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ハマスとISISは誰が作ったのか

テロリスト集団のスポンサー

中東各地でイスラム過激派と称される集団がメディアで取り上げられ、狂信的な宗教的信念から各種のテロ活動を行っているといった報道がされましたが、こういった集団の生い立ちや背後にいるスポンサーなどについてはほとんど触れられていません。

ハマスを支援しているのはイランである、という事ぐらいは報道されるのですが、ISISに至っては彼らの活動が全世界を騒がせていた2014年当時ですら全く何の情報もありませんでした。

突然イスラム国なるテロリスト集団がどこからともなく沸いてきて非常な短期間でイラクやシリアに跨る広大な領土を制圧し、イスラム国を樹立した、と報道されただけでした。

現在は勢力が弱まりパキスタンやアフガニスタンなどでテロ活動をしているようです。

実はハマスについてはイラン以外に設立後の早い段階から資金援助をして育てた意外な国があるのです。ISISもその背後にスポンサーが存在して、勢力を拡大していった、という意味では似たような状況です。

ハマスとISISのそれぞれの状況は以下の通りです。

ハマスの設立経緯

2023年10月7日にガザで同地区の支配権を握るハマスによるイスラエル襲撃に続き、イスラエルのガザ地区への攻撃が始まり、何万人というパレスチナの民間人が犠牲となっていますが、ハマスとは一体何者なのでしょうか?

ハマスの前身はイスラエル建国以前にエジプトがガザを統治していた時代に存在していたムスリム同胞団のガザ支部です。

ムスリム同胞団はエジプト生まれで世俗法ではなくイスラム法に則り国を統治することを目指すイスラム政治・社会運動を押し進める団体で歴代政権に非合法化あるいは弾圧されたりしてきた過去があります。

エジプトが「アラブの春」騒動で社会が混乱していた最中ムスリム同胞団出身の人が一時エジプト大統領に就任したことがありましたが、すぐにシシ大統領によりクーデターが起こり、現在の状況となっていることを知っている方も多いでしょう。

ガザではこの原理をもとに1973年イマム(イスラム教指導者)のヤシン師が社会奉仕NGOイスラム・センターを設立しイスラエルの許認可を得て大学やモスク、学校などを設立しています。

その後イスラエルによるパレスチナ人抑圧・弾圧が酷いことからイスラエルに対する民衆の抵抗運動第一次インティファーダが1987年に勃発するとヤシン師他数名がハマスを設立。ここからハマスのイスラエルに対する武力を用いた抵抗運動が始まります。

もともとは社会奉仕NGOから出発していることもあり、ハマスは武力行使以外にガザにおける貧困救済、医療及び教育などの社会奉仕活動も行っており、そういうことがガザ市民の圧倒的な支持を得ている理由となっています。

さて、パレスチナ自治政府設立前後の歴史的経緯が分からないとイラン以外のハマスのスポンサーの正体とその意図が理解しづらいと思われるので、以下にPLOのアラファト議長の動きを中心にざっと述べます。

アラファトはエジプトのカイロ生まれで、学生の頃からパレスチナ運動に加わり第二次中東戦争では対イスラエル戦争に従軍し、武装集団ファタハを結成。その後1969年にファタハが主流のPLO(パレスチナ解放戦線)の議長に選出されています。

その後彼は1988年にイスラム諸国、非同盟諸国及び共産圏の国々からの支持を背景にパレスチナ独立宣言を行い翌年にこれらの国々の国家承認を経て初代大統領に選出されています。ただし、アメリカやイスラエル及び西側諸国はパレスチナを国家としては認めていません。

1990年に第一次湾岸戦争が始まるとアラファトはイラクのサダムフセインを擁護した為アラブ諸国の反発を買い、それまでPLOに対し潤沢な資金援助を行ってきたアラブ諸国は援助を停止。

財政的に窮地に追い込まれたアラファトはイスラエルとの共存を目指してテロ行為放棄を宣言し、イスラエル・パレスチナ2国間の共存を容認する穏健派の指導者として復活を図ります。

