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中国ドラマ「Life Is A Long Quiet River」(心居)

主演:ハイ・チン(海清)、トン・ヤオ(童瑶)、チャン・ソンウェン(张颂文)、ウィリアム・フォン(冯绍峰)
2022年 全35話
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
(写真=全て本作公式微博より)

配信が始まった時から、何となく英題が気になっていた本作。メインキャストも名前は知っていたが、作品は見たことがない人たちばかり。他のドラマがちょっと一段落ついた時に観始めたら、思ったより面白くて、これは当たりだった!

大都会”上海”をめぐる人間模様

本作のあらすじをまとめるのは難しい。豆瓣や百度百科にもイントロダクションが出ているが、なんか違う。。。
小説を原作としているので、その紹介文が一番まとまっているだろうか。

「上海で生まれ育った都会人、人生の半分を費やして原点回帰を目指す老上海人、透明にならずに出世を目指す新上海人。 膨張し続ける大都会の中で、豊かな物質生活に憧れつつも、魂の安住の地を求めて努力を惜しまない人々の物語」

元の紹介文を抜粋・編集・意訳

グー一家を中心に、その家族関係から炙り出される愛情、不信感、妬み、マウント、メンツなどなど、ありとあらゆる感情が、最初から最後まで、ぎっしりと渦巻く物語であった。

主人公の4人を紹介していくと、よりドラマの雰囲気がわかりやすいかもしれない。

グー家の長男の嫁、マー・シャオチン(冯晓琴)

ハイ・チン演じるシャオチンは、上海人のグー・レイ(顾磊)と結婚して一児の母。安徽省出身で、上海に憧れて来たものの、その生活の厳しさを知る。グー・レイの父、祖母、そして実の妹も呼び寄せて同居しているが、家族の世話ばかりで、いつか自分たちだけの家を購入することを夢見ている。
雑草根性がハンパない、逞しい女性像。

グー家の長女、グー・チンユー(顾清俞)

トン・ヤオ演じる典型的な上海女性。 美しく、成功し、自信家でプライドが高い。常にシャオチンに不信感を持っている。幼馴染のシー・ユアンと結婚するが、そのプライドの高さゆえに、結婚生活にも問題が。
絶対に負けを認めない、プライドが高すぎる女性像。

賃貸業を手広く行う広東人、ジャン・シャン(展翔)

チャン・ソンウェンが演じるのは、若い頃に行った不動産投機で、上海に十数件の物件を持つ成金。グー・チンユーに一目惚れし、彼女が他の人と結婚してもなお、彼女を愛し続けている。その日暮らし的な日々を送っていたが、シャオチンのビジネスパートナーになる。
うまく立ち回る、したたかな男性像。

家族の借金を背負うシー・ユアン(施源)

海外でも評価の高いウィリアム・フォンが演じるこのシー・ユアンが一番ある意味、中国人あるある的な男性像(と個人的には思った)。母親の過度な期待に押し潰され、しかし頑固、真面目でメンツを気にしすぎる。借金を返済するために、幾つもの仕事を掛け持ちするが、それを妻のチンユーには知られたくない。
メンツばかり気にする男性像。

上海をめぐる様々なテーマ

ドラマの舞台になることが多い上海。大部分が「オシャレな都会の恋愛またはお仕事物語」である印象だが、本作は視聴した中では『理性的な人生(理智派生活)』に次いで、登場人物だけでなく、上海そのものにも焦点を当てていた物語と言える。


家が欲しい

仕事や結婚もそうなのだが、ここでは最大テーマの一つが「家」。中国人の「マイホーム」に関する考え方は、こちらの記事を読んでいただくとよくわかるだろう。

家というものはなければ欲しい、持っているともっと大きいのが欲しい。欲が尽きることはないが、上海人と地方人の家へのこだわり、葛藤が本作では色々な形で描かれている。

家族関係が面倒

また、上リンクの記事には中国人と結婚すると、「家族関係」も大変であると書かれているが、これも本作のテーマ。
私も夫は“ガイジン”であるが、もう夫の近しい家族は皆他界しているし、他の親戚も遠方に住んでいるので、幸いもうほとんど煩わしい関係というのはない。一般的には中国に限らず、外国人との家族関係は大変なものだろう。まあ、日本人もかな。

本作では、グー家は親戚・兄弟集まって定期的にみんなで食事をするものの、毎回よそ者、特に上海人でないものに対する見下した態度などは、私だったら即離婚の世界(笑)。

また、親戚同士でも持ち家があるか、いい仕事についているか、どのぐらい稼いでいるか、それでメンツを気にしたり、マウントを取ったり、まあ忙しい。
家族関係においても「ステータス」が重要なのがよくわかった。

高齢化問題

これがテーマとなっているドラマは、まだ中国ではあまりないように思うが、日本同様、これからも社会問題として、ドラマでももっと取り上げられるようになるかもしれない。

シャオチンは出前配達人をするようになるのだが、そこで数多くの一人暮らしの老人と出会う。彼らの状況にヒントを得て、本作の後半では彼女の老人ホーム立ち上げ奮闘が描かれる。
国の制度なども違うと思うので、一概には比較できないが、やはり凄いのは中国人の行動力。やると決めたらとにかく早い、頑張る。ドラマで話数が限られているからというわけではなく、本当にそのスピード感が描かれていた。

すべての登場人物の人生も見どころ

メインキャストは一応上記の4人だが、本作は登場人物全てが主人公とも言える。皆それぞれに悩みの多い日常生活を送っており、その中にも幸せを見つけ出そうとしていく。

劇中でシャオチンが「川の水を測ることはできないわね」とため息をつくが、「海の間違いよ」と妹に指摘される。
本作の結末は重要ではないかもしれない。それより、海にたどり着くまでの、川の流れのようなストーリーの進行を楽しむドラマとしてオススメしたい。

あまりメジャーな作品ではなかったので、外国人による評価や感想なども少ないのだが、上海人はどういう反応だったかも知りたいところである。

こちらがエンディングテーマの『还没』🎶
ドラマバージョンで。


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