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オランダのビストロで日本人の豊かさについて考えてみた (オランダ ウェースプ)

アムステルダム中央駅から南東に電車で15分ほど行くとウェースプという街があります。とても美しい高級住宅地です。運河がたくさんあって、多くの家は自宅前の運河に、ボートやヨットを係留しています。

運河、レストランのテラス、路上駐車、住宅

高級住宅地といっても、本当の富裕層はアムステルダム中心部に住んでいますから、この街はオランダでは平均よりちょっと上くらいのレベルです。以前聞いたことがありますが、平均的な年収は、ほとんどが共働きであり、それが可能な社会環境が提供されているからですけど、2人で2,500万円くらいです。

日本で2,500万円というと、それなりの企業の部長以上というレベルですが、オランダの2,500万円のポジションは、ざっくり日本の1,000万円くらいだと思います。

そんなウェースプに、私は出張で宿を確保することが多いです。ビンボーなニホンジンは、アムステルダム中心部の1泊4万円を優に超える部屋には泊まれないからです。とにかく私たち日本人は、元々リッチではないけどこの10年ちょっとで転げ落ちるようにビンボーになりました。中にずっといるとたぶんそんなに感じませんが。

ウェースプは住宅街なので、観光客は殆ど来ませんし、それ目当ての飲食店もありません。そのかわり、地元の人が使うレストランが何軒かあります。その一つが今回紹介するLa Luelleです。

日本だと高級レストランという位置づけになるような雰囲気とサービス、そして美味しさですけど、こちらではまあちょっといい感じの定食屋というレベルだと思います。

まずすべてのテーブルには常に生花が飾られます。農業国であり、花卉の栽培が盛んなオランダですから、花は日本の5分の1位の値段で買えるのです。この生花があるだけで本当に豊かに気持ちになれます。

ガーベラ系?詳しくないのでわかりません

そしてテーブルにはオイルランプが置かれます。揺らめく炎はいうまでもなくやっぱりとても心を落ち着かせてくれます。

ゆらゆらするオイルランプ

もうちょっとちゃんとしたレストランだと、これにビニールではなくて布製のテーブルクロスがかけられるのですけど、ここは地元の定食屋、ビストロの位置づけですのでそこまでは提供されません。

ちなみに店内にはBGMなどありません。日本でも本当にちゃんとした料理店にはBGMなどありませんけど、まあ9割のお店には何らかのBGMが流れていますよね。私はこれが基本的には嫌いだし、不要だと思っています。100歩譲って何か音を流すのであれば、選曲と音質にはちゃんと気を配ってもらいたいと本当に強く強く思います。とにかくデリカシーがなさすぎると思います。

同じことは照明、明かり、光に対して無頓着なお店が多すぎです。お金をかける必要など全く無く、天井から直接照明をバッコーンとあてるのだけは勘弁して欲しいと思います。

わたしたち日本人は、俳句とか茶道などを見ればわかりますけど、本来は光や音に対しては非常に敏感だったはずなのです。いつの頃からかそこをすっかり忘れてしまっている気がします。


提供されているメニューのカテゴリー、ジャンルは魚も肉もある、いわばオーソドックスな欧州のメニュー構成だと思います。ある日の夕食はこんな感じにしました。コースもあるにはありますが、アラカルトです。

とりあえずビール、ではなくやっぱりワインでしょう。この日はプロヴァンスのロゼです。店内は地下室もあって立体的な空間です。同行者はアルコールが基本駄目なのでガス水です
中身は忘れましたが、オニオングラタンスープっぽい感じのおいしいスープです
確か魚のサラダ的なものでフリッターがのっています。タコがあるのも面白い
デンデン虫です。サイゼのそれも素晴らしいですけどこれは絶品でした。青ネギが合うんですよ
パテですね。オランダは乳製品は最高ですが、アルゼンチンステーキ以外の肉はどういうわけだか案外だめです。フランスに全然勝てません
カサゴみたいな魚のホイル焼きです
箸で食べたいところですが、ナイフとフォームで頑張るしかありません。言えば箸もあったかもしれません。すごく日本っぽい味でした
羊です。そら豆が添えられていて、味付けは甘辛酸っぱい感じです。すごく美味しいとは正直思いませんでしたが、日本人は知らない、作れない味付けでした。こういう体験が楽しい

これでワインボトルも含めて2人で9,000円くらいだったと思います。決して安くはないですけど、聞いてみると年収2,500万円の彼らですら、こういうお店で外食をするのは週に数日であって、普段は家でパン(だけ)をかじって、チーズとワインで流し込む、というのが実態です。メリハリが効いてるという感じなのだと思います。

このお店のお客さんはアムステルダムの人ですら無くて、皆さん歩いて来られるウェースプのご近所の人達のようです。家族や近所の友人と食事に来てる感じ。全く仕事ノリでもデートでもない点が重要で、彼らの素の暮らしを垣間見ることができます。

彼らの料理やワインの選択の仕方も、日本とはまるで違います。まずはワインを先に選ぶ人が多く、ワインを軽く飲んでから初めてメニューを見て、その日のメニュー構成を考えてる感じです。来店してからそこまでに30分くらい経過してることも珍しくないです。

そして何品か頼むわけですけど、まず日本で言う「すみませーん!」という声がけはまずしません。大抵はウエイター側が気がつくのですが、そうでなければ無言で目を合わせるんですよね。「イクスキューズミー!」と声がけするのはマナー違反ではないと思いますけど、彼らからすると日本人はなんでそんなせっかちなんだろうと思われるのは間違いないです。手を上げて合図することもあまり見かけないですね。

こんな調子ですから、彼らは3時間位かけてだらだらと(いや余裕を持って)夕食を楽しみます。

比べて本当に私たちはせっかちです。彼らのほうが正しいとか、こうするべきだと言うつもりはありません。でも、わたしたちもそういうことを普段の外食でやるだけで、ずいぶん心豊かな時間と、暮らしができるんだろうなとは思います。

私達日本人の豊かさについて以前書いた記事を貼っておきます。

La Ruelleの公式サイトはこちらです。

えっと、ウェースプにはオランダで一番美味しいとされるアイスクリーム屋さんがあります。私も何回も行っていますが、確かに人生で一番美味しいアイスクリームです。(2024年2月末まで改装のため臨時休業みたいです。)

そして人生で2番目に美味しいアイスクリームはうちの近所のここです。なんか遠方からわんさか人が来ていて、なかなか近寄れなくなってはいます。

悲しいお知らせが入ってきました。La Ruelleは2024年4月28日で新しいオーナーに変わるというメールがきました。

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