fp vs dp2
TwitterやInstagramを見渡してみると、世界中(のマニアの間)でfp熱がふつふつと高まっているのを日々感じる。そんな中、カメラ好きの人たちの意見を眺めていると、fpは多くの人が喉から手が出るほど欲しがってはいるものの、来年SIGMAから出ると噂されている「フルサイズでFOVEONセンサーを搭載したカメラ」に期待しているという声もちらほら。
FOVEONセンサーというのは、SIGMAのsdシリーズやdpシリーズに搭載されているセンサーで、一般的に広く採用されているベイヤー式センサーとは根本の構造から異なる、一風変わった独特なセンサーだ。
詳しくはこちら。 https://www.jps.gr.jp/foveon/
元々dp2 Quattroを愛用していた私も、これまでFOVEONセンサー独特の色味やカリッとした解像力に、散々魅了されてきた。あまりの解像度の高さゆえ、カメラ背面のモニターではその魅力がほとんど分からないのだが、PCの大きな画面で開いたときに、思わず圧倒されるような力があるのだ。
↑ fpで撮ったdp2。
一方fpは、その小さな筐体の中に大きなフルサイズのセンサーが搭載されているのが特徴だ。フルサイズだからこその豊かな階調表現は、FOVEONのようなクセや味は少ないものの、素直でリアルな空気感を漂わせる。
↑ dp2で撮ったfp。
そこで気になるのが、fpとdpの比較だ。実際、ベイヤーとFOVEONはどれほど違うものなのか。
もちろん、デジタルカメラの画作りというのは、センサーだけによるものではない。大きくはセンサーとレンズ、それから画像エンジンの3つの力によるものだ。とはいえ、個人的にもこの2機種をフラットに比較してみたかったので、たまたま休日だった今日一日を使って、比較用の素材をあれこれ撮影してみた。
あいにくの雨模様の中、とりあえず何も考えずに撮ってみる。まずはfpのSTD.(スタンダード)。露出は適。曇天の雰囲気もありつつ、中間調も豊かなしっとりとした描画で、葉っぱの赤・黄・緑が肉眼で見るよりは少しアンダー目に、しっかりと撮れている。
同じ状況、ほぼほぼ近い露出でdp2で撮ったのがこちら。やはりカリッとした解像感はさすがのFOVEON。fpと比べると、シャープネスとコントラストが強く、やや中間調が飛んだような印象がある。また、奥の風景を見ると、fpほどのボケはない。f値が等価での結果なので、そこはやはりセンサーの大きさの違いによるものであろう。
ちなみに、fpで人気のカラーモード「T&O(ティール&オレンジ)」。これはたしかに面白いフィルターで、特にこの紅葉の季節、いわゆる「エモい」絵が取りやすい印象がある。
この写真の場合、オレンジは際立つものの、青い要素が少ないために、シアン系の立ちはあまり感じられない。T&Oはたしかに撮っていて楽しいのだが、状況によってはややドギツくなってしまうので、使い方には注意が必要そうだ。
個人的にはSTD.のRAWで撮っておいて、現像するときに好みの色味に変えたほうが良さそうな気がしている。なので、前回の写真はすべてそのように処理している。
また、ここの所dp2でモノクロばかり撮っていたこともあり、fpのモノクロもどんなものなのか気になっていた。ということで、モノクロも比較してみる。
カラーと同様、中間調が豊かに表現されているので、全体になめらかなトーンが乗っているような印象。では、dp2はどうだろうか。
やはりというべきか、全体にしまった印象で、シャープネスもゴリッと効いていて、男らしい強い絵になっている。SIGMAの山木社長いわく「dp2は世界最高のモノクロームデジタルカメラ」というのも、大きく納得できる写りである。
もちろん好みの差はあるが、前回も書いたとおり、モノクロはdp2の方がちょっと攻めている感じがして、個人的には好きな世界観だ。ちなみに、私が最近撮っているモノクロのシリーズは、こちらのInstagramに上げている。
https://www.instagram.com/i_shutter_bw/
