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「マタアイマショウ」 (リーグ第32節・アルビレックス新潟戦:5-1)

 脇坂泰斗は苛立っていた。
誰かに向けるわけでもない、自分自身に向けた感情だった。

この試合の5日前、豊田スタジアムで行われた名古屋グランパス戦。
韓国でKリーグ王者との死闘を演じたチームは、疲労の色が隠せずに0-2で名古屋の地で敗れている。

 この試合、スタメン表にキャプテンである脇坂泰斗の名前はなく、ベンチから試合を見守っていた。1点を追いかける64分に遠野大弥に代わってピッチに入り、山田新からキャプテンマークを託される。だが直後の67分、スローインから右サイドを崩され、和泉竜司に追加点を奪われると、そのまま巻き返すことも出来ず、黒星が刻まれた。

 敗戦後は、名古屋に駆けつけたゴール裏のサポーターと、チームの先頭に立って向き合っている。どんな思いで受け止めて、そして何を思ったのか。

 試合後、珍しく最初にミックスゾーンに現れた脇坂泰斗の表情は、いつになく厳しいものだった。こちらが声をかければ、立ち止まって応じてくれただろうが、それがためらわれるような空気を纏っていたようにも見えた。

 視野の広さと周囲の気配りで知られる14番は、報道陣に目線を向けることなくミックスゾーンを通り過ぎていった。キャプテンとして、そして1人の選手として、何か思うところもあったようにも見えた。

 あれから中四日。
Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsuで迎えたアルビレックス新潟戦。

 スコアは5-1。
これまで溜まっていた鬱憤を晴らすかのような、今季一番の大勝劇だった。前半18分、脇坂泰斗はチームの追加点を記録している。 

 自らが起点となってエリソンに当てて、いわゆる3人目の動きで守備ブロックの隙間に潜っていく。マルシーニョの落としは新潟守備陣の足に当たって角度が変わったが、それが目の前に転がってくる絶妙なボールとなり、GK小島亨介の逆をついて冷静に流し込んだ。

 久しぶりに見た、狭いエリアを中央から攻略するフロンターレらしさの漂う崩しだった。7月の柏レイソル戦以来となるゴールを振り返って、試合後にはこう胸を張った。

「あそこに入っていくのは自分の武器でもある。いい落としが来たので、コジ(小島亨介)に悟られないように、ファーを見せながらニアを意識しました。気持ちよかったです」

そして、問うてみた。
あの名古屋戦後のミックスゾーンで見せていた表情の意味を。

 こちらの質問の意図を察した彼は、「いやー、まあ・・・なんていうんだろう」と、あのときの記憶の糸を手繰り寄せながら、胸の内に抱いていた苛立ちの理由を話し始めてくれた。

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