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11th #ぼくてつカフェ「いいって、なに?」の簡単なレポート

11回目の #ぼくてつカフェ (オンライン哲学カフェ)をZoomで開催しました。ふだんなにげなく使っている「いい」について、こんなに考えたことはなかった、まさか「いい」と「共同体」との関係だったり「いい」のもつ「支配的なパワー」にまで考えがおよぶなんて…! という感動のある回でした。

開催概要)
■日時:2021年5月29日(土)13:00~15:00
■テーマ:「いいって、なに?」
進行:土屋陽介さん
場所:Zoomにて開催
参加費:無料
定員:25名

SNSや会話のなかで「顔がいい」という表現を見聞きすることがある。意味を調べると…“推しのアイドルや、アニメのキャラクター、俳優さんのことを「この上なく素晴らしい、素敵だ。」と思った時に使う言葉”[※1]であり、また、“推しである人物の外見はもちろん、性格、言動、声、ファッション……二次元のキャラクターならば、彼がたどり着いたストーリーの結末まで含めてその全てが尊く、大好きでどうしようもなくなった時、自分の中から語彙力が消失。その結果、出てくるのがこの言葉”[※2]だという。
へー、なるほどそういう意味なのか、と思う一方で、いくつかの疑問がわいてくる。⚫︎相手への総合的な評価や称賛(素晴らしい、素敵、尊い…)が「顔」に集約されるのは、どうして? ⚫︎それに「顔が好き」ではなく「顔がいい」と表現するのは、なぜなのか? ⚫︎「顔がいい」をあえて細分化するとしたら、その中身はどんなもの? ⚫︎そもそも「いい」って、なに?…といったことを当日集まったみんなで考えてみたいです。

[参考]※1:顔が良いとは?意味・元ネタ・オタク用語としての類語を解説!|tretoy magazine|2021 ※2:顔が良い(かおがいい)|numan|2020

Peatixで参加募集しました⇒ https://bokutetsu11.peatix.com/

当日)
13:00スタート。申込者22名⇒参加者20名(初参加7名)。ルール説明&テーマ説明(ある参加者の、海外ドラマの俳優に対して知人やテレビ番組が「顔がいい」と言っていた意味がわからない、という疑問がきっかけ)のあと、「いいって、なに?」というテーマで問い出し。

問い出し一覧)
①最近「いいね」したものは何ですか?
②「顔がいい」と「あの人、いい顔してるね」はどう違う?
③「いい」と「よい」の違いは?
④「いい」って言葉に表せないのか?
⑤「いい」と「好み」の違いは何か?
⑥不快な「いい」はあるか?
⑦人に紹介するときの「いい人」は何なのか?
⑧「いい」と「好き」の違いは何か?
⑨「いい(良い)」と「正しい」の違いは何か?
⑩「いい」はどこにあるのか?
⑪「顔がいい」を「顔が正しい」と言わないのはなぜか?

問い出し後、「似ている問いは合体させよう」ということで⑤+⑥+⑧を合体。今日話したい問いについて、それぞれ数分間考える。

多数決をとり、本日の問いは【⑩「いい」はどこにあるのか?】に決定。(ここまでで約45分。小休憩を挟んで再開)

15:05までの約1時間、いろんな意見を交わしました。今回は話の流れにざっくり小見出し(【 】で括った部分)をつけてみましたが…記録するのってほんとうにむずかしい…! というわけで、実際の対話の内容はまとめきれませんでしたので以下は個人的なメモ(★=自分の感想)です。

【主語や視点について】「Like(好き)」は主語が自分だけど「いい」は対象物が主語になり「誰から見ても、いい」というニュアンスを帯びる。「私なんかが(対象を)評価するなんて、めっそうもありません」というスタンス。誰が「いい」と評価したか?「自分が評価」なら主観。「社会が評価」なら客観。すべてを取り除いた絶対的な「いい」はある?

