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算数の「授業開き」アイディア-年度初めのポイントも一度まとめます

 この記事では、まず、ここまでの「2日目からの学級づくり・授業づくり」シリーズでお伝えしてきた、<年度初めのポイント>を整理します。次に、算数の「授業開き」のアイディアを示します。最後に、それらとつないで「年度初めの宿題」について述べます。

1 ここまでのまとめ

「学級づくり・授業づくり」のねらいは3+1
◎ 次の3つのねらいを重ね合わせる!


<(1) 一人一人の子供の居場所をつくる>…これが一番大切!
<(2) 「学びのプロ」として子供を育てる>…例えば、「学び方」を教えます!
<(3) 子供と共に学習・生活を創る>


◎ 上の3つに、<(4) 教科などのねらい>をプラスする!…学級ができあがっていくのに連れて、そのウエイトが大きくなります。
今回の算数の「授業開き」では、<(4)>に少し力が入っています。

2 算数の「授業開き」模様


 子供たちの挑戦意欲を引き出すために、テーマは「できるかな 分かるかな 覚えているかな」としました。

①まず、よく見かけるあの「錯視」を使ったアイディアです。
 次の錯視画像1を拡大して黒板に紙で提示し、問いました。
 「2つの図の中心の円(丸)は、どちらが、大きいと思いますか。」
 もちろん「右!」と答える子が多くいました。根拠や理由を言う必要がない問いなので、根拠・理由に慣れていない子の発言チャンスです。知識があり、「同じ」とつぶやく子もいました。

錯視画像1

「調べ方を考えることができますか。」という聞き方で発問しました。これも、挑戦意欲を高めるためです。
 「折って重ねる」「切って重ねる」が出ました。1年時の学習が使えていることを大いに褒め、【前の学習を使う】は、算数の大切な考え方であることを伝えました。
 こうした算数で育みたい思考方法は、【きまりを見つける】【理由を考える】などの他の考え方と共に、現在の教科書のほとんどが、巻頭に例題と共に示してあるので、教科書で確認させ、「次時は、教科書の例題でその考え方を用いることに挑戦しよう」と呼び掛けておきました。

 実際にやってみて、同じ大きさであることを確認しました。

 ③錯視画像2を示して、同じように問いました。「これも同じではないか」という反応が多く出ました。

錯視画像2

④「今度は、線が細くて切りにくい」などと言い、直接比較ができない設定にして、錯視1とは違う方法を考えることに挑ませました。間接比較や物差しを使って測る方法に気付いた子供を大いに褒めました。【前の学習を使う】がまたできたことも価値付けました。

 ⑤錯視画像3,4を提示しました。今度は、印刷したワークシートも配付しました。3は横に追って重ねる、4は切って重ねるなど、各自に工夫させましたが、実はこの3と4のターゲットは高学年です。平行の確かめ方や面積の求め方を想起して比べさせたいのです。【前の学習を使う】が使えたことを大いに褒めました。

錯視画像3
錯視画像4

⑥問題の種類を変えて「数列穴埋め問題」に挑戦させました。
 
 2-4-▢-8-10    や   15-▢-9-6-3 
 1-2-4-7-▢-16-22     1-2-4-8-▢-32
 
などです。算数の別の思考方法【きまりを見つける】を使わせるためです。数と計算の学習に意識を向けさせるためでもあります。楽しい「きまりの見つけっこ活動」になりました。

 ⑦最後に、九九の百ますプリントに挑戦です。時間も計測しましたが、もちろん、「正しさが一番大切。速さはその次。」という話をしました。私は、1年間ほぼ毎日、九九の百ますをやらせていました。九九が十分に身に身に付いていないために算数が「できない」という子を大勢見てきました。
 
⑧答え合わせの後、「もう一回やると、1回目よりも、きっと正しく、速くなっています。やってみますか。」と意欲を喚起し、2回目に取り組ませました。ほとんどの子が速くなっていました。時間内に終わらなかった子も、1回目よりは、多くできていました。経験のある教師なら分かると思います。1回目とその答え合わせが、「練習」をしたことになるからです。

⑨「算数の学習とは、今やったように、考える力と計算する力の2つが大切である」旨を話しました。
 その上で、「今日の宿題で、九九の百ますプリントに挑戦できるかな。」と尋ねました。「やってみたい!」「やってみるか~」という雰囲気が教室に広がったのを確認し、「九九百ますプリント」を、その学年で最初の宿題としました。以下、その<宿題>についてです。

3 <宿題>を出すときの4つのポイント


 私は、宿題を出すときに大切にしていたことが4つあります。

(1)子供の「やりたい!」をできる限り引き出してから宿題を出す。
 新年度、私は、上記のようなタイミングが来るまでは宿題を出しませんでした。子供たちが少しでも自分から「宿題をやりたい!」となるように仕組み、それを機に宿題を開始していました。初日から当たり前のようにプリントを配っている教師もいましたが、だから、やってこない子が生まれるのだと思っていました。宿題をサボる子がいるのではなく、サボる子を教師がつくっているように見えました。

(2)その宿題の目的をしっかり意識させる。  
 もちろん、学校で全ての子が「やりたい!」になりません。また、家に帰っていざ始 めるとなると気持ちが乗らない子もいるはずです。それでも、机に向かわせるためには、子供が目的意識をもっていることが必要です。つまり、その宿題を何のためにするのかがはっきり分かった状態にして宿題を出すべきなのです。
 これは、タブレット端末を使った宿題でも同じでしょう。「タブレットなら面白そう。だからやりたい!」になっても、目的が曖昧では、成果は期待できません。

(3)保護者の手を借りずに、その子が一人でできるものが原則。
 子供たちは、様々な家庭環境で暮らしています。私は、原則的に、保護者の手を借りなければできないような質・量の宿題を出してはいけないと考えてきました。だから、「音読を保護者に聞いてもらう」「プリントに丸を付けてもらう」というタイプの宿題を出すのは、最初の参観会・懇談会で十分にねらいとやり方を説明して、保護者の了解を得てからにしていました。参観授業も、わざと音読を取り入れた国語の授業を行って、音読の大切さを感じ取っていただくようにしました。

(4)出した宿題には必ず目を通す。
 どの宿題をいつ、どのように見るのか、どれにどれぐらい時間が必要か、いつ子供に返却するのかなど、計画を立ててから宿題を出していました。これは絶対に必要な仕事術です。

※錯視画像は「錯視のカタログ」(psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/catalog.html)から使わせていただきました。ありがとうございました。