マガジンのカバー画像

UPLINK60本全部見る

43
UPLINK Cloudの60本3ヶ月見放題の作品を全部見て、その感想をまとめるためのノートです。みなさんの自宅待機の暇つぶしに少しでも貢献できたらいいなと思っています。
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

UPLINK60本以上(73本)見放題でどの作品を見ればいい?気分や傾向で選べます。

新型コロナウイルスを機に始まったUPLINK Cloudの3ヶ月60本以上見放題プラン(2021年2月現在、1ヶ月980円で73本見放題プランになっています!)。全部見ると宣言して感想を書いているわけですが、最大の目的はUPLINKを応援すること。加入してくれる人が増えればいいなという思いです。 何本か見て思ったのは、リストはあるし、そもそも興味がある人は「あ、これ見たかったんだー」と思う作品があるだろうと思うものの、他の作品がどんな作品かよくわからないだろうなということで

これは映画館で見たかった!『光のノスタルジア』の圧倒的な映像美とチリの悲劇の歴史、そして時間と存在への哲学的疑問

パトリシオ・グスマン監督は1975年から78年にかけて『チリの戦い』という3部構成の政治ドキュメンタリーを手掛けた映画監督です。こちらの『光のノスタルジア』は歴史もモチーフにしながら、監督が興味を持つ宇宙をテーマに「過去」という題材を描いた作品。 映像の美しさに浸りながら遠くへ思いを馳せるとなにか見えてくるものがあるかもしれません。 UPLINK Cloudの動画はこちら。 感想は、こちらで読めるようにしました。 リストはこちらから。 UPLINK以外でも見られます

映画『真珠のボタン』の宇宙と水と西パタゴニアの先住民が投げかける人間の愚かさの起源とは

パトリシオ・グスマン監督が『光のノスタルジア』から5年後に撮った続編的な作品。『光のノスタルジア』ではチリ北部のアタカマ砂漠が舞台でしたが、今度は最南端の西パタゴニアが舞台。そこにもチリの悲劇の跡があり、グスマン監督はそこから宇宙と人間を見つめ、私たちに行き方を問うてきます。 UPLINK Cloudの動画はこちらから。 おすすめ度は高いのでぜひ見てください。 感想はこちらに書きました。 UPLINK60本以上見放題のリストはこちらから。

ホドロフスキーが『リアリティのダンス』で現代に投げかける権威と周縁とフリークスと犬と私たちの心

アレハンドロ・ホドロフスキーの最新作『ホドロフスキーのサイコマジック』が4月24日にオンライン先行公開されると聞いて、重い腰を上げてUPLINK Cloudのホドロフスキー作品に手を付けました。 ホドロフスキーと言えば『エル・トポ』。カルト的な人気で、難解な印象があります。 そのホドロフスキーが少年時代をテーマに撮った作品が『リアリティのダンス』。1920年代のチリを舞台にした物語です。 しかし、これが幻想的と言うより幻想。ホドロフスキーの少年時代の幻想をそのまま映像に

ホドロフスキーの創作の原点に触れる『エンドレス・ポエトリー』は予想外に見やすい映画

アレハンドロ・ホドロフスキーの最新作『ホドロフスキーのサイコマジック』の公開は明日に迫っていますので、その前の作品『エンドレス・ポエトリー』も急ぎ見ることにしました。 『リアリティのダンス』の続編で、前作がわけわからないけれど面白かったので、こちらも期待したのですが、予想に反して素直にわかりやすい映画でした。 もちろん、奇想天外な人物が出てきたりはするんですが、ドラマとしてキッチリできていて、見やすかったです。 なので個人的には前作ほど興奮できなかったのですが、ホドロフ

この恐怖はどこから来るのか、映画『エヴォリューション』をアートとして見たら怖くなった

UPLINK Cloudの60本以上見放題の18本目になります。 毎日せっせと配信映画を見ている内に世の中の状況はどんどん変わってきまして、オンライン公開の映画なども出てきました。中でも配給会社東風が立ち上げた仮設の映画館が大注目です。 小さな配給会社もかなり大変だと思いますので、存続のために少しでも力になれたらと思います。 さて、とりあえずはUPLINKということで、今回は『エヴォリューション』です。 女性と少年しかいない島を舞台に、そこで起きる奇妙な出来事を描くと

自粛疲れで渇望する「自然とのつながり」を『聖なる呼吸』のヨガで疑似体験する。

ゴールデンウイークを「家にいろ」と言われ、「そりゃそうだろうなぁ」と思いつつ、自分が何をしたいか思ってみると、1つは自然の中でマスクをせずに深呼吸することだと思い至りました。 それは開放感を感じたいということと、もう一つ自然を吸収したいということが目的だろうと自分なりに思います。 そんな中で見たUPLINK19本目『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』は、ヨガを通して自然と一体になる感覚をわずかながら疑似体験できる作品でした。 見るだけで気持ちよくもあるし、ヨガをやって

