見出し画像

せき半

細い路地裏が交差する暗い道をあてもなく、さてさてこの路地の奥は何があるのかなぁ、なんて思いながらふらふらと入ってみたら、するりと一匹の黒猫が現れて、歩く前をまるで先導するようにすたすたと歩いていく。
やがて一軒のお店の入り口の前に着くと、猫はこちらを振り返り、
「旦那、この店いいですぜ、いかがですか」
そんな目でこちらを見上げるので、ふむふむ、まあそんなもんか、とその横を通り扉を開けると、ついっと黒猫は美しい背中の曲線をくねらせて店の横の隙間に消えていった。
店に入り、女将にその話をすると、ふふふ、と笑っていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?