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「勝利の方程式をいかに打ち砕いたのか」 (リーグ第33節・FC町田ゼルビア:4-1)

 スウェーデンでは受け手の足元にピッタリと合う滑らかなパスのことを、「バターのようなパス」と表現するそうです。

 この試合、川崎フロンターレの逆転弾は思わぬ形で転がってきました。

 GK谷晃生が低弾道のフィードをミス。
そのボールが自身の守備範囲に飛んできた脇坂泰斗は、ダイレクトで前方の山田新に届けました。山田はループシュートを選択し、綺麗にゴールネットを揺らしています。

 驚いたのが、不意に飛んできたであろうボールをトラップせずにダイレクトで山田新に届けた脇坂泰斗の判断と技術です。

 普通ならビックリしたり、焦ってトラップするので精一杯のはずです。それを冷静に当てて、しかも最高のアシストをしました。

「あそこに来た時に止めて安心する選手がほとんどだと思います。僕だから、あそこに刺せた」と試合後の本人も胸を張っていました。

 こちらが「トラップしようとは一ミリも思わなかった?」と尋ねると、「思いましたよ。思いましたけど、一瞬、行けると思って出しました」と、咄嗟の判断でプレーを変えたと言います。

 脇坂泰斗が凄いのは、ダイレクトで届けたボールを、山田新が足元でコントロールする場所ではなく、そのままシュートを選択できる場所に届けたことです。

 もし足元に入るような場所に出すと、トラップにそれだけ時間を要するロスがあるからです。スムーズにシュートを打てるように、「そのままダイレクトで打てよ」という、優しく強いメッセージを込めたわけです。まさに脇坂泰斗によるバターパスです。

そして「彼(山田新)はトラップしたらミスするので、僕がワンタッチで蹴れるように選択してあげました」と、山田に対して何度か聞いたようなコメントを語ってくれました・笑。バターをたっぷりと塗ったパスを堪能した山田新は、美しいループシュートで今季15得点目を記録しています。

いやー、何杯でもご飯をおかわりできるゴールシーンでした。バターパスとか言っているのでややこしいですが。

では見事な逆転勝ちの背景を読み解いていきたいと思います。ラインナップはこちらです。


では、スタート!

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