血色是空

涙に浸った睫毛が瞼へ貼り付いた時
時計の針は記憶を失って彷徨うであろう
唐草模様は誰一人として逃がさない
無駄な足掻きはやめて
洗濯物の渦の中へ

まゆらぎがけたゝましく鳴いてゐます

眼鏡を捨てた時に味わった
この衝動は罪だと言われる
街灯が点滅をする度毎に
全部が始まり
気付く間も無く全てが終わっている

頬に赤みを差さねば外にも出られない
この苦痛は何処から芽生えたのだろう
タイダイ染は宇宙を模して揺らめいている
絶え間無い超新星 瞼の裏でも

玻璃で出来た器の中で命は暴れて
玻璃で出来た器を破れば命も破れる
この大きくて小さな玻璃の器の中
ここは青く白く赤く光る玻璃の器の中

氾濫する 赤く 大きく 氾濫する

逃したくない
私が体を動かして 全て言葉になって消える
逃したくない

まゆらぎが羽を畳んで血を流してゐます


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