その結果1993年にアメリカを仲介としたオスロ合意に署名します。この合意はイスラエル、パレスチナ双方が相手を国として認め、ヨルダン川西岸とガザ地区でパレスチナの暫定自治を認めるというものでしたが、もともとPLOと同様イスラエルをパレスチナの地から追い出して故郷を再建するという目標を掲げていたハマスはこれに反発。

オスロ合意

ハマスはオスロ合意に反対の立場でしたが、ハマス以外にこれに反対していた人たちがいました。それはイスラエル政権内部の右派勢力です。彼らは現在のイスラエル領土内にいるパレスチナ人を全員追い出して自分達だけの国家を作ることを目指しているので2国家共存というのは許容出来ない事態な訳です。

1996年右派のネタニヤフが首相として選出されると彼とその極右の取り巻きは人民の圧倒的な支持のあるアラファト率いるパレスチナ暫定自治政府をそのままに放置しておくと本当に2国家共存が実現してしまうことを恐れ、ヨルダン川西岸を拠点とした自治政府と疎遠になっていったガザ地区拠点のハマスを援助するようになります。

当時カタールがハマスに資金援助などをしていましたが、イスラエル政府はこれを黙認。更には追加の資金援助をカタール政府に要請するなどしてハマス活動の強化を手助けし、ハマスとヨルダン川西岸のパレスチナ暫定政府との間の反目を助長して、暫定政府の影響力を削ぐことに腐心しています。分断統治を企てたわけですね。

いずれにせよ、このことはロイターやウオールストリートジャーナルなどの主流メディアなどでも報道され、アメリカの議会などでもロン・ポールという共和党議員が「ハマスを作ったのはイスラエルでしょ」と公に発言しています。

ロイター

また、ネタニヤフ首相は所属政党リクードの議員の集まりの中で、ハマスへの資金援助はパレスチナ国家樹立阻止の戦略の一部である、と発言したとして地元新聞ハーレツに引用されています。

イスラエルはさんざん支援をしてきたハマスに「飼い犬に手を噛まれる」ではないですが、10月7日の攻撃でひどい目に遭い後悔している、あるいは憤って仕返しをして、勢い余ってハマス戦闘員のみならず彼らを支持するガザの一般市民をも巻き込んで戦闘行為を続行しているのでしょうか? いやいや、とてもそんなこととは程遠い状況のようです。

この10月7日の事件ではマウイ島の火災と同様非常に不可解な出来事が複数目撃されており、意図的に起こされたという疑惑が濃厚なのですが、その詳細は次回の「イスラエルによるガザ侵攻の背景の真相」というテーマで述べる予定です。

このハマスについての結論は、イランの支援は事実の半分だけで資金援助などの支援はカタールとイスラエル。カタールはパレスチナの大義の為の人道支援である一方、邪悪な意図を以てハマスを育成・支援してきたのはイスラエルということになります。

ISIS設立とそのスポンサー

中東情勢はかなり複雑ですが、ややこしい部分を省略して説明します。答えから先に言うとISISを作り、育て、資金援助や武器提供などを行ったのはアメリカ(CIA+軍産複合体)とイスラエルです。

ISIS

イラクのサダムフセインは第一次湾岸戦争敗北後イラクの復興をしている最中でしたが、アメリカのあくどいやり口に嫌気がさしたのか2002年に「今後は原油の取引をドルではなくユーロで行う」旨の宣言を行います。

これは許せないとばかり、アメリカは大量破壊兵器などとありもしない話で難癖をつけ再びイラクを攻撃しサダムフセインを絞首刑で亡き者としたのですが、彼とその取り巻きはイラクでは少数派とされたイスラムのスンニ派。国民の大多数はシーア派に所属しています。

フセイン政権下ではシーア派は優遇されない状況でしたが、イラク敗北後多数派のシーア派が政権を握り、スンニ派は逆に迫害される身となります。こういう状況下スンニ派の武装勢力が結成され、政権に対する闘争活動が活発化し始めます。

このスンニ派の武装集団を資金援助、武器援助して育てたのがアメリカCIAでこれがISISの母体となっています。アメリカの目論見はイラクで戦争状態を出来るだけ長期化させ、米軍がいつまでも駐留できるようにして原油の権益も確保する、ということでした。戦争は軍産複合体には絶好の金儲けのビジネスなのです。

