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絶対に風化させてはいけない

『セクシー田中さん』の原作者である漫画家の芦原妃名子さんが自ら命を絶たれてから10日がたちました。
テレビでは事件前後に少し取り上げただけで今ではそんなことはなかったかのようにまったく触れられていません。

日本テレビは責任逃れとも思えるどうしようもないコメントを二回、小学館にいたっては長い沈黙のはてに社員に対して「今回の件に関する経緯などを社外発信する予定はない」との説明があったという信じ難い話が報道されています。

人ひとりが自ら命を絶ったのに、このまま風化させる気満々な両社の正気を疑います。
責任の所在は明らかなのに誰一人責任を取ることなくこのまま終わってしまうのでしょうか?

もしもインターネットがなかったら、もしもテレビだけの世界だったら彼らの思惑どおり時間とともに風化していたかもしれません。
しかし時代はSNS全盛期。
風化するどころかますます両社に対する批難の声が高まっています。

特に、原作者を守れなかったどころか日本テレビに対して抗議すらしない小学館への怒りや疑念を抱く声が漫画家さんたちから次々と出てきており、今後も続くことでしょう。

あくまで一部の方のポストであり、他にも多数の漫画家さんが声をあげられています。
日本テレビと小学館の対応は企業としても人間としても常軌を逸しているとしか言いようがない。

そんな中、事件の発端の一部となったであろう投稿をした脚本家が沈黙を破りコメントを発表しました。

このたびは芦原妃名子先生の訃報を聞き、大きな衝撃を受け、未だ深い悲しみに暮れています。心よりお悔やみ申し上げます。 芦原先生がブログに書かれていた経緯は、私にとっては初めて聞くことばかりで、それを読んで言葉を失いました。 いったい何が事実なのか、何を信じればいいのか、どうしたらいいのか、動揺しているうちに数日が過ぎ、訃報を受けた時には頭が真っ白になりました。そして今もなお混乱の中にいます。 SNSで発信してしまったことについては、もっと慎重になるべきだったと深く後悔、反省しています。もし私が本当のことを知っていたら、という思いがずっと頭から離れません。あまりにも悲しいです。 事実が分からない中、今私が言えるのはこれだけですが、今後このようなことが繰り返されないよう、切に願います。 今回もこの場への投稿となることを、どうかご容赦ください。 お悔やみの言葉が遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。 芦原妃名子先生のご冥福をお祈りいたします。 2024年2月8日 相沢友子

https://news.yahoo.co.jp/articles/b8d66e3202e9e12b9b37a3761cb88aea421c2afc

にわかには信じられませんね。
もし、この方の言っていることが事実であれば、「脚本家が原作者の意向を無視して自分勝手に改変していた」という説が否定され、残る可能性は、

①小学館の担当者は原作者の意向を日本テレビの担当者に伝えていたが、日 本テレビの担当者はドラマ制作現場に伝えていなかった。
②そもそも小学館の担当者が日本テレビに伝えていなかった。
③小学館と日本テレビ両社の担当者間で談合があり、原作者とドラマ制作現場それぞれに適当なことを言っていた。

この三つに絞られるのではないでしょうか。

本来であれば小学館は自社にとって大切な漫画家を失うことになった日本テレビに対して「今後二度とウチの版権は扱わせない!」といった強烈なメッセージを発してもおかしくない状況なのにもかかわらず、一切何もしないどころか「今回の件に関する経緯などを社外発信する予定はない」と言っていたのだとしたら、何か後ろ暗いことがあったと勘繰られてもしかたがありません。

芦原さんをだましていたのだとしたら……。

そう思われても仕方ないのが小学館という出版社です。
過去に漫画家さんと幾度もトラブルになってます。


・『しろくまカフェ』の原作者ヒガアロハさんとのトラブル

原作者と製作者側が正式な契約をしないままアニメ開始。
原作者が意見を言う場が設けられたのはアニメが始まってから2ヶ月後。
アニメ関連で契約書が作成されてなかったので原作者に1円の収入も無いにも関わらずアニメ関連グッズのデザイン修正依頼はくる。
読者からのお手紙やプレゼントを勝手に捨てられていた。
結果、連載の無期限休止を決断。

