの高まり、これが後肢の利用に関係ありそうですね。
おそらく上の高まりは、後肢を目一杯後ろに伸ばしたところからの腸腰筋による大腿骨引き戻し。下の高まりは臀筋瞬発のあとの大腿骨引き上げだと思います。このように解釈すると、ウサギの走法様式の広さがみえてきます。

比べると、ネコの小転子は後肢を目一杯引いたところだけで使われているという特徴になります。

ウサギの盲腸

奇蹄目(ウマ、サイ、バク)といえば長い盲腸が有名ですが、ウサギの盲腸の長さもそこそこ知られております。
ウサギの盲腸が有名なのは、その食糞行動によるものが大きいと思います。これは盲腸で発酵させた大便の栄養を吸収するための行動です。盲腸以降の結腸だけでは吸収が大きく間に合わないため、最初の大便を肛門から舐めとり、盲腸の前にある小腸であらためて吸収し、次の大便はふつうに排泄するという手順になっております。

マウスやラットも同じことをするようなのですが、ウサギほど最初の大便に顕著な粘便という特徴が出ないようです。そのせいであまり話題にならないのかもしれません。
最初の便がウサギほど粘性がないということは、ウサギほど発酵を進められていないのかもしれません。

ウサギの盲腸と寛骨の関係


ウサギの盲腸

出典元:Pin by Lauri Shearl on Of Orclings and Peppermint.... | Pet bunny rabbits, Pet rabbit, Bunny care

真ん中の図、caecumが盲腸です。
ウマの盲腸ほど寛骨との関係が顕著ではないのですが、ある程度影響されていると思います。つまり、ウサギの歩行走行様式が、盲腸を撹拌し、発酵を促していると思われます。

人間においても右下腹部の動きは盲腸に関わりが深いものですが、これは手技療法家にしか分からないのが残念です。

あわせてこちらもどうぞ。


参考

Left Femur Mammals - Download Free 3D model by Terrie (@terrielsimmons)
いろいろな動物の大腿骨です。拡大縮小、角度変えできます。


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