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がん関連のおすすめ書籍

街中の本屋さんで医療関連、特にがん関連の本を探そうとすると、悲しいことに書棚の8割方は「怪しい本」で埋まっています。

「悪貨は良貨を駆逐する」ということわざがありますが、現代日本の医療本は「悪書が良書を駆逐」している状況と言えましょう。

ここでは、イシュラン編集長の鈴木が実際に読んでみて、がん患者さんやそのご家族にとって真に有益な情報を載せている良書、と判断した書籍をご紹介します。

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がんがつなぐ足し算の縁(笠井信輔 中日新聞社)

医療者が書くと小難しい書き方になってしまう、がん治療における大切なポイントを、フリーアナウンサーの笠井さんがご自身の経験に基づいて平易な言葉で解きほぐして、余すことなくこの本に詰められています。 特に、「抗がん剤は幸願剤」という表現は、「伝え手」のプロである笠井さんならではですね。 がんに罹患されて月日が浅い患者さんやご家族に、特にお勧めできる書籍だと思いますので、興味を持たれた方は是非読まれてみてください。

あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本

腫瘍内科(薬によるがん治療の専門医)の勝俣先生が書かれた、がん患者さんやご家族にとって知っておくべきことが簡潔にまとめられている「入門書」的な本。読みやすい分量ですし、とてもわかりやすく解説されています

「能力」の生きづらさをほぐす

「能力(ケイパビリティ)以上に相性(タイプ)が組織での個人のパフォーマンスを左右する」というのが、組織開発の専門家である筆者がこの本で一番伝えたいことなのですが... もう一つ、乳がん闘病中という立場でもある筆者が、「葛藤という陰と共に生きる」と記した「第9話」は、特にがん治療に関わる医療従事者の方にぜひ読んでいただきたいです。 一般的には極めて”リテラシー”が高いと思われる筆者が、「先の見えない不安」からいわゆる「インチキ医療」に嵌っていく様が赤裸々に語られています。 こうした「如何ともし難い事態や不安に耐える力」を「ネガティブ・ケイパビリティ」と言いますが、こんな“わかった風のネーミング”で理解するより、筆者の経験した生々しい事例を見る方が、ずっと読む者に伝わってくるのではないでしょうか。

がん「エセ医療」の罠 (文春新書 1456)

がん医療で今だに跋扈している、いわゆるインチキ免疫療法クリニックの実態を暴く書籍。イシュランでも、この類のエビデンスに乏しい治療法を全面に押し出す医療機関については、掲載しないようにしたりメルマガで取り上げたりして注意喚起をしていますが、やはり何が起きているのかという実態がしっかり示されたこういう書籍が出ることが、患者さんやご家族にとって一番"響く"のではないかと考えます

「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」(津川 友介、勝俣 範之、大須賀 覚)

真っ当ながん治療本の決定版と言って良い内容。SNS上でも率先して情報発信してこられた3人の先生達(津川 友介勝俣 範之大須賀 覚)がタッグを組んで出された書籍で、患者さんにもご家族にも広く読んでいただきたい内容が網羅されています。文中に、イシュランのメルマガでも紹介してきたようなデータも解説されています。

「がんの?に答える本-がん相談ホットラインに寄せられた100の質問と回答」(日本対がん協会)

「まさか! 」の事態に備え、傍に置いていただきたい一冊がん予防やがん検診の推進とともに、がん患者とその家族に対する支援、正しい知識の普及啓発等、幅広い活動を行っている『公益財団法人・日本対がん協会』その「がん相談ホットライン」に寄せられた、「がん」に悩む日本全国の皆様からの100の質問と回答をまとめた決定版的な新刊です。「がんの検査では何をするの? 」「放射線療法ではどんな治療が行われますか? 」「がんの治療費はいくらくらいかかりますか? 」等々、がんの基礎知識から、がん治療時の懸案事項、さらに仕事や退院後の生活のことまで、真に必要と思われる情報を分かりやすいイラストや丁寧な説明で紹介していきます。がんについて気がかりに思われている方や、「がんである」という告知を受けられた方、そしてそのご家族まで、多くの皆様に手に取っていただき、万が一の時に備え傍においていただきたい一冊です。

「すばらしい医学――あなたの体の謎に迫る知的冒険」(山本 健人)

外科医けいゆうとして、ブログ累計1000万PV超、X(旧Twitter)フォロワー10万人超のフォロワーを持つ著者が、医学5000年の歴史、人が病気になるしくみ、人体の驚異のメカニズム、薬やワクチンの発見をめぐるエピソード、人類を脅かす病との戦い、古代から凄まじい進歩を遂げた手術の歴史などを紹介する

「おしゃべりながんの図鑑 病理学から見た わかりやすいがんの話」 (小倉 加奈子)

病理医の小倉先生が、がんが一体どういう病気なのかを、イラストも交えて大変わかりやすく説明している本です。 「病理学者」って一体何している人たちなの?という疑問を持っている方にも、がんの「診断」に欠くべからざるそのお仕事の内容がよく理解できると思います。

「Dr.ヤンデルの病院選び〜ヤムリエの作法〜」 (市原 真 (病理医ヤンデル))

病理医の市原先生の著作。X(旧Twitter)では「ヤンデル氏」として昔から結構知られている先生です。がんに限らずの話なのですが、病気になった時に医者が病院を選ぶときにはどういう観点で選んでいるのか、というお話がかなり具体的に出てきます。お医者さんって、自分の専門領域や自分が所属している施設以外では、どこの病院や医師が良いのかって情報を、意外に知らなかったりするものなので、この本で紹介されている考え方は大いに参考になると思います。

「こわいもの知らずの病理学講義」 (仲野 徹)

これも病理医の仲野先生の名作です。ちょっとだけ専門的といえば専門的な内容ですが、関西弁も交えた軽快な書きぶりで、小難しい話をわかりやすく学べます。

「患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版」 (日本乳癌学会)

患者さんが見てもわかりやすい形にまとめられている、乳癌診療ガイドラインの最新版です。治療がどんどん複雑化して、がん診療医であっても知識をアップデートしていくのがなかなかに大変な時代、学会主導で治療ガイドラインが患者さん向けにまとめられているのは、素晴らしいことです

「新装版「ニセ医学」に騙されないために 」 (NATROM)

ブログやTwitterなどで有益な医療情報を発信し続けている、インターネット界隈では著名なNATROM先生の著書。前著「『ニセ医学』に騙されないために」同様、がん領域に限らず、世の中に溢れる「えせ医療」に引っかからないための視点をふんだんに提供してくれる本です。

「医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者」(大竹 文雄、平井 啓)

行動経済学というのは、人間が必ずしも合理的な意思決定を行わない、もしくは行なえない事象と、その背後にある力学を解き明かす学問です。がん治療の意思決定の現場では、医師が合理的と考える話でも患者さんにとっては受け入れ難い話という場面がありがちなのですが、具体的にどのようなことが起きがちなのか、それを解決していくためには何をしていったら良いのか、という話が展開されます。患者さんのみならず医療従事者の方にぜひ手にとって頂きたい本です。