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気づけば父に似ている

 父は、モノマネ番組が大好きだった。
 だった、というのは、数年前に亡くなっているから。
 モノマネ番組が放映される日だけは、晩酌セットを盤石に整えて、テレビの前を陣取っていた。チャンネル権を独占しているのに、特に楽しそうにしている訳でもなく、ただ酒を飲み、つまみを食べ、テレビを観ていた風景が今でも目に浮かぶ。
 父は、何というか、見栄っ張りだ。私が幼い頃は、長距離トラックのドライバーをしており、一〜二週間に一度酔っ払って帰ってきては、夜中に起こされ、お土産のお寿司を食べさせられていた。
 久々に帰り娘にお寿司を食べさせたい(鮮度は保証しない)父と、夜中に起きてお寿司を食べる、スペシャルイベントにわくわくする娘の板挟みになった母からの「…玉子にしておいたら?」という母の重みのある一言は、大人になった今でこそ真意がわかるというもの。
 幼い頃の記憶には、どちゃくそにタバコを吸っていた父だが、私が中学生になった頃を境に、家でタバコを吸う姿を見なくなったので、禁煙を志したのだと勝手に思っていた。
 (酒については、小学校〜中学校の部活の会で瓶ビールに口をつけてビールを一気に飲んでいた。今思えば私の酒飲みルーツである。)
 タバコを吸い続けていたのを知ったのは、亡くなった後。諸々の手続きで父の職場に訪問した時のこと。父のデスクには、反社?キタノ映画?と訝しむばかりの立派な灰皿に、LARKのストック。一緒に会社に訪問した母と、「らしいね」と笑った。

 今日、私は「モノマネやってるじゃん!」と、何を思うわけでもなく、酒を飲んでいる。普段の父の姿を思い出し、親子って似るんだなとびっくりしながら、ベビースターラーメンをつまみに飲んでいる。ちなみに、このつまみも、父のお気に入りである。父も、このちまちま食べられる感じが好きだったのかな。
 他に、酒の場で、教えられるでもなく似ていることは、枝豆の殻をお皿に並べること。割物は濃ければ濃いほど美味しいこと。割り箸の紙で箸置きを折って作ること。モノマネは酒を飲んで見ると、倍面白いこと。


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