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インプロ、それは俳優の刺身

こんにちは、石田優希子といいます。
やさしい・きぼうの・こ、と漢字は覚えてください。

演劇の脚本と演出(映画でいう監督業みたいなこと)をやっていて、時々演技もします。
「ぼちぼちやる派」という間抜けた名前の劇団の主宰でもあります。

タンバリンの素晴らしさに気づく演技してる時の石田

そんな私ですが、最近「インプロ」に挑戦しています。
インプロとは、即興劇のこと。
その場で出たお題やルールに従って、俳優が即興で演じてシーンを作ります。
1月下旬にインプロの公演に出演する予定で、その準備として他のメンバーと稽古もしています。

少し前まで、私は脚本が存在する「即興じゃない劇」しかみたことがありませんでした。
即興でやるなんて、話がぐちゃぐちゃになって観ても面白くないんじゃない?
演じる側が楽しいだけなんじゃない?
そう思っていました。

しかし、インプロって観ていて大変面白いんです!
話はぐちゃぐちゃすることもあります。
そのぐちゃぐちゃすら旨味になるんです、不思議なことに。

何が面白いんだろう?と考えていたのですが……
ひとつ、説を思いつきました。
それは、

インプロは「俳優の刺身」説!!!

これだけ言われても分からないですよね!
説明させてください。

前述のとおり、インプロは即興劇。
例えば役者は「ふたりの人物が洞窟を冒険している」というお題をもらって演技をスタートさせます。

まず大体

「暗いなあ、怖いなあ」

などと言って場所を表現したり、

「怖いよー」
「何言ってんだ、進むぞ!」

とかけあって関係性をみせたりします。

そしてお互いに

「大きな岩が転がってきた!」
「逃げよう!」
「わー!(走る)」
「ハンマーが落ちてる!」
「これで岩を割ろう!」

……などと、台詞や動きを重ね、制限時間いっぱいシーンを作ります。
ここで作られる台詞や動きは全部その場で作られたものです。
脚本があって、稽古で動きを決めて、その通りにやっているわけではありません。

今、ここで作られていて演技が新鮮で美味い!
とれたてピチピチ!
だからお刺身なんです! 

って言いたいわけではないのです。
ごめんね、話を引っ張って。

なぜお刺身なのか。
それは、演技を通じて俳優本人を人生ごと楽しめるからです。

脚本があるお芝居は、脚本の中の登場人物をどう舞台上に作るかを考えて演技を作ります。
舞台上に立っている俳優は、別の人間になっています。
登場人物は、俳優本人とは全く違う思想の人間かもしれません。
その場合は登場人物の思想が優先され、俳優は自分自身の思想を脇に追いやらなくてはなりません。
(演技を考えたり動いたりするのは俳優なので、完全に俳優本人が消えてしまうわけではありません。そこが演技の面白いポイントのひとつだと私は思いますが、詳しく書くのは別の機会にしましょう)

一方インプロは、俳優本人の思想がかなり優先されるようです。
(ようです、とごにょごにょしてしまうのは、私が初心者だからです…)

「飽きてきたら変えよう」
「やりたいことをやろう」
上記のようなアドバイスを稽古ではよく聞きます。

また、こんな言葉も聞きます。
「面白いか面白くないかは考えずに出す」

シンプルに言うと、インプロ中の俳優は「自分の気持ちに従って、思いついたことをとにかく出す」ことをしているのです。
この基本姿勢が、その場でシーンをつながなくてはならない、インプロが求めるスピードへの対応を可能にします。
(何も考えてない!というわけではありません。面白くするための動きかた、また観客や相手の俳優の反応へのリアクション、たくさん考えています。あくまで上記は基本の姿勢…だと私は思ってます)

ものすごいスピードで思いつきを放つと、見えてくるのは「俳優自身」です。
思考の深くまで潜ることができないので、アイデアは俳優本人の生活に近いところから出てきます。

例えば、以前インプロのワークで、雨が降ってくるシーンを作りました。
私が相手に「どんな雨なの?」と聞くと、「ボディクリーム!」と返ってきました。
ボディクリームが降ってくる??
だいぶカオスです。
この後、相手は降ってきた乳液を腕に塗り込み、つるつるお肌を手に入れました。

ワークが終わってから聞いたら、相手の俳優は最近肌荒れに悩んでいて、新しいボディクリームがほしいなあと思っていたのだそうです。
俳優本人の願望がインプロに登場し、他の人には考えもつかなかった方向へ変化させたのです。

私は感動しました。

シーン自体も面白かったし、何より「ボディクリームがほしいな」と普段思っていて「ボディクリームが降ってくる」シーンを生み出してしまうこの俳優のことが、心から大好きになってしまいました。

今ここで新鮮に演技ができていくのも楽しいですが、私が好きなインプロの特徴は「俳優本人のことをそのまま味わえる」ことです。
そのスピード感から、俳優本人の素が演技に表出しやすく、その結果演技を通して俳優の人生すら垣間見ることができる。
外部から台詞も演出も与えられていない、そのまんまの俳優を楽しめる。
だからインプロは「俳優の刺身」なのです。

インプロを観てみたくなったあなたへ

インプロ、面白いぜ!
と書かれた文を読むと、
一回インプロ観てみたいな…
と思うことでしょう。
お刺身食べてみたいなと思うことでしょう。
(思ってほしいな…!)

ちらっと冒頭に書きましたが、わたくし石田、インプロの公演に出演いたします。
その名も「アクサガ2024」!
私はCチームなので2024/1/20(土)の回に出演予定です。場所は下北沢です。
インプロを初めて見るかたは、なんと割引になります。
たくさんの俳優がみられる、いわば「俳優の刺身の盛り合わせ」…(?)
ぜひ観にきてください。

↑ご予約は上のフォームから!

/ きてね〜! \

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