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【SNSの歴史から紐解く】 将来Facebookをも超えるフォートナイトの実力値【1万字長編】

石ころ

フォートナイトを運営するEpic GamesはなぜGAFAに喧嘩を売れるほどの度胸があるのか?ゲームを運営する会社が、なぜ巨大プラットフォーマーに立ち向かえるのか?

時を6年前まで戻す。

2014年。FacebookがOculus VR社の買収を発表した年だ。2B$に及ぶ買収金額はさすがに法外すぎるとFacebookを批判する声も聞こえたきた。参考までに、Yahoo! JapanによるZOZOの50%分の買収金額は約0.4B$だ。ZOZOは既に上場していて、1B$を超える売上を出している会社だが、Oculusはパルマー・ラッキーというわずか21歳の若者が運営していた、まだ産声をあげたばかりのスタートアップであった。

Facebookのマーク・ザッカーバーグはこの時から、VRこそがスマートフォンに次ぐコンピューティング・プラットフォームになり、SNSというのもVR世界で生まれ変わることを確信していた。それは、FacebookやInstagramのタイムライン上で結婚式や生まれたての赤ちゃんのVR動画を投稿し、あたかもその場にいるかのように体験ができるといったことにとどまらない。PC/スマートフォン上で作られた既存の枠組みを捨て、1から新たなSNSの世界を構築する未来を想定していた。その構想は、2016年に開催されたOculus Connect3でのマーク・ザッカーバーグのスピーチで垣間見られる。彼はまず、次のように主張し、既存のスマートフォンでのソーシャル体験に疑問を投げかけた。

今のスマートフォンは、人ではなく、アプリをベースに構築されている。スマホを取り出すと、まず様々なアプリが格子状に並んでいる。これは本来、人々が世界/現実を捉え認知するプロセスとは異なるものだ。今のスマートフォンの体験を現実世界の友達との交流に当てはめるとしよう。まず一人でご飯を食べているかもしれない。そのあと、友達に会いにいくために食べるのをやめて、別の部屋に行かないといけない。友達と写真を撮ろうとなったら、一緒にまた別の部屋に行かないといけない。対するVRは「People First」のための最適なプラットフォームになりうる。なぜならVRには「プレゼンス」、すなわち他の人と一緒にいるかのような感覚になれる、そんな空間が存在するからだ。同じ部屋で一緒にゲームや仕事ができる。今のスマートフォンのようにあらゆる体験が個別のアプリであり、別々に行う必要がある場合よりも、VRでは結果的により多くのことを一緒にやることになるだろう。

マークはこのあと、Oculusを使ったデモを見せ、会場にいない同僚とVR上で会い、Facebookのオフィスにワープし、カードゲームやチェスで遊び、その後マーク自身の家にワープし、奥さんとビデオ電話したり、みんなで写真を撮ったりしている。(下記動画の11分から。)

このデモを通してマークが主張したいのは、本来はまず先に、友達と同じ空間で会うことからはじまり、その後に何を一緒にするか、すなわちどのアプリを使うかは順番的に二の次であるべきということだ。Facebookは昔からPeople Firstな世界を着想していたが、Facebookはここまでアプリファーストの文脈で育ってきた。だからOculusの買収などを通して、着々とPeople Firstな世界へパラダイムシフトをする準備をしてきたのだ。

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ここで、上記でマークが言及する、そこに一緒にいる感覚になれる「プレゼンス」についてもう少し考えてみよう。過疎っている掲示板に書き込み、いつまでたっても誰からもレスが来なかったら、そこにはもう人がいないと判断するだろう。人はプレゼンスを感じないサービスは使わなくなるし、魅力を感じなくなる。なお、たしかにVRでは相手がそこにいるというプレゼンスが最大限に発揮されるが、実は既存のSNSにだってプレゼンスは少なからず存在する。

身近な例でいくと、LINEの既読だってプレゼンスに相当する。既読がつくと、相手が読んでくれたことが分かる。大げさにいうと、相手がそこにいることが伝わってくる。もし既読機能がなかったら、返信が来ない間は、向こう側に相手がいるのかいないのかよく分からない感覚になる。時代をもう少し遡ってみても、mixiには有名な足跡機能というのが存在した。

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これは誰が自分のページを訪問したかが分かるというものだが、mixiはこの機能を取り除いてからユーザー離れが進んだという話も有名であろう。

LINEの偉い方が講演で、mixiにとって足跡機能が本質であったように、LINEにとって既読というのは、みんなと同じ空間を共有するための重要な要素なのだと以前言っていた。

