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見た目は40歳、中身は10歳。 逆コナン的感動作『ジャック』

外見はおじさん、中身は子ども

 「見た目は40歳だけど、中身は10歳の少年の物語」要約すれば、そんな内容だ。主人公のジャックは人より成長が4年も早い。10歳にはすでに40歳の見た目で、体もでかく、腕毛も髭も生えている。いじめを心配した両親は、ジャックを小学校には通わせず、自宅に家庭教師を招き勉強をさせている。
 ある日、家庭教師の勧めでジャックは小学校に通うことになる。最初は人と異なる外見で、ちょっかいを出されていたジャックだが、小学生離れした長身を生かしバスケットボールで活躍したり、子供が買えないポルノ雑誌を買ったりして人気者になっていく。

フランシス・F・コッポラ×ロビン・ウィリアムズ 

 ブエナ・ビスタ(ディズニー)の配給で、制作はハリウッド・ピクチャーズ、監督は『ゴッドファーザー』のフランシス・フォード・コッポラ。主演はロビン・ウィリアムズで、助演にダイアン・レインとスタジオもスタッフもキャストも一流といっていい。これだけの布陣で爆発的なヒットこそ飛ばしていないのは残念だが、『ジャック』は実に感動的な作品だ。私の好きなコッポラの映画は『ゴッドファーザー』『ペギー・スーの結婚』『レインメーカー』だが、今日から『ジャック』も追加する。

 実は、ロビン・ウィリアムズは特別好きな役者ではない。『ジュマンジ』『ナイトミュージアム』のようなエンタメ系でははしゃぎ過ぎだし、『いまを生きる』『レナードの朝』といったシリアス系では上手過ぎてのれない。一方で『ガープの世界』は作品として好きだから良くて、『ストーカー』『インソムニア』みたいな一風変わった配役の時は意外性があって好きだ。

 しかし『ジャック』はこれまでの映画とは異なるロビン・ウィリアムズの魅力が詰まっている。コメディとドラマ、両極端のバランスを保っているからだ。40歳の大人が子供のようにはしゃいでいる姿をコメディっぽくしてバカにした感じに見えるのもよくない。逆に10歳の子供が大人のように落ち着いても駄目だ。滅茶苦茶難しい役なのに卒なくこなすウィリアムズはやはり名優である。

「人生は20歳までが華なんだぜ」友人の台詞に泣ける

本作はシナリオも素晴らしい。悪人が出てこない珍しい映画だ。最初はジャックに子供達がちょっかいを出すシーンもあるが、少し話が進むといじめも、差別する大人も出てこない。代わりに周りの同級生との友情に焦点があてられる。ツリーハウスで仲間と騒いだり、歌を歌ったり、ポルノ雑誌を読んだり、おならに引火したり…10年間家で過ごしていたジャックにとって楽しい毎日が長く深く描かれる。

 好きな台詞がある。ジャックと親友ルイスの会話だ。「ジャック、どのぐらい早く成長するの?」「人の4倍だよ、20歳になったら爺さんだ」「でも人生は20歳までが華なんだぜ。ママがそう言ってた。そこから人生は下り坂だって!」こんな気の利いた事を言えるルイスの頭の回転に脱帽する。ジャックもうれしいだろう…と感情移入してしまう。大人もグッとくる台詞だ。

 親友ルイスが学校で読み上げる作文には「ジャックは大人の見た目なのに、楽しんだり喜んだり子供のような感性がある。私はジャックのような大人になりたい」みたいなこと(うる覚えなので…)をいう。確かに大人はつまらなそうだ。多くを知っているせいで驚かないし、仕事で疲れ深刻な顔をしているし、滅多に喜ばない。本作は大人が童心を忘れたときに見直すべき映画だ。ジャックを見習うべきだ。

 「中身は子供、見た目は大人」という設定の映画だと『ビッグ』がある。生まれながらに老け顔で若返っていく映画で『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』もある。本作も要チェックすべきだ。


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