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「受け取り」と「主張する」を許可する

 

 誰かに親切にする、というのは、人に対して何かを譲る、与える、ということ。
 その反対は、「自分を主張すること」。
 わたしは主張することが苦手で、下手で、避けているところもありました。

Photo AC

 自分のことより他人のことを慮るというのはそう悪いことではないでしょうが、なにごとも「過ぎたるはなお及ばざるが如し」でございまして、やり過ぎはいけません。

 わたしの場合、親切心で人様にどうぞどうぞと譲るのはいいんですが、問題は、親切心ばかりからではなく、「自分を否定する」心が始点になっていることが少なくない。

 ぱっと見にはこの二つは区別がつきません。

 真実、親切心から人に譲っているのか。
 それとも「自分なんかにそんな価値はない」と自己否定しているから他人にその分を送っているだけなのか。

 他人からすればこの二つには違いはないけど、本人(=わたし)にしたらエライ違いがあります。

 で。
 自己否定癖もようやく最近落ち着いてきて、多少痛い目を見たせいもあってようやく、
「自分の取り分くらいは主張していい」
 というところへ、到達しつつあります。

 今まで自分の内心に住んでいた、文字通りの「自責の鬼」の姿も声も薄くなり、ようやく、本来なら自分が得るべき利益に、わたしも手を伸ばしていいんだ、受け取っていいんだ、と、自分で自分に許可が出せそうなところに来ました。
(まだ完全には、自分にそこまでの全面的な許可ができていませんが、以前よりははるかにまし)

 ところがです。

 その許可が出せるようになると、今度はもう、過去のことが悔しくて仕方ない、そういう情念が出てきてビビりました。

 ことに2年前に会社をたたみ始めてからは、他者に譲ってばかりいて、金額にすると結構な「損」をしているんですよねぶっちゃけ。

 立つ鳥跡を濁さずで、できるだけ取引先等に迷惑にならないようにという心がけ自体は間違っていなかったと思うけれど、なんていうのかな、そこに、かなりつけ込んでこられたところがあります。

 それが一人二人じゃない。
 つけ込むどころか本当にご親切にしてくださったところがあるけどそれは1社だけ。

 あとはもう、なんだかんだで、火事場泥棒じゃないけど、どさくさ紛れにエクストラの「利益」を確保して持っていきやがった、と、そんなところばかりでした。

 これも本当に社会勉強ではあるのでしょうが。

 過去にお世話になったからというのは確かだけど、わたしがあそこまで譲る必要はなかった、と、「許可」が出せるようになって改めてみると、本当に悔しくてなりませんでした。

 これ、たぶん今までの反動だな——と思いました。

 今までだって心の深いところでは、譲りたくもないものを人に譲るのが、悔しかったり悲しかったりしていたはずです。
 でも、自己否定のカタマリ、自責の鬼を心のうちに飼っていた頃のわたしは、自分のそういう感情さえ、押し殺したり蓋をしたりしていた。

 急にその重石が外れたので、噴き出すように過去の怒りや悔しさが現れた。
 そういうことのようです。

 いや、そりゃあ悔しくなるのは当たり前だよ、と、自分で自分を認めて過ごして、ようやく少し落ち着いてきました。

 わたしが払う必要はなかった金額、受け取れるはずだったのに右から左へ流してしまった金額。
 それを考えるといっときは本当に胃がぎゅーっと硬くなるのがわかるほど、なんとも言えない感情を味わいました。

 でもそこで今回は「自分責め」にはいかなかった。
 我ながら偉い(笑)

 そこにわたしなりの変化あるいは成長が見られましたね。

 そこまで悔しい悲しい思いをしても、自分を馬鹿だ愚かだと責めることはほぼ、なかった。
 以前だったら、首をくくらずにはいられなくなるほどの地獄の責苦があったはず。

 それがほぼなかった、というだけでも、えらい(当社比)。

 過去の行いは変えられない。
 そのこと自体は、いい勉強をしたと思うしかない。

 それに。

 自分が受け取らなかったものについてはどう解釈すればいいかと考えたんですけど。

 自分が受け取らなくても、他の誰かが受け取っている、ということに目を向ければいいんだなと思いました。

 わたしが送り出した金額が誰かの利益になり、給与になる。そこからまた納税なり、個人消費なりとなって、世の中へ流れていく。

「豊かさ」を送り出した。
 そう思うと、不思議と、胃が石のように硬化するほどの悔しさがすーっと解けていきます。

 ものは考えようというけれど、ほんと、そういうことみたいですね。

 いい勉強をしたと思うことと、「受け取る」「主張する」許可が出せるようになった(なりつつある)自分だということを理解して。
 次へ進めたらいい。
 今はそんなふうに願っています。

 

 

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