ばあちゃんの容態が悪化していた
数日前に父さんから電話があった。
新型コロナウイルスに感染したばあちゃんの容態が急変して、脳梗塞が併発したという。
ばあちゃんが感染したこの新型肺炎は血栓症が起きるリスクも高い。
血栓症とは、血管の中に血の塊である血栓ができてしまう病気のことで、血栓が出来る部位によって脳梗塞やエコノミー症候群、心筋梗塞などにおちいる。
そして、ばあちゃんは運の悪いことに脳に血栓が出来てしまい脳梗塞が起きてしまったのだった。
父親からは、まだ肺炎も治っておらず、最悪の覚悟をしといてくれと電話口で伝えられた。
ただ、今のところは麻痺があって上手く喋る事もできなくなっているが、まだ電話は可能なのでヒマがあれば電話をして励まして欲しいとも言われた。
父親からの電話を切り、すぐにばあちゃんに電話をかけると、長いコールが続き、通話が始まった。
電話口のばあちゃんの声は、声質まで変わってまるで別人のようになっていた。
呂律もうまく回らず覇気のないその声に僕は不安を抱いた。
話を聞き取るのがすごく難しい。
それだけでなく、どうやら認知機能が低下している様子で、話がうまく噛み合わない事もある。
それでも、ばあちゃんが僕や周りの事を心配している事は充分に伝わった。
「みんなが健康でいられるように毎日神様に祈ってるからね」と言うその言葉に「自分の方が大変なのに…」と、胸が苦しくなった。
それから2〜3日おきに電話をかけるが、電話が取られることはなかった。
しかし、昨日電話をかけるも繋がらなかったのだが、5分後にばあちゃんからのコールが鳴った。
「もしもし、ユウだよ。ばあちゃん元気ね?」
病人に元気かどうか尋ねるなんてどうかしてるけど、ばあちゃんとの会話はいつもここから始まる。
ばあちゃんもつられて「元気だよ」なんて言ってしまう。
肺炎の調子はどうかと尋ねると「もう治った」と言う。
あと2〜3日したらまた検査するはずなんて言ってて、前もそんな事言ってたら脳梗塞で倒れてしまったので、いまいち信用が出来なくて電話を切った後に父親に電話をかけ、「ばあちゃんがコロナは治ったって言ってたけど、本当?」と尋ねた。
父親「うん、多分肺炎は治ってるかもしれない」
ユウ「じゃあ、お見舞いに行けるってこと?」
父親「いや、それは多分無理だはず。コロナが発覚する前の時点で、家族でも病院に入る事が出来なかった。」
ユウ「コロナじゃない病気でも?」
父親「うん。」
ユウ「退院はできそうなの?」
父親「いや、腰も骨折してて脳梗塞もあったから難しいと思う。」
ユウ「じゃあ、いつ見舞いにいけるの?」
父親「多分、コロナが落ち着くまでは無理じゃないかな。」
そのような会話をした。
今は新型肺炎でなくても、病院の入院患者には家族でも会えない状況らしい。
とりあえず、また数日後にでも近況を記す。
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