さて、この縦スクロールの中で1枚ずつバラバラに見ても違いが分かりづらいので、ちょっと並べてみたのがこちら。
こうして見ると、カラーはfpよりもdp2の方が少し中間がスカッと抜けた感じがあり、逆にモノクロはfpの方がやや抜けているようにも見える。これ1枚では何とも言えないので、他のカットも比較してみよう。
全体的にややのっぺりとした絵面の場合は、モノクロでは差があまり感じられないのかもしれない。では次。
やはり、カラーの彩度はfpの方が素直に出る。dpのこのFOVEON独特の色味も捨てがたいものはありつつ、ここは好みや用途によって使い分けるのが良いかもしれない。
ここまで見てまず驚かされるのが、センサーの大きさで劣るdp2の圧倒的な解像力だ。解像度に関しては全く遜色ないし、撮って出しのjpegの画像サイズはdp2の方が少し大きいくらいだ。
一方で、やはりセンサーの違いを感じるのは、豊かなボケ味と中間調の階調表現だと思う。
より条件の整った比較のために、今度は室内でセットアップして撮った写真で比較をしてみる。
とりあえずグレーバックを引いて、テキトーにその辺にあったオモチャ(そこそこ見栄えがいいもの)を並べてみただけなのだが、静物画のモチーフのように、敢えて質感の違うものを選んでみた。
こうしてみると、fpのSTD.は素直でありながら、キリっと締めるところは締め、柔らかいところはしっとりと優しく表現されていて、異常なほどの存在感・実体感が感じられる。では、dp2ではどうか。
これは分かりやすく、全体の色味が変わって写っている。やはり中間調の表現に違いがあり、dp2の方は色味も描写もきりっとシャープでエッジィな印象がある。色味はいくらでも現像でいじればいいのだが、このあたりも好みが分かれるところかもしれない。では、モノクロはどうだろうか。
外での写真と同様に、モノクロではdp2の方がズッシリとした濃厚なトーンになっている。
三脚を使って撮ってみて分かったのだが、fpのキットレンズ「45mm F2.8 DG DN」とdp2 Quattroの30mmの一体型レンズの画角は、ほぼほぼ同じだ。ちなみに上の写真はすべてノートリミング。これはたまたまなのかどうか…。
ただ、外での写真と同様、カラーはfpの方がやや濃厚で、モノクロではそれが逆になっているのは、ちょっと意外だった。
個人的な好みとしては、(dp2への変わらぬ愛情を込めて)これまで通りモノクロはdp2、カラーはfpという使い分けで運用していくのが正解なような気がしている。
ただ、同じモノクロでも人物を撮影する場合には、中間調がしっとりと表現されるfpの方が、肌の表現には向いているかもしれない。
ところで、fpには拡張オプションで「ISO 6」というとんでもない低感度も設定することができ、どんなものが撮れるのか気になっていた。
普通に考えれば、白糸のように流れる滝の絵であるとか、動いている通行人が消えた街の写真などが想像できるが、スタジオ撮影のようにきっちりとセットアップして撮るのであれば、極めてノイズの少ない、高精細な絵になるのではという期待があった。
ということで「ISO 6」で撮ってみたのが、これだ。
うーん。このnoteでは拡大した印象まではわからないと思うので、拡大したものを並べてみよう。
上の一枚目が普通のISO 100、下がISO 6で撮影したものだ。よーく見比べると、毛の質感が100の方がやや固く、6の方が毛一本一本の繊細な柔らかさまで表現できているような気も、しないでもない。
…ということで、少し長くなってしまったが、いかがだっただろうか。
カメラというのは本当に面白いもので、ちょっとしたことで撮れるものが大きく違ってくるものなのだ。だからこそ、「少しでもいい絵を撮りたい」という欲求が果てることはない。
あの田中泰延さん曰く「趣味とは、手段が目的化したもの」というのを、地で行っているような気も…(笑)
まぁこれほど楽しいものもないわけで。数ある趣味の一つとして、まだまだ楽しんでいく所存である。
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