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私が選ぶ"民の布"~ピュア爺がつくるピュアなギャバジン~後編

※)2021年2月、本アカウントを個人用から事業用に変更しました。
この記事は個人アカウント時代に民ノ布の中の人が書いたものです。


2019年秋。当時、2020年春に立ち上げ予定だった国産生地で仕立てるねまきのブランド"みんふ"の為にコラムを書いてもらおうと、京都・二条で日用品店を営んでいるLADER橋本さんを岡山にお呼びし、一緒に倉敷市児島の山奥にある工場に向かった。私が、生地や衣服も野菜と同じように、つくったひとの顔が見える売り方をしたいと思わせてくれたきっかけになった職人、八重蔵さんに会って話を聞くために。

前編はこちら↓


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対談のお相手。LADERの橋本さん。

(文字起こしは橋本さんがしてくれました。ありがとうございます!)


橋本
八重蔵さんのところを見学させていただいて、すごく実直なものづくりをされてるなっていう印象だったんですけど、改めて岩崎さんから見た八重蔵さんの生地の魅力はどういうところですか?

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岩崎
そうですね。単純にこんなに目が詰まってるのに、柔らかくてしなやかな生地っていうのを今まであまり見たことなくて。やっぱり目が詰まってると丈夫ではあるんですけど、硬さが出たりハリがあったりするんですね。ですけど、八重蔵さんの生地は1回洗っただけで、すごく、もう、くたぁ〜っといい感じに柔らかくなって着用しやすいっていうのがあります。一番最初はそこですね。


橋本
うんうん。

岩崎
で、八重蔵さんとこに行ってどんどん話を伺うたびに、防腐剤無添加だったり、糊すら付けずに織っていたりと驚愕の事実がどんどん出てきて「えぇー!?」みたいな。(笑)

橋本
糊を付けずに織るっていうのは、生地業界の中では珍しいことなんですか?

岩崎
おそらく昭和の前半とか、それくらいの時代には特に糊を付けなくても織れたんだと思うんですよね。実際、八重蔵さんとこの織機だと糊を付けずに織れるので。ですけど、今の高速織機、革新織機は糸をとにかくピュンピュン飛ばさないといけないんで、糸にある程度強度を持たせたり摩擦を起こさなくしたりするために、糸に糊や樹脂でコーティングしてるんだと思うんですよ。

橋本
へぇー!

岩崎
だけど、八重蔵さんが使ってるGL8っていう織機は、前時代のものなので糊を付けなくてもいい。だから付けてない。ってぐらいの感覚だと思うんですけどね、八重蔵さん的には。

橋本
今の織機だと糊は必要なんですね。でも、八重蔵さんのお話だとGL8は革新織機に比べると生産量が1/3くらいしかないんですよね?

岩崎
そうですそうです。

橋本
それくらい生産量が下がっても、糸に糊付けしなくていいっていうメリットは大きいんですか?

岩崎
正直、値段的なことはちょっとわからないんですけど、おそらく八重蔵さんの使ってる糸はそんなに需要がないので、逆転現象で普通の糸より高くなってる可能性はあるかもしれないですね。もっと需要のある糸だったらロットも大きいから、糊付けとかの加工をしても安くなるかもしれないので。

橋本
なるほど。他に八重蔵さんの糸の特徴ってありますか?

岩崎
特徴は、八重蔵さんもおっしゃってましたけど、無農薬綿ってことだと思います。オーガニックって言い方はしてないので、オーガニックの規定はクリアしてないと思うんですけど、無農薬で栽培してる綿花を使ってますね。その産地がインドネシアだったりベトナムだったり、いろいろ変わるんです。

橋本
それだとたしかにオーガニック認定の基準的には難しいですね。

岩崎
そうですね。

橋本
あの、今実際にみんふの寝巻きを着させてもらってて、何度か洗って着続けてるんですけど、最初に比べてどんどんくったりしてきて、楽になってるんですね。なので、最初より寝やすいってのも変ですけど、寝心地が良くなってきてるんで、ほんとにかぶりとシャツとを洗い換えして毎日着てます。

岩崎
嬉しい!今の世の中って買ったときとずっと変わらないことが良しとされてて。だから、いろんな化学的加工をして、生地の変化が少ないように少ないように作ってるんですよ。すぐクレームもくるし。

橋本
はいはい、わかります。

岩崎
なんですけど、八重蔵さんはそういうとこ全部無視して、昔からの作り方をずっと守るみたいなことをずっとやっていて。だから、生地がめちゃくちゃ変わっていくんですよね。だから、メーカー側としてもちゃんとそこは伝えないといけない。お客さんもある程度そういうリテラシーがある方というか、許容してくれる方じゃないといけないっていう難しさはあるんですけど。

橋本
うんうん。
あの、ものの状態を変質させないためにいろんなものを添加したり、あるいは引いたりすることって、安定性はアップするんですけど、本来持ってるものの良さみたいなものを目減りさせてるなって感じるところがあって。そういうことが身の回りにわりとよくあるんですよね。なので、今の話を聞いてて生地に関しても同じなのかなってちょっと思ったんですけど。

岩崎
ほんとその通りで、たとえばオーガニックコットンを使ってたとしても、縮まないようにする防縮加工とか生地がガサガサしないようにするシルケット加工とかあるんですけど、そういう加工をすると使う意味がなくなるんですよね。化学染料で染めたりしたらオーガニックコットンの良さ全部消してるやん!って。(笑)

注)ここでは物質としての話をしています。

橋本
ただただ謳い文句としてだけ残ってるっていう。(笑)
現状、みんふは生成一色ですけど、それは今の話みたいなことが理由なんですか?

岩崎
そうですね。せっかくここまで無添加の奇跡の生地みたいなのがあるのに染めちゃったらもったいないなーって単純に思ったのがひとつと、あと草木染めも検討はしたんですけど、ちょっと目方(重さ)があるんで、染めちゃうと染め代だけでえらいことになるんです。それだと、せっかく八重蔵さんの生地をもっと流通させたいって思いがあるのに、高くなって限られた流通になっちゃうだろうから、やっぱりやめようと思ったんです。

橋本
たしかに本末転倒ですもんね。

岩崎
洗ったら縮むのも最近よっぽどの服じゃないとないんで、縮まないように洗いをかける選択肢もあるんですよ。でも、その分洗い代や仕上げ代で価格が上がっちゃうんで、それをせずに価格を抑えて、お客さんに委ねるのが一番いいのはいいんですけど。私たちも慣れてしまってるので何も知らないままだと「1回洗っただけで縮むやん!」ってなると思うんですよね。

橋本
うんうん。

岩崎
でも、本来生地ってそういうものだったと思うので、デニムみたいに育てるじゃないですけど、そういうパジャマになればいいなと思ってます。

※この生地を使ったねまき3種を、クラウドファンディングのリターンにしています。
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