スウェーデン先住民のドラマ『サーミの血』をみて『ゴールデンカムイ』を思う。

UPLINK Cloudの見放題20本目になりました。4月中に30本見る予定が遅れています。頑張らねば。 さて、スウェーデンの先住民サーミの少女が差別と戦いながら成長していく姿を描いた『サーミの血』、スウェーデンにそんな差別があったことも知らなかったのですが、先住民差別と若者という普遍的なテーマを描いた作品です。 先住民差別を描いたというよりは、若者の行き方について描いた作品で、新しい時代の新しい生き方を模索する姿が『ゴールデンカムイ』のアシリパさんと重なって見えました。

大人数が一斉に食事をするだけの映画『聖者たちの食卓』が世界を映していると言えるわけ

インドのシク教寺院で400年以上続けられている、寺院が用意した食事をたくさんの人々が一緒に食べるという行事を映したドキュメンタリー映画『聖者たちの食卓』。 比較的短い作品で、難しいところもなく、映像が綺麗なので、今回のUPLINK見放題の中でもぜひみんなにサラッと見てほしい作品のひとつです。 さらっと気持ちよく見られる作品ではあるんですが、見ると色々考えさせられるところがあり、今はこんなみんなで会食なんてできないから尚更かもしれないですが、大人数でご飯を食べることって意味

自由を求めた天才がたどり着いた場所はー『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』の圧倒的な美しさと苦悩

UPLINK Cloudの60本以上見放題で気になる作品から見ていますが、今日は『バレエボーイズ』に続いてバレエものです。 天才バレエダンサーのセルゲイ・ポルーニンの半生を描いた作品。踊る姿を見るだけでも十分価値がありますが、その背後の物語も秀逸。一人のアーティストを取り上げたドキュメンタリーとしても傑作の部類だと思います。 バレエ好きの方もドキュメンタリー好きの方もぜひ。 天才バレエダンサー、セルゲイ・ポルーニン19歳の史上最年少で英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル

今だからこそ「大切な人の死」を考えるー『聴こえてる、ふりをしただけ』

新型コロナウイルスの感染拡大で自粛要請だ自宅待機だテレワークだ補償だと考えなければいけないことがたくさんあって、いわゆる「コロナ疲れ」になってしまっているような気もします。 そんなときは、原点に戻ってみるといいなとふと思いました。原点とは、自分と周りの大切な人達を守ること。死んでしまわないようにすることです。 そんな事を考えながらgreenz.jpで取り上げる映画を選んでいたところ、素晴らしい映画に出会いました。母を失った少女の物語です。 この映画を見てあらためて「大切

自分の可能性にかけられるか。プロを目指す『バレエボーイズ』が将来に悩む姿に共感する。

UPLINKの60本見放題全部見るシリーズ10本目です。 ノルウェーの首都オスロでバレエスクールに通う3人の少年、ルーカス、シーベルト、トルゲート。女子が多いバレエスクールの中で数少ない男子の3人はとても仲がよく、男子更衣室が一番楽しいと話します。 3人は同じ学校で今年中学を卒業することに。3人ともプロのダンサーを目指したい思いはあるものの、進路には悩みが。成績の振るわないシーベルトは勉強のため夏休みが終わるとバレエスクールに来なくなってしまいます。かたやルーカスは北欧の

非常時こそ女性が強い!『ラジオ・コバニ』と『ガザの美容室』

UPLINK60本全部見ているわけですが、いろいろなところに書いているせいで、6本目の『ラジオ・コバニ』をこちらに載せるのを忘れていたのですが、9本目に見た『ガザの美容室』と共通して女性の強さを描いている気がしたので、あわせて紹介します。 『ラジオ・コバニ』は、絶望の中でも人を信じて希望がもてる方へと歩み始める若い情勢の姿を追ったドキュメンタリーで勇気づけられる作品でした。 もう1本、9本目の『ガザの美容室』はパレスチナの美容室で女性たちが諍いをするという話。ガザ地区に閉

変わらずパレスチナは悲惨でも、若者は恋をする。『パラダイス・ナウ』と『オマールの壁』はなぜ恋を描くのか。

いま世界は新型コロナウイルス一色ですが、これまで存在してきた問題が消えてなくなったわけではありません。むしろこれまで苦しんでいた人たちはさらに苦しい立場に置かれていると考えて間違いありません。 そんな場所のひとつがパレスチナ、長く続くパレスチナ問題でパレスチナの人々は貧困などの困難にあえいでいます。今このときパレスチナの人々がどうなっているのか心配でなりません。 私たちにできることは彼らのことを知り、情報を集め、支援できる時が来たら支援すること。 その最初の「知る」ため