【なんとなく、について】「いい提案だ」はそう思ってないケースが多い。「なんとなく」のときに「いい」と言うのであり、本当にいいなら「素晴らしい」と言うはず。無意識に使い分けている気がする。3人称目線の「いい」。「あの人はいい顔だよね」と同意を求めるときの「いい」は断定ではなくてふわふわしている。「エモい」とかみたいに「なんかいい」という同意。

【場/共同体について】共同体のなかで価値観が共有されていると「客観」になる。「主観」のままだと理由の説明が必要になる。「いい話だ」とつい言ってしまうのは、哲学用語でいう「表出」。(・∀・)イイ!!←この顔文字も「表出」? 女性がよく言う「かわいい!」とかLINEのスタンプ機能のように、反射的。若い子の会話におじさんが入って「どういう意味で「いい」でいいんだ?」って聞くけど「わざわざ説明させないで」って場がある。オタクがいう「顔がいい」には「自分があらかじめ持っていた期待を裏切らなかった」という思いが込められている。「同じ意見を持ってて裏切らないでいてくれるよね?」という確認でもある。表出しても大丈夫な共同体のなかで、安心感のなかで表出が初めて可能になる。(★「いい」と発言している主体と「共同体」との関係性を考えることになるなんて、思ってもみなかった!「世界が広がった」感があった…!

【「いい」が抱えきれないものについて】「いい」には、言葉に表せない、もれる感情がある。話してる途中で「もういい!」ってなるのは、相手と意味を共有できないからかも? うまく言葉にできないなら、できるだけ短いほうが伝わる、だから「いい」と言う、ってことかも?

【「いい」のもつパワーについて】「主語が「私」じゃないから「みんな」もいいって思ってるよね?」という心の動き。「みんないいって思ってるなら思わないとおかしい?」という受け手の感情。力がある人、影響力がある人の「いい」は、もはや「いいね」としか答えようがない。影響力のある人のいいは「正しい」に近くて、パワーがある。「かわいいは正義」はその象徴。「いい」って押しつけがある。洗脳される「いい」もあるかも。「かわいい」は動かない根っこみたいなのがある。「ジブリがいい」と言われたら、俺が間違ってるのかな?面白さに気づけないのかな?で終わるけど「ブルドッグかわいい」は抗う。「いい」は抗う余地がない。共同体のなかで対象を評価しあうことで、相手を排除している。特権意識。共感できる人たちの共同体。(★「いい」って発言には、聞き手の反論の余地をなくすような支配的なパワーがあったなんて! まさかの発見だった。わが身をふりかえると「顔がいい」は使ったことがなくて「顔がかわいい」は連呼してる。それってなんでだろう?)

【直感的な「いい」について】
「痛みに間違えることはあるか?」という哲学者の問いがある。「神経も興奮してないんだから痛みはないはずです」と医者に言われるけど、自分は痛みを感じている。初めて見たときに直感的に「いい」と思ったものをほかの人はそう思ってないという場面に遭遇したとき、確実に自分は「いい」と思っている。学習によって何を学ぼうとも、自分が「いい」と思うのは事実。

【「いい」と「正しい」の違いについて】「顔が正しい」と言うと、言葉を尽くして説明しないといけなくなる。「顔がいい」なら共有できる。言葉にあらわさないときの「いい」はどこにある?

【「いい」は説明可能か、について】説明できないから「いい」のに、説明しようとしたとたんに「いい」じゃなくなる、という矛盾。「いいね」機能は承認欲求。求められたら「いいね」と言っちゃう。深く考えずに使える言葉。あいまいだからこそ「いい」。哲学は徹底的に「野暮であること」が大事。感覚のなかに規範とかが入り込んでくる。(★このへんあまり頭が追いついてなかった…)

反省点)
自分のZoomの不具合。「インターネットの接続が不安定になっています」という表示が出て画面が固まり、いったん退室…という事態が3回も。ホストなのに…!という焦り(退室時にホストを移せたのでよかったけど)と、話がどこまで進んだのかわからなくなって困った。

終了後)
10名前後が「廊下」に残り、ふりかえりや雑談など(クックパッドには「いいね」機能はなくて「つくれぽ」なのが興味深い、「顔がいい」は拡散のために発言してるらしいと聞いたことがある、だとしたら「いいね」じゃなくて「リツイート」だね、って話とか)、約2時間半。おつかれさまでした。

★次回 #ぼくてつカフェ 開催情報はこちら
https://bokutetsucafe.peatix.com/

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