デス俳句
十畳の畳に二人の男が向かい合っている。
和室の静謐な空気に反して男らは手負いの虎のような殺気に満ちていた。
一方の男、松尾弦司が口を開く
夕焼けに
ペダルが重い
二人乗り
静寂。しばらくして、
スターン! タターン!
三枚の札が上がる。
それには竹、松、竹と書かれている。
それを見たもう一方の男、松尾ランペイジが口を開く。
朝起きて
アップルティー
君と僕
スターン! タターン!
再び札が。
竹、松、松。
鹿威しの乾いた音が響く。弦司は懐からドスを取り出し、歯を食いしばりながら小指を落とす。和室には相応しくない絶叫が響きわたる。
説明しよう。今、金閣寺地下深くの和室「夜佳停」では、裏松尾家による跡目争いが行われている。一方は先代松尾皇治の長男弦司。もう一方は妾の子でハーフのランペイジだ。松尾の跡目争いは俳句で負けた方が指を切り落とし、指がなくなった者が敗北する。
札が上がる。テーマは「猫」。指は残り19。戦は始まったばかりだ。
【続く】
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