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カフェ・レストランでの作法あれこれ 【ポルトガル旅行 振り返り編9】

一人旅では、自由さと気楽さを
思いっきり享受することができるのだが、
誰かと一緒の旅だともっといいのに、と思う瞬間がある。
例えば、空港などで大きなスーツケースを持って
列に並んでいる時(トイレに行きたくなったら荷物を見ていてもらえる)、ちょっといいホテルに泊まる時(宿泊代の割り勘ができる)、
食事の時(複数品注文ができる)。

ということで、今回は食事に関連した話。

その土地にしかない食べ物を楽しむのは旅の醍醐味の一つだが、
実は私にとって食事は二の次、三の次。
お腹がすいたら食べましょうか、という程度。
ただし、気まぐれにやって来る食欲を満たす際、
世界展開をしているチェーン店で軽食をつまんだり、
ローカルスーパーで買ったものをホテルで食べたりするのは
必要最低限にしたいとも思っている。
食にこだわりがないと言いつつも、時には
街のカジュアルレストランで腰を落ち着けて
暖かい料理も食べたいのだ。

今回、ホテルの部屋での一人ご飯から、
カジュアルレストランまで一通り経験したが、
各店での「作法」がバラエティに富んでいたので
一気にまとめておく。

(1)着席オーダースタイル

リスボン2日目の夜、ポルトガル料理の定番中の定番
タコのリゾットが食べたくて、ふらふらと街を歩き、
こぢんまりとした家庭的なレストランに入った。

フロア担当は2人。
店の入り口近くと奥側をそれぞれ分担しているようで、
客の案内から注文、料理のサーブ、
勘定、片付けまで、全てをこなしていた。
私が座った奥側の席は女性が担当だった。
店内にはもう1人男性のウェイターがいたが、
担当範囲が違うからか、結局、その男性とは店を出るまで
目を合わせることもなければ、声を掛けられることもなかった。

9月中旬20時前のリスボン、まだうっすらと明るい

ポルトのボルサ宮(←建物好きにはおすすめの観光地)の近くで
ランチを食べたレストランでは、
フロア担当者の役割がきっちりと分けられていた。
テーブルを片づけセッティングをして客の案内をする係Aと、
注文を取り食事をサーブする係Bが巧みに連携しながら
途切れなくやって来る大量の客をさばく様子は、
効率重視で、見ていて気持ちよかった。

そのレストランでは、食事を終えた客がある程度出ていくと、
係Aが一気にテーブルの上の皿やグラスを片付けていく。
そして空いた席に新しい客が次々と通される。
店内はある程度の席が一度に空くと
またあっという間に満席になるを繰り返すため
客はまるで寄せては返す波のよう。

さて、係Aによって席に通された客は
配られたメニューを眺めながら、しばらく待つことになるのだが、
この時、注文が決まったからと言って「Excuse me」などと
声をかけるのは控えた方がよさそうだ。
なぜなら、しばらくすると係Bがテーブルを順々に回って、
流れ作業のようにオーダーを取りにくるからだ。

よって、隣のテーブルの人よりも自分の方が早く着席したのに
オーダー(あるいはサーブ)が遅い、ということが普通に起きる。
こうした分業システムに気付かず
「ああ、私は1人客だからほったらかしにされているのだわ」と
悲観的になったり、必要以上に待たされたと勘違いして
腹を立てたりしないほうがいい。
このタイプのレストランでは
フロア担当者の采配に身を任せたほうがスマートなのだ。

定番タラのコロッケ

リスボンの次に訪れた都市コインブラでは、どうにもこうにも
注文がスムーズにいかないレストランに入ってしまった。
店自体は小さくて10人も座れば一杯といった感じで、
メインの座席は店の前の広場に突き出したオープンテラス席だった。
客は全員テラス席に陣取っていたが、
強烈な暑さと強烈な日差しから逃れるため、私は店内に座った。
ここに何か決定的な差があったのかもしれない。

席に座りメニューを見るところまではスムーズだったのだが、
いざ注文をしようと店員さんを呼びかけても
オーナー風の店員さんからは軽く拒絶され、
もう一人の店員さんからも「今はちょっと…」といった態度が返って来た。
もちろんそれぞれ私に一言二言、声をかけてくれたのだが、
残念ながら意味がよく理解できず、モヤモヤと居心地の悪い時間が流れた。

その後、前述したようにポルトで役割分担制のレストランを
じっくり観察したことで、モヤモヤが晴れたわけではないが
店にはそれぞれ暗黙のルールがあり、
コインブラの店では、私の方に何か
客として守るべき作法があったのかもしれないと思い直したのだった。

コインブラ大学の時計塔からの風景。9月末とはいえ、まだまだ夏の日差し

(2)カウンターオーダースタイル

マクドナルドやスタバのように、
カウンターで注文してから席に座る、
ファストフードタイプのお店も何回か利用した。
旅の最終日、ホテルをチェックアウトし
空港へ行くまでに少し時間があったので、
近くのカフェで時間をつぶすことにした。
グーグルマップで適当にホテル周辺を検索すると、
スペシャルティコーヒーで高評価のお店が見つかった。

店に着くと、確かに中も外も大にぎわいだった。
店の奥には焙煎機もあって経営者のこだわりが感じられた。
忙しく動き回る店員さんを何とか捕まえて、
「ここで飲みたいのだが、どうやって注文するの?」と尋ねると
(英単語を並べただけなので実際に伝わったかどうかは謎)、
先にレジカウンターで注文をしてくれということだった。
一人旅でなければ、この時点で
注文する係と席を確保する係と言った具合に、
自然と役割分担が出来るのだが仕方がない。
私が注文を終えた時点で
まだ席が残っていますようにと願いつつ、列に並ぶ。

コーヒーとアボカドサンドを注文し
支払いを済ませると番号を告げられた。
席に座って番号が呼ばれるのを待て、と言う意味だ。
運よく壁際の落ち着けそうな席が空いたので、そこに座った。
しかしぼけっとしていては、自分の番号が呼ばれたことに気付かない。
ああここに呼び出し機があればいいのに!とも思ったが、
無粋な機械音が響くのはこの素敵なカフェの雰囲気に合わないし、
簡単な数字くらい聞き取りたいという思いもあり、
平静を装いながらも全神経を耳に集中させた。
出発までのひと時を、地元民に交じってのんびりと過ごしたいと
入ったカフェなのに、なかなか落ち着けない自分に苦笑した。

ちなみに、このカフェでは
店員さんの「スマイル0円」ならぬ
キュートなウィンクというオプションがあった。
人気店ゆえに店員さんは忙しい。
客が去った後のテーブルを片付けたり、物品を補充したり、
団体客が来るとテーブルの配置を変えたり、一時としてじっとしていない。そんな店員さんが、一人手持無沙汰にしている私と目が合うと、
なんとウィンクをしてくれたのだ。しかも2回も。
日本では日頃ウィンクをする、されるという場面はそうそうないので、
一瞬驚いたが「ちゃんとあなたの存在は気にかけていますよ」
という合図は、一人旅の私にとって身に沁みる瞬間だった。

番号を呼ばれてカウンターに取りに行こうと思ったら、ウィンクのお兄さんが運んでくれた


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