また、(これはPCのスカイプ時代からもあったが、)InstagramのDMでは、相手がオンラインの時はアイコンが緑に光るようになっている。さらに相手がスマホのキーボードを入力している間、すなわち自分に向けてDMを書いている時はそれが可視化されるようになっていて、これもプレゼンスの例だろう。

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一時期アメリカの中高生が授業中にGoogle Documentを使ってやりとりしていると言うニュースも出たが、Google Documentもアイコン表示によって誰が今見ているのか可視化されていて、テキスト入力も1文字ずつリアルタイムで可視化されるので、その空間に相手がいるのが分かる良い例だ。

Facebook, Twitter, Instagramでいうと「いいね」や「リツイート」もプレゼンスに相当するであろう。「いいね」には承認欲求を満たす効果とは別に、実はプレゼンスの効果もあったのだ。

LINE通話や相手の顔が見えるビデオ電話などの、リアルタイムに繋がる同期型のサービスなんかは、当然プレゼンス力が上がってくる。2020年に米国のVC界隈を賑わせた音声による同期型アプリのClubhouseもそうだろう。

ここまでがプレゼンスの話だが、マーク・ザッカーバーグが言う、アプリファーストではなくPeopleファーストであるべきだという方向性も、実はVR以外のアプリにも既に現れ始めている。まずFacebookは2018年に早速、Messengerで友達と動画を一緒に見れるようにする機能をテストし始めた。

また、2019年にテレビCMも放映された、ゲーム配信アプリのミラティブでは、自分のスマホの画面を視聴者にリアルタイムで共有することができる。

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画面共有機能により、ミラティブでは自分の部屋を見にきてくれている視聴者のみんなと一緒に、いろんなアプリを回遊することができる。荒野行動を1時間配信したら、次は第5人格に移り、その次はマインクラフトに移り、次は謎謎系のアプリで遊ぶといった具合にだ。次の記事で出てくる、ミラティブのブルー・オーシャンではなく、ブルー・スカイ戦略も参照してほしい。

このように、これまで別々なところにあったアプリを、一つの箇所から横断してアクセスするという動きが近年見られるようになった。米国ではビデオチャットをしながら画面共有ができるSquadなんかも2019年に出て話題になった。

さらに2020年にコロナが到来してからは、それまでも存在したこれらのビデオチャット、スクリーン共有、YouTube共視聴などの、プレゼンスが感じられて、かつ、Peopleファーストな体験は一気にメインストリームに躍り出てきた。例えば、コロナ禍中において、LINEはグループビデオ電話にみんなでYouTubeを一緒に見れる機能が追加した。また、ビデオ電話をしながらミニゲームをみんなで一緒に遊ぶこともできる。スクショをとってチャットに送るのもありだろう。これらは、マーク・ザッカーバーグが描いているVR時代のソーシャル体験の先駆けといえる。

このように、SNSにおいてプレゼンスが重要な要素になってくるものの、実はプレゼンスだけでは足りない面もある。一緒に集まっても、することが無かったら、軽く雑談でもして10分くらいで終わってしまうだろう。何時間も続くことは想定しにくい。集まったからには、何か一緒にすることがないと、なかなか盛り上がらない。それはYouTubeやNetflixを一緒に見るでもいいし、卓球やテニスなどのスポーツをやるでもいい。この時、ゲームというのは何かを一緒にやる上で、非常にクオリティの高いエンタメになってくる。

マーク・ザッカーバーグがVRにおけるプレゼンスの重要性などを披露したのが2016年であるが、その翌年の2017年頃から、日本でも荒野行動の人気に火がついた。2018年には「#荒野女子」というハッシュタグ/言葉まで生まれた。ここで面白いのは、自ら荒野女子と名乗るユーザーのうち多くは、これまでゲームとは無縁だった女子高生だったという事実だ。女子高生が選ぶ流行語ランキングには、荒野行動が上位にランクインした。

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(画像は株式会社AMFの調査結果を引用)

ゲーム自体の面白さというのもあるだろうが、荒野行動は若者にとってインターネット上のたまり場、集合場所にもなっていた。女子高生が放課後に荒野行動で集まって、来週の遊ぶ予定を決めたりしていたようだ。荒野行動は3次元空間でお互いのアバターも見えるため、同じ空間に相手と一緒にいるプレゼンスが発揮される。ボイスチャットをONにすれば、実質電話も同時にできるのでその効果は増す。

