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浮世絵を使った指導で子供の絵が奥行きのあるものになる 描画指導の工夫

高学年の図工の教科書に、校内などの場所を「奥行き」を意識した構図で描く絵の指導例が掲載されている場合がある。
私の好きな題材の一つである。

前回のこの「ヒント帳」では、子供たちに切り抜いた紙を使わせて画面構成のアイデアを練らせる指導方法を紹介したが、この「奥行きのある視点の絵」の場合は、その方法では難しい。

子供たちが描きたい絵を構想するためには、日頃見慣れた場所を視点を変えて見させることによって、新たな「見え方」の発見をさせる必要があるのだ。
つまり、奥行き=遠近感を意識した視点で、景色を切り取らせて、「こんな見え方がするなんて面白い」「楽しい」「美しい」と感じ取らせたい。
それが、絵の主題になるからだ。

そこで、そうした視点を意識できるように、私は、浮世絵を使った。
歌川広重の「名所江戸百景」の中から、手前と奥とが特に対照的な構図の作品を選んで、最初に鑑賞させた。
例えば、次のような浮世絵である。


鑑賞後、子供たちは、「歌川広重の目」をもって、遠近感のある構図を求めて熱心に校内を探して回った。
音楽室のピアノの陰から教室を見渡す、階段の手摺の下の柵越しに廊下を見てみる、金網のフェンス越しに花壇を見るなど、自分だけの構図を探そうとしている姿を見ていると、教師として楽しくなった。
子供たちの中で構想が膨らんでいくのも分かった。

私がこの手立てを思いついたのは、私自身がこれらの作品が好きであることがかなり影響している。特に、亀の吊り下げられた「深川萬年橋」など、このユーモアに思わず顔がほころんでくる。
やはり、自分がよいと思うものは、子供たちに見せたくなる。

ぜひ、お試しいただければと思う。

なお、蛇足かもしれないが、時折、東洲斎写楽の役者絵を高学年に模写させた作品に出会うことがある。
私には、このよさが分からない。何がねらいで、子供のどんな面が育まれるのか理解ができない。
写楽の模写が悪いというのではない。
図工の授業で取り組ませるべき題材なのかどうかが分からないのである。
江戸文化に親しむ程度では時間数が惜しく思える。そもそも版画を水彩で描いてどうするのか。

「こんなよさがある」とおっしゃる方は、ぜひご教示をお願いします。