『トラウマと記憶 脳・身体に刻まれた過去からの回復』を読んで ざっくり感想

ツイートだとリプライツリーが長くなりそうだったのでここに格納。

どんな本?

トラウマ治療の手法であるソマティック・エクスペリエンシング(SE™)(以下「SE」)の創始者のベストセラーの訳本。

概要

初学者でも記憶の構造から説明があり入りやすい。記憶の中でもトラウマとなる記憶とはどんなものか丁寧に解説される。
曝露療法(エクスポージャー)やその他治療法に対してSEは何ができるのか、どういったメリットがあるかが語られている。
実践向けの本では無いため、モデルケースの紹介はあるものの、SEの実際のワーク内容については、恐らく多岐にわたりすぎてここではあまり説明されていない。これについては、公式の講座や認定があるようなので、気になる治療者はそちらを参照のこと。

面白かった、気になった点

生後2〜4ヶ月の子どもを対象としたケースが語られている。第一人者である彼の経験、観察眼があってこそ1回のセッション内でこれだけの効果が出ているのだろうが、エリクソン的な奇跡に近いエピソードといっても過言ではない。
この歳の子どもの様子がおかしい時、普通の内科の治療を嫌がった場合にセラピストの門を叩くというのは、アメリカでは珍しくないのだろう。日本では無理やり行かせて医療トラウマに発展したり、逆に病院そのものに抵抗を持つ親も多い。この構造的な分断が埋められる日は来るのだろうか。


視点を誘導して、注意を向けさせる作業があったが、注釈に「EMDRとは異なる」と明記されていた。EMDRについてまだ詳しくないので、違いがよく分かっていない。
「トラウマを想起する時一定の方向に目線を向けることがある」というのは何かで見たが、それも何なのかよく分かっておらず。今は断片的な知識を少しずつ繋ぎ合わせる作業。

個人的解釈・思考

過去を思い出した時に、ただ思い出すのではなく、常に今できる対処法を考える、コラム法ライクな思考実験でも記憶のアップデートは進むのかなと考えていたが、その認識が強化されるような内容が書いてあった。
空想や夢の中で思い出されるものはやはり未消化なのだとも再認識。そして思い出した時点でアップデートが入るから、このタイミングでパッチを当ててあげないといけない。これを踏まえると、自動思考の中でただただ反芻するのは本当に良くない、減らしたいと一層強く感じた。

SEが合わない人も一定数いるらしく、直接想起するような手法は時代と共に遠ざけられていく傾向があるのだろうか。自分はまだセラピー自体受けたことがないが、セラピストの手腕にかなり左右されそうな印象を持っている。体系的な手法を学んでも、そこから個人に対するアプローチまでの空白は自力で埋めなければならない、と解釈している。

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