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石田社長、教えてください!技術成熟度レベル1~7の3つの壁【前編】

イシダテック 総務部の小山です。
今回は久しぶりに、#石田社長! シリーズを更新します。


語る内容


今回はある製品やサービスが事業化・産業化されるまでにぶつかる障壁、「技術成熟度レベル1~7の3つの壁」について経験談を交えて語ります。

なお記事は今週と来週、前・後編2本構成での公開を予定しています。

お待ちいただく間には、過去の投稿をぜひ!




ちなみに社長はこんな人


本人曰く「笑顔でコンプラ違反しそうな輩の顔」

▫ プロフィール
株式会社イシダテック 代表取締役社長 石田 尚

筑波大学大学院(工学)修了。在籍中はペンシルベニア州立大学、ウィーン経済経営大学大学院に留学し経営工学を専攻。大学院修了後、株式会社エル・ティー・エスに入社。シニアコンサルタントとして多様なプロジェクトに従事したのち、2015年に株式会社イシダテックに入社。2018年、関連会社アーオーグループジャパン株式会社を設立し、同社取締役最高執行責任者に就任。2021年1月より現職。

noteをお読みの方からは、
「想像していた以上に若い」「なんかすごそう」
などの感想をいただくことが多いです。笑

でも最初はお客様へのリスペクトが足りなくて叱られたそう。




掘り下げる内容、焼津の自然と重ねて


焼津市は自然に恵まれており、会社の近くですと川沿いの桜が美しい「瀬戸川」、少し足を運ぶと谷というか崖の上を走るような「大崩海岸」、そしてそこから眼前に広がる海「駿河湾」があります。

これと同じように、イシダテックが事業を実施する上では「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」という3つの豊かな自然現象があります。


「これと同じように」とかいうパワーワード 
少なくとも小山には全く同じには聞こえない件について

そして #豊かな自然現象 とは
焼津市内の高草山からはこんな眺望が望める
川あり谷あり、そして海あり


ちなみに焼津市には多くの水位計測用河川カメラがあって、私は山カメラと対比して勝手に川カメラと呼んでいます。


川カメラは焼津市の「水防監視システム」のこと。
山カメラはイシダテックの社長肝入りプロジェクトのこと。笑




概念との出会いは、意外と最近


昨年秋と年末に大学でゲストとして講義をさせてもらった際、事前配布資料に技術成熟度レベルと、研究開発から社会実装までに乗り越えなければならない障壁のことが語られていました。

これは使える!と思い、以来イシダテックの仕事の特徴はこのモデルに沿って語ることにしています。

弊社の事業への理解促進にもつながるので、今回はこの概念を経験談も交えて詳しく語らせてください。


大学の講義へゲストスピーカーとして参加した際の写真(笑)
写真右はAI共同開発でもお世話になっている、
筑波大学の善甫助教 (Twitter : @ZempoKeiichi)




それぞれの概念


第116回総合科学技術会議(平成25年12月17日)資料より引用


これはある製品やサービスが研究開発から事業化・産業化に至るまでにぶつかる障壁を示すもので、出川通氏が2004年の著書で提唱したものです。

障壁はそれぞれ、

  • 魔の川
    ある研究開発プロジェクトが、まず基礎研究から製品化を目指す開発段階へ進めるかどうかの関門

  • 死の谷
    開発段階から事業化段階へ進めるかどうかの関門

  • ダーウィンの海
    先の二つの関門を乗り越えて市場に出された製品やサービスが、競合他社との競争や顧客の反応にもまれて自然淘汰を生き残れるかどうかの関門

と定義されます。
これと、1974年にNASAより提唱された、特定の技術の成熟度の評価を行うことが可能な定量尺度である技術成熟度レベル(Technology Readiness Level: TRL)を概念的に示した図が、経済産業省の資料にあります。