アメリカが背後にいたことを物語る写真があります。2008年大統領選挙でオバマに敗れたジョン・マケイン上院議員がISISやアルカイダのテロリスト達と会議をし、仲良く歓談しています。

バグダディを含むテロリストと謀略会議中のマケイン上院議員

この写真に写っているISISリーダーのバグダディの正体はサイモン・エリオットというユダヤ人でイスラエル諜報機関モサドに育てられた男と言われています。

ISISはイラクから西のシリアへ向けてテロ活動を広げていきますが、アメリカにより画策され紛争が中東全域に広がった「アラブの春」でシリアは政権の不安定化が進み、米国とイスラエルはシリアを完全に破壊することはせず、シリア内部での紛争状態を恒常的に維持する為の調整を色々と行っていたようです。

一方アメリカと共同でISIS創設に協力したイスラエルの主目的はイランによる脅威の排除でした。イランはシーア派が主流の政権で一種の神権政治を行っている国ですが、イラン以外にはイラク及びシリアもシーア派が主流の国です。

イランはまたイスラエルに対して強硬路線を敷きイスラエルを地上から消し去ることを最終目標としている国家。これにシリアは国としてもイランと親密な関係で協調路線を取り、いまだに昏迷を極めるイラクでは親イラン武装勢力が存在しています。

更にはイスラエル北部のレバノンでは国政にも参加しているヒズボラというシーア派武装勢力が度々イスラエルと戦火を交えていますが、最近はイエメン内戦終了後政権を握ったフーシ派も加わり、下図のようにイスラエルを取り囲む「シーア派の三日月地帯」というものが出来上がっています。

イランの勢力拡大イメージ

特にイスラエルが恐れているのがヒズボラで、ハマスよりもはるかに戦闘能力が高く武器も潤沢に装備していると言われており、シリアの政権が安定するとシリア経由でイランからの武器や資金の供与がスムーズに行われることを避けるためにISISやその他のテロリストを支援してシリア内での内戦状態を図っていた、と言う訳です。

但し、シリア政府軍が勝利してもテロリストが勝利してもイスラエルやアメリカは困るのでシリア国内で内戦状態が出来るだけ長く続くように色々とテロリストへの支援をさじ加減していたとされています。

イスラエルは更に北部のシリアとの国境ゴラン高原をISISなどのテロリスト達の出入りに開放し、シリアで負傷したテロリストを米軍のヘリコプターが運んでくると北部の病院で手当てをし、戦線に送り返したりしています。

ゴラン高原地図

以下の写真はネタニヤフがテロリストの負傷者を見舞っているもので、イスラエルはISISやその他のイスラム過激集団から一度も攻撃されたことはなく、死傷者もゼロとなっています。

負傷したテロリストを見舞うネタニヤフ

また、ISISはイスラエルを誤って攻撃した事を謝罪しており、これに対しイスラエルは「うん、わかった、許そう」と発言していますが、おかしくないですか? まるで同盟関係にあるようですね(実際そうですが)。

そもそもイスラム過激派グループなら当然イスラエルを攻撃してしかるべきなのに一度も攻撃していないことからもただならぬ関係であることが分かります。その代わりシリア政府、ヒズボラやパレスチナ闘争のゲリラなどを攻撃し、イスラエルの国益に沿って動いているようにしか見えないのです。

ISISの勃興の裏にはアメリカとイスラエルが関わっているのは明らかで、イラクなどの中東の現地ではこのことが常識となっているようです。アメリカについてはマケイン上院議員の背後にはオバマとヒラリー・クリントンが首謀者として動いていたとも言われています。

アメリカやイスラエルは事実上世界最大のテロ国家でありながら、ハマスやISISなどの悪いテロ組織は壊滅させてやる! と偽旗作戦で自作自演を繰り返している状況ですが、日本に限らずアメリカなどでもテレビの言うことしか信じない人はこういう嘘を信じてしまうのでしょうね。非常に残念なことではあります。

今回の話は以上です。次回はこれを踏まえてイスラエルがハマス退治という大義名分のもとガザに侵攻したのですが、本当は何を狙っているのかについて「イスラエルガザ侵攻の背景の真相」というテーマで描く予定です。

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