そして2019年には、荒野行動と似たゲームであったフォートナイトを運営するEpic Gamesが、SNSのハウスパーティーを買収すると発表した。

ハウスパーティーが日本でも広く知られるようになったのはコロナが到来した後の2020年だが、実は米国ではハウスパーティーは2016年頃からティーネージャーの間で一度大流行しているアプリだった。米国では当時、スナップチャットの次のSNSトレンドとして、TikTokの前身ともいえるmusical.lyとともに、ハウスパーティーの名が挙げられていた。このハウスパーティーは、Snapchatがそうであったように、既存のSNSへのアンチテーゼという思想から作られている。というのは、ハウスパーティーのFounderらは、FacebookやInstagramにおいて、承認欲求を満たすために写真を投稿するようなステージパフォーマンスは、本来人と人が繋がるソーシャル体験からは乖離した歪なものになってしまっていることに違和感を抱いていた。これを批判し、あるべきソーシャルネットワークに回帰しようという試みから、まるで家で友達と一緒にパーティーをしているかのような感覚になれる、ビデオチャットのハウスパーティーを開発したのである。言うまでもなく、ハウスパーティーもプレゼンスが重要な役目を担ってくる。FortniteとHouseparty。ゲームとSNSという一見異なる領域のプロダクトに見えて、実は根底にある思想には共通する部分があったりする。

いいねをもらうために写真を投稿するInstagramと、友達とビデオ電話をするHousepartyや一緒に同じ空間でゲームを遊べるフォートナイト。どちらがより"ソーシャル"であるかは一目瞭然だ。

なお少し脱線するが、SnapchatもHousepartyと同様に、Facebookの「いいね」に紐づくステージパフォーマンス文化に疑問を投げかけた最初の抵抗勢力であった。Snapchat創業者のEvan Speigelは、「そもそもインターネット上の投稿が一生残るなんて誰が決めたんだ?」と主張し、コンテンツが消えるからこそあと先なにも考えずに、今の自分、着飾る必要がない自分を、ふざけたセルフィーなどを通して表現し、友達とより"ソーシャル"なコミュニケーションが取れると考えた。また、本来友達とのソーシャルな交流は、Facebookのような、大勢に見られるパブリックな街中ではなく、もっとプライベートなものであるべきだというのもEvanの考えだ。このSnapchat vs Facebookの戦いは長引き、現在もなお続いているが、コンテンツは消えるべき、プライベートであるべきという方向性については、Facebookのマークも2019年のF8でついに認め、Evanを追随する姿勢を見せた。

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講演でマークはSNSの重要な6つの要素を掲げた。このうち"Reduced Permanence"というのがコンテンツの永続性を減らす表明だ。

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Snapchatについて話し出すと止まらなくなってしまうので、ここで話を戻そう。いったん表にして整理してみよう。

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個々のアプリとして独立していたのがアプリFirstであり、一つのアプリやサービスで友達といったん待ち合わせてから、そこからあらゆる体験を一緒にできるのがPeople Firstだ。注意しないといけないのは、Housepartyは最近は画面共有も出来るようになっているので、People Firstに食い込んでくるアプリでもある。facebook horizonというのはFacebookが現在Oculus上でテストをしている招待制のVR SNSサービスだ。

なお、フォートナイトをはじめとするゲーム陣営がSNSの要素を取り込んでいく中、SNS陣営でも両者の相性に気づき、行動を起こす者も出てきた。例えばSnapchatもSNS上でゲームを一緒に遊べるようにしている。

SNS化していくゲームと、ゲーム化していくSNS。そうなったとき、一体どちらを源流とするサービスが勝つのか?これは戦わせてみないと分からないかもしれないが、個人的にはSNS化していくゲームに軍配が上がるのではないかと感じている。

リアル世界で友達と体験したことを、まるで復習するかのようにオンラインでも共有しあう従来型のSNSではなく、はなからオンライン上で友達と楽しい体験ができるのがゲームだ。オンライン上で一緒に何かを遊ぶとなった時に、SNS企業が取って付けたかのように用意したミニゲームと、長年かけて最初からクオリティの高いゲームを作り込んでいるプロダクトとでは、歴然の差が出てくるであろう。

なお、ここまでは友達との交流という点にフォーカスしてきたが、フォートナイトのようなゲームは当然他人との交流をもカバーする。ここで、過去の記事でTikTokを分析する際に使ったプロット図を再利用しよう。

