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【創作小説】僕とおばあの49日間納骨チャレンジ 3【短編】

第一話
前回の話

祖母の家に着き、門の鍵を開ける。
庭の駐車スペースに叔父の車を誘導する。

「俺ばあちゃんちに来るの中1の時以来だわ」
敏行が感慨深げに言う。
僕だって、祖母が病気にならなければこんなに通うこともなかっただろうと思う。

「晴明おじさんは何年ぶり?」
「親父が死んだあとの49日以来だから5年ぶりかな。おふくろの見舞いには行ってたんだけどね。」
「なかなか用事がないと来ないっすよね」
でも、会いに来ておけばよかったかな。
敏行の背中はそう言いたげに見えた。

「お邪魔しまっす」
敏行は努めて明るく言った。
玄関をくぐると祖母の家の匂いがした。
祖母のつかいで来るたびに風通しはしていたがやはり独特の匂いは消えない。
「久しぶりすぎてどこに何があるかわからないな」
叔父が言う。
祖母の家は父と叔父が出て行った後に祖父母が買い替えた家なので叔父にとっても、勝手のわかる家ではない。

「とりあえず布団だけ持ってきますよ。おばあちゃんを寝かすのは和室でいいですよね。そこの押し入れに掃除機があるんでざっとホコリを取っておいてもらえますか?」
「了解」
僕は荷物を一階のリビングに置いて、二階の寝室へ上がった。一階の和室からは叔父がかける掃除機の音が聞こえる。
寝室はベッドだったが客用布団があると聞いた気がした。確か寝室の押し入れに…

「おい、兄貴なんだこれ!!」
一階から敏行が叫んだ。
はっと自分のうかつさに気がつく。
リビングに祖母の病室から持ってきた荷物を置きっぱなしにしてしまった。
荷物の中には剥き出しの100万円が入っているのだ。

慌てて一階に降りると敏行と叔父が100万円を前に険しい顔をしていた。
「タカくん。このお金は何?」

祖母の遺骨を持ってエジプトに行くための金です。

とは、自分の言葉ではうまく説明できそうになかったので、iPadに残された祖母の動画を見せるしかなかった。
「どうもこんにちは!ババアチャンネルのおばあです!…」

見終わった後、敏行も叔父も僕が最初に動画を見た時と同じように悲しいのか面白いのかわからない顔をしていた。

次の話
https://note.com/isomeshi/n/ne0f2006777e2

前回の話

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