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【Review】Sunday/RAIN RAIN “無い道をつくる 黄金の開拓者 ”

フッド長野からタフなサウンドを全国に響かせてきたKINGPINZ、水脈から連鎖し生まれた麒麟示ARTMCの2MCユニット【RAIN RAIN】のNew Single「Sunday」が3月7日にリリースされた。篠突く雨のように鋭く濃密な1st album『THE RAIN RAIN』から2年半を経て、遂に放たれる待望の楽曲をプロデュースしたのは国内外で活躍する手練DJ SCRATCH NICE

その面子からさぞかし重くハードな楽曲だろうと想像していたが、そんな安易な予想に収まる3人ではないことに聴き始めて思い出した。ヴァン・モリソンを思わせる穏やかで味わい深いラブソングをサンプリングし、ピースフルながらドラムとベースが効いたトラックはハードさを残しつつこれまでのアンダーグラウンド色の強かったRAIN RAINのイメージを鮮やかに覆す。いわば雨の中の一瞬の晴れ間のような、はたまた戦士の束の間の休息のような。

ARTMC(左)と麒麟示(右)

先陣を切るARTMCの抜けの良い声と軽快なフロウは、優しいトラックと親和性が抜群。軽やかなステップを踏むように過酷な世界を見つめながら前向きな言葉を綴っていく。自らの経験を内省しながら苦悩や幸福など普遍的な想いへと繋げ、「君」という二人称を用いて同じように生きる人々の背中を押す。雨を歌ってきたMCから放たれる「曇りのち晴れ」という言葉から伝わる気持ちよさは、日曜の朝に飲むコーヒーなど日常に潜む幸せを思い出させる。

キャッチーで心地良い可能性に満ちたHookの後に続く麒麟示のVerse。ローなフロウが寝起きの気怠そうな雰囲気を出しつつも、その言葉から溢れ出すのは横に家族がいる幸せ。これまでハードな言葉を吐き続けていた麒麟示が、逞しくも優しい父としての表情を見せる。「始まりはいつだってこの瞬間から」と門出を示し、正に【RAIN RAIN】の新たな1ページを刻んだ「Sunday」。土砂降りの後の晴れた日曜、その後どんな迎えるのか。この二人のMCがこれから歩む道がますます楽しみになる楽曲である。

※以下、【RAIN RAIN】関連作品


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