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これはSNSを広義に捉えた場合のプロット図だ。右下は他人との交流ができる領域だが、従来ここはマッチングアプリ以外は育ちにくかかった。なぜなら、知らない他人同士が集まるためには、何か強力はインセンティブが必要だからだ。異性と出会いたい、恋愛のパートナーが欲しいというのは一つの強力なモチベーションになりうる。また、趣味が同じであるというのは他人同士が結びつく一つの理由になり得るが、趣味をベースにTwitterで繋がったところで、緩く繋がる程度で、そこまで熱いコミュニティは生まれない可能性が高い。好きなアニメについて毎日毎日DMで語り続けるなんて考えにくいだろう。LINEのオープンチャットのようなものも同様かもしれない。(個人的には、TikTokの動画を餌にした、TikTokのコメント欄なんかは良いコミュニティになりつつあると思う。YouTubeも同様だ。)このなかなか難しい領域において、ゲームというのは本領を発揮する。たまたま荒野行動やフォートナイトで出くわした人と、ボイスチャット等を通して仲良くなっていく。毎日遊びに行く場所に、毎日いる人。これはミラティブなどにも言えることだが、下手したら学校の友達などより仲良くなる可能性だってある。ゲーム以外だと、Zepeto WorldやVR Chatのように、3次元空間で交流できるサービスもある。前者のZepeto Worldについては中高生ユーザーも多いが、フォートナイト級のプラットフォームになかなか化けないのは、集まったところですることがそんなに多くないからだ。僕も一時期ハマったものの、長続きはしなかった。

後者のVR Chatについては新鮮味はあるものの、外国人しかいないし個人的には面白くない。

上ではマッチングアプリを例に出したが、ゲームはマッチングアプリの需要をも吸い込めるかもしれない。例えば学校やバイト先での出会いというのは、出会いが先にあるわけではなく、勉強、部活、学校行事などなど、一緒に何かをやることが先にくる。その結果、たまたま恋愛感情が生まれることがあり、恋愛に発展していく。そうゆう意味で、ゲームを通した出会いや恋愛というのは、よりリアルの恋愛過程に似ている。良い悪いはさておき、マッチングアプリというのは出会いが先に来るので、最初からパートナーを探す目的で出会う、お見合いに近い形になる。また、マッチングアプリは怖くてやったことがないものの、ゲームでの出会いには全く抵抗がないようなZ世代の友達も結構いる。以下の記事のように、荒野行動を通して異性と簡単に仲良くなれるところに目をつけ、荒野行動で遊びながらついでに彼氏を探すような人もいる。

またSNSのプロット図に戻ると、右上は有名人などが不特定多数に向けてコンテンツを発信する「メディア」とも呼べる領域です。フォートナイトは、既にこの領域にも一歩足を踏み込んでいる。

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Travis Scott、Steve Aoki、Marshmello、米津玄師などのフォートナイト上でのライブが話題になった通りだ。

このように、広義の"SNS"で捉えた時に、フォートナイトは全ての領域で存在感を増幅させ続けているプロダクトなのだ。

そう考えると、FortniteがFacebookやInstagramを凌駕する日が、そう遠くない未来にきてもおかしくないであろう。もちろん、用途が異なるため、明白な勝ち負けというのは存在せず、ユーザーの滞在時間や時価総額等の比較になるであろうが。

ちなみに冒頭に出てきた、Facebookが買収したOculus VR社は当時、会社に新しくジョインするメンバーには必ずReady Player Oneという小説を配っていた。

この小説は映画化もされているので知っている方も多いと思うが、彼らが憧れを抱いたのはそのようなVR上の第2の世界(メタバース)であり、彼らは日本のアニメ「ソードアートオンライン」の影響も強く受けている。

↓VRブロガーだった頃に書いた記事です

FacebookはまずハードウェアやOSの基盤部分から着手し始めたが、Epic GamesはVR時代にキラーアプリとなりうるメタバースを既存のプラットフォームで大成功させている。VR時代にはゲームのプラットフォーム化はさらに加速するであろう。それがブロックチェーンなどの技術と合わさると、新たな経済圏すら誕生してくる。

歴史上、スタートアップから巨大プラットフォーマーへの成長という文脈では、とりわけゲームよりもSNSの方が脚光を浴びてきた。Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、Snapchat、TikTok。どの会社の創業ストーリーも拡散され、中でもFacebookは四皇の一角にまで入り込み、帝国を築き上げてきた。だが、ここから先の10年は、ゲームが既存のSNSをも凌駕する一大プラットフォームに化けるかもれない。ただの通販だと笑われていたAmazonや、大学生のおもちゃだと笑われていたようなFacebookが今やテックジャイアントになった。子供が遊ぶ1ゲームを作っているに過ぎないと思われていたゲーム企業が、同じようにして巨人たちを超えていく日もくるかもしれない。

(おわり)

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