・『快感・フレーズ』の新條まゆさんとのトラブル
放送日時を知らされないまま、原作を大幅に改変されアニメ化される。
劇場版の話が出ていたのに、原作者へ相談せず担当編集者が勝手に断っていた。

・『金色のガッシュ』の雷句誠さんとのトラブル。
連載終了にともない、2007年に原稿の一括返却を受けるも欠けていたので、返却要請をするとカラー原稿5枚の紛失が発覚。
雷句誠さんは一連の出来事を公表し小学館を提訴。
同年11月に謝罪と255万円の和解金で和解成立となった。

当時の状況として、

ヒガアロハさんがこのようなポストをされています。
「漫画家には屈してはならない!」
小学館の哲学なのでしょうか。
だとしたら、今日にいたるまで徹底されていますね。

そして今回の事件における一連の不可解な動きにも納得できます。

「漫画を原作で使ってやる」というテレビ局&脚本家。
「漫画を連載させてやっている」という出版社。
漫画家さんを軽視しているという点ではどっちもどっちです。

絶対にこのまま風化させてはいけない。
誰も責任を取らぬまま逃げ切らせてはいけない。

……とここまで書いたところで念のためとニュースをチェックしたら新たな動きがありました。

小学館第一コミック局の編集者さんたちからのメッセージです。

正直私は「なるほど。納得」とはなりませんでした。

先の2023年8月31日付の芦原先生のコメントが、ドラマ放送開始日2023年10月22日よりも2か月近く前に書かれ、そしてドラマ放送開始前に7巻が発売されているという時系列からも、ドラマ制作にあたってくださっていたスタッフの皆様にはご意向が伝わっていた状況は事実かと思います。

https://news.yahoo.co.jp/articles/75d70859e4ef1dff8c76a96a52ab36e8a7e99b29

コミックの発売日が作者の意向が伝わっていたという根拠?
だとしてもドラマスタッフは全員読んだという確証はどこから?
脚本家さんはまったく知らなかったと言ってましたが?

先生のご意向をドラマ制作サイドに伝え、交渉の場に立っていたのは、弊社の担当編集者とメディア担当者です。 弊社からドラマ制作サイドに意向をお伝えし、原作者である先生にご納得いただけるまで脚本を修正していただき、ご意向が反映された内容で放送されたものがドラマ版『セクシー田中さん』です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/75d70859e4ef1dff8c76a96a52ab36e8a7e99b29

そもそも原作者の意向がちゃんと伝わっていれば毎回毎回修正する必要はなかったのでは?

お気持ち表明はいいので、具体的な契約内容と再発防止策を提示しないと焼け石に水だと思います。

勿論、これだけが原因だと事態を単純化させる気もありません。他に原因はなかったか。私たちにもっと出来たことはなかったか。個人に責任を負わせるのではなく、組織として今回の検証を引き続き行って参ります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/75d70859e4ef1dff8c76a96a52ab36e8a7e99b29

しかもこの期に及んで「個人に責任を負わせるのではなく」ときたもんだ。
事態を悪化させた連中はおとがめなし?
それとも会社全体で一人の漫画家の命を奪ったとでも?

なんというか、「いじめ」という犯罪に似たような雰囲気を感じますね。
加害者にも人権はある。加害者の未来も大切。加害者の心によりそう。
なにがあったかはわかっているのに公表せず隠ぺいする。

何度でも言います。
誰も責任を取らずに終わらせるなんて間違っている。
人の命が失われているんですよ。

少なくとも両社で交わした契約書の内容を公表する責任はあると思います。

絶対に、絶対にこのまま風化させてはいけない。



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