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中国映画「Wild Grass」(荞麦疯长)

主演:(上の写真左より)ホアン・ジンユー(黄景瑜)、マー・スーチュン(马思纯)、エレイン・チョン(钟楚曦)
2020年
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★☆☆
(写真=百度百科より)

♫あの日、あの時、あの場所で〜♫
映画が始まってまもなく流れてくるこの曲。あれー??小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」だ。なんでなんで??

明るい未来を夢見ていた3人の運命が交差

90年代の小さい町(百度によれば撮影地は重慶付近)を舞台にした若者3人の物語。
マー・スーチュン演じるユンチャオ(云)はつまらない日常の刺激に、万引きしてみたり、ボーイフレンドの仕事を手伝ったり、家にいるときはウォークマンで小田和正の歌などを聴いたりしている。大きい町に行くことに憧れていて、ボーイフレンドと時計塔の上に登り、アンテナの位置を変えて一生懸命その町のラジオ放送を聞こうとしたり、二人でその町でケンタッキーフライドチキンをお腹いっぱい食べることを話し合う。
しかしある日、義兄に乱暴されてしまう。

エレイン・チョン演じるリーマイ(李麦)は将来を約束された町の現代舞踏団のメインバレリーナ。日本での公演メンバーに抜擢され、ビザも取って楽しみにしているが、交通事故に遭ってしまう。
事故で足に怪我をして、もう二度と以前のように高い水準の舞踏をすることができなくなってしまい、日本にも行けなくなってしまった。しかしやはり踊るのは好き。バーで知り合ったシンガポール人ホンミン(宏明)の話に乗り、ナイトクラブで踊りながら、シンガポールへ行くことを夢見るのも束の間。彼に騙されていたと気付く。

ホアン君演じるウーフォン(吴)は淡々とした日常を送っており、唯一の楽しみは、向かいの建物に住む憧れの女性リーマイの踊る姿を見つめること。しかし友人と一緒に町のヤクザの抗争に巻き込まれてしまう。友人が殺されてしまい、復讐、敵討ちのために大きい町へ行くのであった。

プロットは悪くないが

ホアン君をはじめ、メインキャストの3人はとても良かったし、プロットは悪くないと思うのだが、なんか中途半端感もあるストーリー。
エンドロールで数人の若者のインタビューがあり、田舎から都会へ出ての生活についてみんなが色々と語っているのだが、結局は都会へ行っても思い描いていた夢のような生活にはならないという趣旨だと理解した。ただ、わざわざ90年代に設定する必要があったのかと思う。監督の個人的な体験をもとにしたものかと、インタビューか何かあるかなと探したが、日本語や英語ではちょっと見つからなかったので不明。

もう一つ、ちょっとよくわからなかったのがスクラッチのようなくじの意味。劇中に何度か登場人物が削っては外れるのだが、要するに人生当たりなんかを引くことはないんだというようなあきらめ感なのか。それとも90年代に中国で流行ったものだったのだろうか。

そしてなぜ「ラブ・ストーリーは突然に」?

最初と最後にこの曲が流れるのだが、本作は決してラブストーリーではない。これも監督のどんな意図があって使われたものなのか、日本人としては大いに気になったのだが、強いていえばこのサビの部分だろうか。

♪あの日 あの時 あの場所で
♪君に会えなかったから
♪僕らは いつまでも
♪見知らぬ二人のまま

主人公の3人の運命は交差するのだが、リーマイはウーフォン、そしてユンチャオには直接会うことはない。歌詞を今検索して改めて読んでみたが、強いていえばウーフォンのリーマイに対する密かな想いを表現しているようにも思えるが、正直わからない。ただ、この曲は中華圏でも有名だったようで、カバーも結構出ているようなので、監督にとっての思い出の曲、90年代を代表する曲だったのかもしれない。まあ、日本人にとってもドラマもあったし、そういう人が多いと思うが(私はオフコース世代なんだけど。。。笑)。

とまあ、いろいろと疑問点が多く残る作品だが、これもキャストの誰かのファンで、時間があれば観る価値はあり。私的にはホアン君の部分が短すぎてちょっと不満だが、かっこよかったのでよしとしよう。
しかし、一番よかったのはダンサー役のエレイン・チョン。とても綺麗で、華がある演技を見せていたと思う。

こちらが主演3人が歌うエンディングテーマ「Colorful Days」♪ホアン君はやっぱりあまり歌が上手くないなぁ(笑)。


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