上段が技術成熟度モデルの尺度であり(TRL)、中段に研究開発ステージとそれぞれの障壁、下段に必要なプロセスや要素が表現されています。


経済産業省より引用
こちらの資料では魔の川は記載されていない


イシダテックの事業範囲を当てはめてみる


現在イシダテックの事業フローで主流なのは、

  1. お客様からご要望をいただく

  2. 「想定使用環境でのテスト」や「実証・デモンストレーション」を実施

  3. 装置に必要な設計を固めてから、実際に使用できるものを設計・製作して「パイロットライン」を実装(稼働)させる

というものです。
先程の図に当てはめるとすると、赤い点線あたりの範囲ですね。
後述しますが、ここ3-4年は緑の点線の範囲に拡張されるプロジェクトの取り組みも増えてきました。


さて、赤い点線の範囲は「パイロットライン」(≒試作ライン・初号機ライン)まで囲われています。

なぜパイロットラインまでが多いかというと、お客様のニーズがユニークであることが多く、オーダーメイドで設計・製作するので、大量生産向けではない製品/サービスが多い傾向にあるからです。
これは単なる感覚ですが、国内の食品製造現場は汎用ラインを構築するよりも専用ラインを構築するケースが圧倒的に多いように感じています。

消費者の好みが多様という理由もあるかもしれませんし、

  • 装置オペレータの習熟度のばらつきや人材の流動性が比較的低く抑えられており、ある程度特殊な操作でも対応できる

  • 「うちの工場はこんな特別なことをしている!」ということが社内/グループ内/業界内で良い評判を形成する傾向が強い

といったことも理由なのでは……、と思っています。
ある程度汎用的に扱える多関節ロボットや、協働ロボットも(食品工場では)黎明期ですが、汎用ロボットが「うまく処理できる」ような状態に対象の食品の姿勢や感覚を仕立てるところも、やはり拠点独自の工夫が必要なのだなーと思います。

ちなみに汎用・専用ラインの思想の違いは、スイスとの合同会社内でも常にモメ…議論のネタになっていて、汎用ラインの適用可能s…


― と、とにかく弊社の事業範囲は実証からパイロットラインということですね!

はい!そうです!しかし最近では、

  • 技術コンセプト確認のプロジェクト(前レベルへの拡張)

  • パイロットラインで納入した製品を複数台展開(後レベルへの拡張)

を含む案件も増加しています。

しかし技術コンセプト確認段階での試作や、研究室レベルのテストをある程度きちんとやっておくと、その後のパイロットラインの設計がものすごく楽になります。

□「ものすごく楽」、その心は設計者の不安解消
「これ、図面はできたし成り立つはずだけど…本当に成り立つかなあ…」
そんな不安が試作やテストの実施であらかじめ解消される!というわけ。

実はかつて渡邊さんもその不安を吐露していたことが


そのため、2022年1月から「POC推進担当」という担当者を設置し、これを推進しています。デザインシンキングで言うところのプロトタイプや試作を強化したい意図ですね。


― PoC推進担当設置は思いつきではなく、深い意味が!

ちなみにPoCは一般的にはProof of Conceptのことで、要するに概念実証のことです


そうなんです!
さてここからは実例をお話したいのですが……、
だんだん長くなってきてしまいました。失敗には再現性があるかもしれないですし、自戒のためにも失敗談からお話ししたいと思います……。




次回予告


概念や定義の話をし始めると止まらない社長、やや長い文章になってきました。読み手に配慮すべく (笑) 話の続きは【後編】として次週公開を予定しています。お楽しみに!


「自戒の次回」こんな話が聞けるかも


  • 死の谷に落ちた話
    スイス企業とのJVで扱う技術(非公開)でいい感じでPOCは行ったものの、お客様内部の他部門(多部門)との調整が難しく、あえなく決起会止まりとなってしまったガッカリ話。

  • ダーウィンの海に溺れた話
    その昔、生のイカの内蔵を上手に取り出す装置「IKA-10」を開発するも、(当時は)東南アジアでイカを捌いて、冷凍輸入したほうが全然安いから「装置化は…必要ないかな…」となってしまい、時代が追い付いてこなかったと負け惜しんだ話。




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